クローズ就労とオープン就労の違いと特徴
障害を持つ人々が就職活動を行う際に、多くの場合、「クローズ就労」と「オープン就労」の2つの選択肢が考慮されます。
クローズ就労は障害を職場に開示せず働く形態であり、オープン就労は自分の障害を開示して働く形態です。
どちらの選択も、働く上での環境や条件、心理的な安心感、さらにはキャリア形成に大きな影響を与えるため、慎重な判断が求められます。
本記事では、それぞれの就労形態のメリット・デメリットについて詳しく解説し、どちらの働き方が自分にとって適切かを見極めるための情報を提供します。
クローズ就労とオープン就労の概要
クローズ就労とは
クローズ就労は、障害を持っていても、それを職場に伝えずに一般の労働者と同じ条件で働く形態を指します。
この選択肢を取ることで、職場での特別な配慮やサポートを求めることなく、同僚や上司から障害の存在を知られずに仕事に従事できます。
この形式は、職種や給与、昇進の機会が広がる一方で、障害を隠すことでストレスを感じる場合もあります。
自分の障害を言わずに就労すること
クローズ就労では、自分の障害を隠して働くため、障害に関する特別な配慮は受けられません。
つまり、障害を持たない労働者と同じ基準で評価され、昇進や昇給のチャンスが公平に与えられる一方で、体調が悪くなったり、業務が障害に適していない場合でも自分で対処しなければならない状況が生じる可能性があります。
クローズ就労を選ぶ際には、こうしたリスクを理解した上で、自分の障害の状態や職場環境に対応できるかをしっかりと見極める必要があります。
オープン就労とは
一方、オープン就労は障害を職場に開示し、雇用者がその障害に応じたサポートや配慮を提供する形態です。
この場合、企業は障害者雇用枠を活用し、業務内容や勤務時間、勤務環境などを個々の障害に応じて調整することが求められます。
障害を隠す必要がないため、精神的な安心感が得られ、必要なサポートを受けながら長期的に安定して働くことが可能です。
自分の障害をオープンにして就労すること
オープン就労では、履歴書や面接の段階で障害を開示し、企業側に対してその障害に対する理解を求めることで、適切なサポートを受けられます。
障害をオープンにすることで、職場での配慮が得られ、無理をせずに自分のペースで働くことができる点が大きなメリットです。
また、支援機関と連携して職場でのサポートが提供されることが多いため、障害に対する理解が深い環境で働くことが可能です。
クローズ就労とオープン就労の主な違い
クローズ就労とオープン就労の最も大きな違いは、障害を職場に開示するかどうかです。
クローズ就労では、障害を隠すことで通常の求人市場で働ける一方で、職場からの配慮が得られないため、体調が悪化した場合などに困難が生じる可能性があります。
一方、オープン就労では障害を開示することで適切なサポートを受けられ、安定した勤務環境が整う反面、給与や職種の選択肢が限られる場合があるというデメリットがあります。
クローズ就労のメリットとデメリット
クローズ就労のメリット
クローズ就労には多くのメリットがあります。
まず、障害を開示しないため、一般の求人市場において幅広い職種に応募できるという点が大きな利点です。
以下に、クローズ就労の具体的なメリットを挙げます。
求人数や職種が豊富
クローズ就労を選択することで、障害者雇用枠に限定されず、一般的な求職市場での幅広い求人にアクセスすることができます。
これにより、業種や職種の選択肢が増え、自分のスキルや興味に合った仕事を見つけやすくなります。
また、特に障害者枠が少ない分野では、クローズ就労によってより多くの就職機会が得られるでしょう。
給与水準が比較的高い
一般の求人枠で働く場合、障害者雇用枠と比較して給与が高い傾向があります。
障害者枠では、企業がサポートを提供する代わりに、給与水準が低めに設定されることが多いですが、クローズ就労ではそのような制限がなく、成果に応じた評価を受けられるため、高収入を得ることが可能です。
キャリアアップしやすい
クローズ就労では、健常者と同じ基準で評価されるため、キャリアアップの機会も広がります。
障害を開示しないことで、実力に基づいて評価され、昇進や昇給のチャンスが得られるため、特にキャリアを重視する人にとっては大きなメリットです。
