ネフローゼ症候群でも仕事はできる!就労上の注意点やポイントを解説します
ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体の機能が損なわれることで、体内のタンパク質が大量に尿中に漏れ出してしまう病気です。
腎臓は体の老廃物を処理する重要な役割を担っていますが、この病気が進行するとむくみや疲労感などが強くなり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
特に、仕事をしながら病気と向き合うのは困難に思えるかもしれませんが、適切な治療とサポート、職場での配慮を受ければ、仕事と治療を両立することは十分可能です。
本記事では、ネフローゼ症候群の基礎知識から、仕事と病気を両立させるための具体的な対策、さらには利用できる就労支援について詳しく解説します。
ネフローゼ症候群の基礎知識
ネフローゼ症候群とは
ネフローゼ症候群とは、腎臓の中にある「糸球体」という部分に異常が生じ、尿中に多量のタンパク質が漏れ出す病気です。
通常、糸球体は血液をろ過して不要な物質を排出し、必要なものを再吸収しますが、この機能がうまく働かないと、血液中のタンパク質が大量に尿に流れ出てしまいます。
その結果、低タンパク血症、浮腫(むくみ)、高コレステロール血症といった症状が現れます。
ネフローゼ症候群は腎臓自体の問題(原発性)と、他の病気によって引き起こされる(続発性)タイプに分かれます。
どちらのタイプであっても、症状や治療法は類似していますが、治療の進め方や予後は異なる場合があります。
原因
ネフローゼ症候群の原因は、原発性と続発性の2種類に大別されます。
- 原発性ネフローゼ症候群:腎臓自体に異常がある場合を指します。代表的な疾患には、微小変化型ネフローゼ症候群(特に小児に多い)や、巣状糸球体硬化症、膜性腎症などがあります。
- 続発性ネフローゼ症候群:他の疾患や薬剤が原因で発症する場合を指します。続発性の主な原因としては、糖尿病性腎症、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、B型肝炎やHIVなどの感染症、薬物による腎障害などが挙げられます。
症状
ネフローゼ症候群の主要な症状には以下のものがあります。
- むくみ:体内の水分が蓄積し、特に足、顔、まぶたなどに浮腫が現れます。むくみは進行すると全身に広がり、体重増加を招きます。
- 尿の異常:尿中にタンパク質が大量に含まれているため、尿が泡立ちやすくなり、尿量が減少することがあります。
- 疲れやすさ:低タンパク血症によって体力が低下し、慢性的な疲労感を感じるようになります。
- 高コレステロール血症:体内でタンパク質が不足すると、肝臓が補うためにコレステロールの合成を活性化させます。このため、血液中のコレステロールが異常に高くなることがあります。
- 感染症のリスク増加:タンパク質が不足すると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
治療方法
ネフローゼ症候群の治療は、その原因や症状の重さによって異なります。以下の治療法が一般的です。
- ステロイド療法:多くの患者に対して、ステロイド薬が処方されます。ステロイドは炎症を抑え、尿中へのタンパク漏出を減少させます。特に微小変化型ネフローゼ症候群では、ステロイドが効果的であることが多いです。
- 免疫抑制剤:ステロイド療法が効果を示さない場合や、病気の再発を繰り返す場合、免疫抑制剤を使用することがあります。これにより、免疫系の異常反応を抑制し、腎臓の機能を保ちます。
- 利尿剤:体内に溜まった余分な水分を排出するために、利尿剤が処方されることがあります。これにより、むくみや高血圧の症状を軽減します。
- 食事療法:タンパク質の摂取制限や、塩分制限が行われることがあります。特にむくみが強い場合は、塩分を抑えることで体内の水分量を減らします。
- 脂質異常症の治療:高コレステロール血症の改善のために、スタチンなどの脂質異常症治療薬が処方されることがあります。
ネフローゼ症候群と仕事の両立のポイント
ネフローゼ症候群を抱えながらでも、適切な治療を受け、体調管理をしっかりと行えば、仕事と両立することが可能です。以下に、ネフローゼ症候群と仕事を両立させるためのポイントを紹介します。
