一般枠から障害者枠に変わる際の働き方の違いとポイント
日本では、一般的な就労と障害者枠での就労の二つの雇用形態が存在します。
障害を持つ方々が就労を希望する際、一般枠での雇用に挑戦するケースもあれば、障害者枠を利用する場合もあります。
しかし、一般枠で働いていた方が、後から障害者枠に切り替えを検討することも少なくありません。
このような切り替えに伴う働き方の違いや、障害者枠への移行がもたらすメリット・デメリットについて理解を深めることは、働く本人だけでなく、雇用する企業側にとっても重要です。
この記事では、一般枠から障害者枠に切り替える際の働き方の違いとポイントについて、制度の基本から、転職や働き方の選択肢、障害者雇用における具体的な事例、そして就職活動の方法までを詳しく解説します。
障害者雇用の概要と一般就労との違い
障害者雇用の目的と対象者
障害者雇用の主な目的は、障害を持つ人々に対して、社会の一員として働く機会を提供することです。
企業は、障害者雇用促進法に基づき、一定の割合で障害者を雇用する義務を負っています。
この義務により、障害者が働きやすい環境が整備されるように促されています。
対象となるのは、身体障害、知的障害、精神障害のいずれかの障害を持ち、障害者手帳を保持している方々です。
障害者手帳は、法的に障害者として認定されるための証明となり、これを持っていることで障害者枠の就労が可能となります。
障害者雇用促進法の具体的な内容
障害者雇用促進法では、企業が一定の障害者を雇用しなければならないことを義務付けています。
2021年時点での法定雇用率は2.3%ですが、この数値は年々引き上げられる傾向にあります。
法定雇用率が達成されていない企業には、納付金制度が適用され、障害者の雇用が進んでいない企業には罰則が科される仕組みです。
また、法的に義務付けられていることから、企業は障害者が働きやすい職場環境の整備に努めることが求められます。
このため、障害者枠で働く従業員は、合理的な配慮を受けながら安心して業務を行うことができます。
対象となる障害の詳細
障害者雇用の対象となる障害は、身体障害、知的障害、精神障害に分類されます。
身体障害には視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などが含まれます。
知的障害は、知能の発達に障害がある人々を指し、日常生活や就労においてサポートが必要とされます。
精神障害には、うつ病や統合失調症、発達障害などが含まれ、精神的な負担を軽減するための配慮が重要です。
障害者雇用の基本制度と法律
障害者雇用に関する基本的な制度は、障害者雇用促進法によって定められています。
企業は一定の障害者を雇用しなければならない法定雇用率が設定されており、これを達成しない場合には罰則が科されることもあります。
この法定雇用率の目的は、障害を持つ方々の就業機会を確保し、社会全体で彼らの雇用促進を図ることです。
障害者雇用納付制度の詳細
法定雇用率を達成できない企業には、障害者雇用納付金制度が設けられています。
これは、法定雇用率を達成していない企業が、障害者雇用促進法に基づき納付金を支払う仕組みです。
一方で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、報奨金として助成金が支給されます。
この納付金制度の目的は、企業が障害者雇用の重要性を認識し、積極的に雇用促進に取り組むことを促すためです。
このような制度の設置により、多くの企業が障害者の雇用促進に取り組んでおり、障害者の社会参画が進んでいます。
障害者雇用における合理的配慮の実施
障害者雇用においては、「合理的配慮」の提供が重要です。
合理的配慮とは、障害者が職務を遂行しやすくするために職場や業務内容を調整することを指します。
具体的には、次のような配慮が含まれます。
- 作業スペースの変更:車椅子使用者のために通路の幅を広げたり、机の高さを調整したりする。
- 業務内容の変更:聴覚障害者に対して、電話対応の業務を他の職員に割り当てる。
- 柔軟な勤務時間の設定:精神障害を持つ従業員に対して、体調に合わせて勤務時間を調整する。
一般枠から障害者枠に変えることってできるの?