長期的なキャリア形成を目指す場合、クローズ就労は有利な選択肢となり得ます。
クローズ就労のデメリット・注意点
クローズ就労にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。
特に、障害を隠すことによって精神的なストレスを感じることや、サポートを受けられない状況に陥ることがあります。
障害を隠すことで不安が生じる
クローズ就労では、障害を隠して働くことになります。
そのため、周囲に障害を知られることへの不安や、職場でのパフォーマンスに影響が出た場合にどう対処するかといった問題が発生する可能性があります。
特に、体調が悪化した際には、周囲のサポートが得られないため、自分で対処しなければならないことが精神的な負担となることが多いです。
障害への配慮を受けられない
クローズ就労では、障害を開示しないため、職場での配慮が受けられません。
これにより、障害が業務に影響を与える場合、上司や同僚からのサポートを得られず、業務を無理にこなさなければならない状況が発生する可能性があります。
特に、体調が変動しやすい障害を持っている場合は、クローズ就労が大きな負担になることがあります。
就職先と支援機関の連携したサポートが得られない
クローズ就労を選ぶ場合、就職先と障害者支援機関が連携してサポートを提供する機会が限られます。
障害者雇用枠であれば、支援機関や就労支援スタッフがフォローに入ることが多いですが、クローズ就労では自分一人で問題を解決する必要があるため、サポートが得られないことがデメリットとなります。
オープン就労のメリットとデメリット
オープン就労のメリット
オープン就労には、障害を開示することで得られる多くのメリットがあります。
特に、職場での配慮やサポートを受けられる点が大きな魅力です。
業務内容や配属先への配慮を受けられる
オープン就労では、障害を開示することで、業務内容や勤務形態において特別な配慮を受けることができます。
例えば、体調に合わせた業務量の調整や、軽作業に変更してもらうことが可能です。
また、障害の特性に応じた業務環境（バリアフリーなオフィス、通勤時のサポートなど）も提供されるため、無理なく働き続けることができるのが大きな利点です。
障害を開示できることによる安心感
障害を隠さずに働けることで、職場での精神的な安心感が得られます。
職場の同僚や上司に障害を理解してもらうことで、必要な時にサポートを受けやすくなり、プレッシャーや不安が軽減されます。
また、障害に対する理解が深い職場で働けるため、長期的な安定した職業生活を送ることが可能です。
支援機関と就職先が連携したサポートを受けられる
オープン就労では、就職先と障害者支援機関が連携してサポートを提供することが一般的です。
例えば、仕事に関する問題や障害の影響で業務が困難になった場合、支援機関のサポートを受けながら問題を解決することができます。
これにより、安心して業務に集中できる環境が整います。
その日の調子に合わせて勤務形態を変更しやすい
オープン就労では、体調やその日の状態に応じて柔軟に勤務形態を変更することが可能です。
体調が優れない日は短時間勤務を選んだり、在宅勤務に切り替えたりすることができるため、無理せずに働くことができます。
こうした柔軟な勤務体制は、障害を持つ人にとって大きなメリットです。
オープン就労のデメリット
オープン就労には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
給与水準が比較的低い
オープン就労では、障害者雇用枠での採用となることが多く、一般の求人に比べて給与が低めに設定されていることがあります。
企業が障害者に対するサポートや特別な配慮を提供する代わりに、給与面での条件が厳しくなる場合が多く、経済的な負担を感じることがあるかもしれません。
求人数が比較的少ない
オープン就労の場合、障害者雇用枠の求人に限定されるため、選べる職種や勤務地が限られることがあります。
特に、専門職や高スキルが求められる職種では、求人が限られることが多く、自分の希望に合った仕事を見つけるのが難しい場合があります。
職種の選択肢が比較的少ない
障害者雇用では、特別な配慮が必要となるため、企業側が提供できる職種が限られることが多いです。
特に、身体的な負担が大きい職種や、スキルが求められる専門職では、選べる選択肢が狭まることがあります。