職場への病気の開示
病気を抱えている場合、職場にそのことを伝えるべきかどうか悩む人は多いでしょう。開示にはタイミングと伝え方が重要です。
開示のタイミングと伝え方
職場に病気を開示する最適なタイミングは、自分の体調や業務内容によって異なります。一般的には、体調が不安定で業務に支障が出る可能性があると感じた段階で、早めに上司や人事担当者に相談するのが良いでしょう。
できれば体調が安定している時期に話すことで、前向きな対策が取られやすくなります。
伝える際には、具体的な症状や治療の内容を簡潔に伝えるとともに、必要な配慮やサポートについても説明することが重要です。
例えば、「定期的な通院が必要であること」や「業務中に適度な休憩を取る必要があること」を説明し、上司や同僚に理解を求めましょう。
開示のメリットとデメリット
病気を開示することで得られる最大のメリットは、職場でのサポートを受けやすくなることです。
体調に配慮した業務スケジュールの調整や、無理のない勤務形態を選択することが可能になります。
また、定期的な通院や治療が必要な場合も、上司や人事担当者に事前に相談しておくことで、業務に支障が出ることを防ぐことができます。
一方で、病気を開示することで不利益を被る可能性も考えられます。たとえば、昇進の機会が減少したり、重要なプロジェクトへの参画が制限されたりすることがあるかもしれません。
しかし、日本の労働法では、病気を理由にした差別的な扱いは違法とされており、こうしたリスクを最小限に抑えるためには、適切な配慮を求めるための正当な理由を持って開示することが重要です。
職場での配慮と工夫
病気を開示した後、職場での働きやすさを確保するために、具体的な配慮や工夫が必要です。
必要な配慮の伝え方
職場で必要な配慮を受けるためには、どのようなサポートが必要かを具体的に伝えることが大切です。
たとえば、ネフローゼ症候群の患者はむくみや疲労感が強くなることが多いため、「定期的な休憩が必要」であることや「長時間の立ち仕事は避けたい」といった具体的な要望を伝えることで、職場の協力を得やすくなります。
また、在宅勤務やフレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方ができる環境を整えることも有効です。
特に通院や治療のために定期的な休暇が必要な場合には、上司と事前にスケジュールを共有し、計画的に仕事を進められるよう調整しましょう。
通院への対応
ネフローゼ症候群は長期的な治療を必要とすることが多いため、定期的な通院や検査が欠かせません。
そのため、業務と通院を両立させるための工夫が重要です。
多くの企業では、通院のためにフレックスタイム制度や有給休暇を利用することが可能です。
病院の予約を業務に支障が出ない時間帯に調整するか、あらかじめ上司にスケジュールを共有しておくことで、スムーズに通院が行える環境を整えることができます。
体調管理と仕事の進め方
ネフローゼ症候群を抱えながら働くためには、体調を管理しながら無理のない業務ペースを維持することが必要です。
休憩の取り方と業務調整
体調が悪化しないよう、適切な休憩を取りながら仕事を進めることが大切です。
長時間のデスクワークや立ち仕事は体に負担をかけるため、一定時間ごとに休憩を挟んで体をリフレッシュさせるようにしましょう。
また、業務の優先順位を見直し、体調が良いときに重要なタスクを終わらせておくことが推奨されます。
体調が悪いときには業務量を調整し、無理をしない範囲で仕事を進めるよう心がけましょう。
上司や同僚との関係性
職場での協力体制を整えるためには、上司や同僚との良好な関係が不可欠です。
体調に応じた業務の調整や、突然の休暇が必要な場合には、事前に協力を仰ぐことができるようにしておくことが大切です。
誠実なコミュニケーションを心がけ、周囲に理解を求める姿勢が、仕事と病気を両立する上での重要なポイントです。
やりたい仕事とできる仕事を分けて考える
ネフローゼ症候群によって、従来の働き方に制限が出ることがあります。
そのため、「やりたい仕事」と「体調に合わせてできる仕事」を分けて考えることが大切です。
キャリアプランの見直し
病気によって体力や時間の制約が生じる場合、キャリアプランの見直しが必要になることがあります。