現在の仕事を続ける場合
障害者枠への切り替えが可能な場合もある
一般枠で働いている方が、後に障害を取得したり、障害が顕在化した場合、現在の職場で障害者枠へ切り替えることができる場合があります。
このようなケースでは、企業側との協議や手続きが必要ですが、スムーズに移行できるようにするための制度が整備されていることが多いです。
例えば、身体障害を持つようになった場合、社内で配置転換が行われたり、必要な合理的配慮が提供されることによって、仕事を継続することができます。
このような柔軟な対応は、企業と障害を持つ従業員の双方にとって大きなメリットとなります。
障害者枠への切り替えの手続きと注意点
障害者枠への切り替えには、まず障害者手帳の取得が必要です。
次に、企業の人事部門や上司に対して、自分の状況を説明し、障害者雇用としての働き方を希望することを伝えます。
ここで重要なのは、自分の障害の特性や仕事への影響を具体的に伝え、適切な合理的配慮を得られるようにすることです。
転職して障害者枠で働く場合
年収アップと職場環境が改善した事例
あるケースでは、一般枠で働いていた方が、障害者枠に切り替えることで年収がアップした事例もあります。
特に、大企業や障害者雇用に積極的な企業では、障害者枠の待遇が一般枠に比べて手厚いことがあり、年収アップや職場環境の改善が期待できる場合があります。
具体的には、障害者雇用を積極的に進めている企業では、障害者に特化した支援プログラムが用意されていたり、障害のある従業員に対して専門的な相談窓口が設けられていることがあります。
これにより、従業員は安心して働くことができると同時に、給与や福利厚生も充実しているため、結果として年収アップにつながることがあります。
ミスマッチにより早期退職になってしまった事例
一方で、障害者枠に切り替えたものの、職務内容やサポート体制が適合しなかったために早期退職に至るケースも見られます。
障害者雇用におけるミスマッチは、事前の情報収集と適切な支援体制の確立が不可欠です。
特に、障害の特性と業務内容のミスマッチや、企業が提供する合理的配慮が不十分であった場合、働きづらさを感じてしまうことがあります。
このような状況を回避するためには、面接時に企業側と十分にコミュニケーションを図り、期待される業務内容やサポート体制について具体的に確認しておくことが大切です。
障害者雇用のメリットと課題
障害者雇用のメリットとは
周囲の「合理的配慮」が得られる
障害者枠で働くことで、企業からの合理的配慮を得ることができ、業務上の負担を軽減する工夫がなされます。
合理的配慮とは、職務環境や業務内容の変更、または就業時間の柔軟な対応など、障害を持つ方が働きやすいように調整する取り組みです。
例えば、視覚障害を持つ従業員に対して、文書を音声化するシステムを導入することや、精神障害を持つ従業員に対して、ストレスの少ない業務を割り当てるなどの工夫が行われています。
こうした配慮は、企業全体の働きやすさを向上させる効果もあります。
不当な解雇を回避できる
障害者雇用では、法的な保護があるため、一般枠での雇用に比べて解雇リスクが低くなります。
障害を理由に解雇されることは違法であり、障害者枠においては特にこの点が重視されます。
障害者雇用の課題とは
障害者雇用の課題としては、企業側の理解不足やサポート体制の未整備が挙げられます。
これらの課題を解決するためには、企業と障害を持つ従業員とのコミュニケーションが不可欠です。
さらに、合理的配慮が適切に提供されていないケースや、障害者のニーズに対する理解不足も課題の一つです。
特に、障害の内容が複雑である場合や、見えにくい障害(精神障害や発達障害など)の場合には、配慮の必要性が見過ごされがちです。
障害者枠での就職活動のポイント
障害者雇用求人の探し方
障害者枠での求人を探すには、専門の求人サイトを利用するほか、ハローワークや地域障害者職業センターでの相談が有効です。
求人情報は、障害者向けのものが特別に掲示されていることもあり、利用者は自分に合った求人を探しやすくなっています。
就職活動時に利用できる支援サービス
ハローワーク
ハローワークでは、障害者雇用に関する専門窓口を設けており、求職者一人ひとりに合った求人情報の提供や面接対策を行っています。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障害者向けの職業訓練や職場実習の支援が行われており、就労前の準備を手厚くサポートします。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、企業での実務を体験できるプログラムや、ビジネスマナーを学ぶ研修が提供されます。
ここでの訓練を経て、多くの障害者が一般企業への就職を果たしています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の就労と日常生活の支援を包括的に行う施設です。
就職後のフォローも充実しており、就労が安定するまでの長期的な支援が提供されます。
障害者雇用に強い求人サイト
障害者雇用に強い求人サイト、障害者雇用に特化したサイトの代表としてスグJOB障害者があります。
様々な障害を抱えた方に向けた、多くの求人情報の取り扱いがあるため、それぞれの障害にマッチングしやすい求人を探すことが可能になります。
またご自身でマッチングするかどうかわからない場合でも、それぞれの必要な配慮事項を担当に相談することができるため、マッチングする求人情報の提案を受けることが可能です。
障害者雇用に強い求人サイトなら→スグJOB障害者
まとめ
一般枠から障害者枠に切り替えることは、働く上での選択肢として有効です。
障害者雇用では、合理的配慮を得られることや、解雇リスクが低減されることなど、多くのメリットが存在します。
一方で、企業側の理解や支援体制の整備が求められるため、事前の情報収集と適切な支援を受けることが重要です。
転職や切り替えを検討する際には、障害者雇用の求人情報を積極的に活用し、適切な支援機関と連携しながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。