これにより、自分が希望する職種に就くのが難しくなる場合もあります。
クローズ就労での就職先を選ぶポイント
休職制度や福利厚生制度の整っている就職先を選ぶ
クローズ就労では、障害を職場に開示しないため、病気や体調不良が発生した際に適切な休職制度が利用できるかどうかが重要です。
福利厚生が充実している企業を選ぶことで、体調に不安がある場合でも安心して働くことができます。
たとえば、長期的な休職制度や、有給休暇の取りやすさを確認することが大切です。
メンタルヘルス研修を行っている職場か確認する
クローズ就労では、精神的な負担が大きくなることがあるため、メンタルヘルスに対する理解が深い職場を選ぶことが重要です。
メンタルヘルス研修を定期的に実施している職場や、社員の健康管理に積極的に取り組んでいる企業を選ぶことで、精神的なケアを受けやすくなります。
長く働き続けられる職場であるかを考えて選ぶ
クローズ就労を選択する際には、長期的に安定して働ける職場かどうかを確認することも大切です。
就職後、体調の変化や業務負担によって仕事を続けるのが難しくなる可能性があるため、長期的に働ける環境が整っているかどうかを確認することが重要です。
障害種別ごとのクローズ就労の注意点
うつ病でのクローズ就労：小まめに休む
うつ病を抱えている場合、クローズ就労を選んでも、業務中に無理をしないよう心がけることが大切です。
定期的に休憩を取り、体調を見ながら仕事を進めることで、精神的な負担を軽減することができます。
また、仕事のスケジュールを適度に調整し、自分のペースで働ける職場を選ぶことが重要です。
双極性障害でのクローズ就労：業務量をコントロールする
双極性障害の場合、気分の波が激しいため、業務量をうまくコントロールすることが必要です。
調子が良いときには多くの仕事をこなすことができる一方で、無理をすると後で反動が来ることがあります。
自分の状態に合わせて業務量を調整し、無理をしないようにしましょう。
統合失調症でのクローズ就労：服薬の時間をきちんと取る
統合失調症の場合、服薬を欠かさず行うことが重要です。
クローズ就労を選んでいる場合でも、昼休みや休憩時間に適切に薬を服用するための時間を確保し、体調管理を徹底しましょう。
また、無理のないスケジュールを立てて、ストレスを溜め込まないようにすることが大切です。
クローズ就労に関するよくある質問
クローズ就労とオープン就労のどちらが合っているかわからない
クローズ就労とオープン就労のどちらが自分に合っているか迷う場合は、障害の特性や働き方の希望をよく考慮することが大切です。
クローズ就労は職種の幅が広がり、給与も高い傾向がありますが、障害を隠すことによる精神的な負担が大きくなることがあります。
一方、オープン就労は職場でのサポートを受けられるため安心感がありますが、選べる求人が限られる場合があります。
どちらの選択が自分に合っているかを見極めるためには、支援機関に相談することも有効です。
履歴書や面接で障害のことを話さなくても問題ない？
クローズ就労を選ぶ場合、履歴書や面接で障害を話さなくても法的には問題ありません。
ただし、障害が業務に大きな影響を与える可能性がある場合は、後々トラブルを避けるためにも適切なタイミングで開示することが望ましいです。
企業側も障害に対応する準備ができるため、双方にとって有益な結果となるでしょう。
まとめ
クローズ就労とオープン就労には、それぞれ異なるメリットとデメリットが存在します。
クローズ就労では、障害を開示せずに一般の労働者と同じ基準で働ける一方で、職場でのサポートが受けられず、精神的な負担が増えることがあります。
オープン就労では、障害を開示することでサポートを受けながら働くことができ、長期的に安定した職業生活を送ることが可能ですが、選べる職種や求人数が限られることがあります。
どちらの就労形態を選ぶかは、個々の障害の特性や働き方に対する希望、将来のキャリアプランによって異なります。
自分の状況に応じた最適な選択をするために、支援機関や専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することが重要です。
自分に合った就労形態を選び、無理のない範囲で安定した職業生活を送るための準備を進めましょう。