自分の体調に合った仕事を選び、無理なく長期的に続けられる働き方を見つけることが大切です。
職場の人事担当者や上司と相談し、自分に合ったキャリアプランを再構築することも有効です。
たとえば、責任の重いポジションを避け、負担の少ない業務にシフトすることや、フレックスタイムやリモートワークを活用することで、体調に配慮した働き方が可能になります。
新しい可能性の探求
ネフローゼ症候群をきっかけに、これまでとは異なる仕事に挑戦することも一つの選択肢です。
たとえば、在宅勤務やリモートワークが可能な仕事、体に負担が少ないデスクワークにシフトすることで、これまでにないキャリアの可能性を探ることができます。
自分のスキルを活かしながら、体調に合わせた新しい働き方を見つけることは、長期的なキャリア形成において重要です。
専門職のスキルアップや、新しい分野の資格取得など、キャリアチェンジを視野に入れて新たな目標を設定することも考えてみましょう。
ネフローゼ症候群のある方が利用できる就労支援
ネフローゼ症候群を患っていても、適切なサポートを受けることで就労を継続することが可能です。
以下に、ネフローゼ症候群の患者が利用できる就労支援について詳しく解説します。
ハローワーク
ハローワークでは、一般的な就職支援だけでなく、病気や障害を持つ方に対する特別な就労支援も行っています。
ハローワークの担当者に相談することで、自分の体調に配慮した職場や、特別な支援が受けられる職場を見つけることができます。
さらに、障害者雇用枠を利用する場合、専門の担当者が相談に乗り、就職活動をサポートしてくれます。
自分に合った求人情報を提供してもらうことで、安心して働ける環境を見つけることができるでしょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害や病気を抱える方がスムーズに就労できるようにサポートする機関です。
職業リハビリテーションを提供し、個々のニーズに合わせた働き方や職場環境の改善を提案してくれます。
特に、体調に波があるネフローゼ症候群の患者にとって、こうしたサポートは大きな助けとなるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就労支援だけでなく、日常生活のサポートも一体的に提供する施設です。
ネフローゼ症候群によって生活リズムが崩れがちな方でも、適切なアドバイスを受けながら、就労と生活のバランスを取るための支援を受けることができます。
例えば、通院のスケジュール調整や、体調に応じた業務調整の提案など、仕事と生活の両方に配慮したサポートを提供してくれるのが特徴です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、病気や障害を持つ方の就職準備をサポートする施設です。
障害者手帳を持っている場合、この事業所を利用して、就職前のトレーニングや、職場での適応支援を受けることができます。
体調に応じた無理のない就職活動ができるよう、個別にサポートを行います。
障害者雇用専門の求人サイト
障害者雇用専門の求人サイトでは、ネフローゼ症候群など腎臓機能障害を持つ方が働きやすい職場の求人情報を提供しています。
体調に合わせた柔軟な働き方ができる企業や、在宅勤務が可能な求人などを探すことができます。
さらに、専門のキャリアアドバイザーによる就職相談も行っており、自分に合った職場を見つけるためのアドバイスを受けることが可能です。
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まとめ
ネフローゼ症候群を患いながら仕事を続けることは、確かにチャレンジングなことですが、適切な治療を受け、職場でのサポートを得ることで、十分に両立が可能です。
体調に合わせた働き方を選択し、無理なく仕事を進めるためには、周囲とのコミュニケーションが重要です。
職場に病気を開示するタイミングや伝え方を工夫し、必要な配慮を受けることで、安心して働くことができるでしょう。
また、就労支援を活用することで、病気を持ちながらでも適切な職場を見つけ、スムーズに就労できる環境を整えることが可能です。
ハローワークや障害者就業支援センターなどを積極的に利用し、自分に合った働き方を見つけましょう。