現役栄養士インタビュー
大阪栄養士ナビのインタビュー第5弾をお届けします。
今回はこれまでの現役栄養士インタビューと異なり、
この夏~秋から新たに栄養士のお仕事をスタートされる
管理栄養士の柏木様にインタビューをいたしました。
つい最近まで転職活動をなさっていた柏木様に
他業種から栄養士に転職しようと思ったきっかけや
未経験で転職先を探すをことの大変さなどを語っていただきました
インタビューは全5回に分けて公開予定です。
柏木様インタビュー第一回:学生時代の実習で失った自信と気付いたこと
第1回の記事では、柏木様が学生時代の実習を通してで気付かされたことと、
自信を失い新卒で栄養士として働くことを断念した経緯について伺いました。
病院・学校・施設など、様々な場で活躍する栄養士。
栄養士として働く人たちの生の声をお届けいたします。
―――まず始めに、自己紹介をお願いします。
柏木優と申します。兵庫出身の29歳です。
神戸女子大学の管理栄養士養成課程を卒業後、地元の食品製造業の会社に就職し、正社員として7年間働いてきました。最近、昨年から始めた転職活動を終えて、まもなく次の職場で働き出そうというところです。
―――前の会社では管理栄養士として働いていたのですか?
いえ、管理栄養士とは全く関係のない仕事をしていました。
―――どのようなお仕事をされていたのでしょうか?
品質保証部というところで分析のお仕事をしておりました。
会社で製造され、製品として出来上がった食品や、食品添加物などの化成品などの商品が規格に入っているかの最終確認を行う仕事をしていました。
簡単に言うと、毎日実験のようなことをしていた感じです。
―――その食品会社に就職したのはどのような経緯だったのですか?
大学在学中は勉強が思うようにいかず、とにかく卒業と国家試験合格を目標にやってきました。
そして卒業後から就職活動を始めたのですが、すでに社会人として働いている周りの友人と自分を比べてしまって、就職活動に焦りを感じてしまっていました。
そんな時、たまたま地元の会社で空きが出ていたのをハローワークで知って、食品に関係する仕事だしいいかなと思い、申し込んでトントン拍子に決まっていって入社、という感じでした。
―――焦りや不安もあったかと思いますが、就活生だった当時、管理栄養士として働こうとは思わなかったのですか?
正直、学生時代の実習などで管理栄養士として働く自信がなくなっていて、管理栄養士として働きたい気持ちも少しはあったのですが、できれば違うことがしたいなと思っていたんです。
ただ、何かこれがしたい!という、はっきりとした目標や夢はありませんでした。
食に関わるお仕事はどんな現場であっても、直接的ではないにしても、命を預かるくらいの覚悟がいることに気づきました
―――実習などで働く自信がなくなったということですが、どのような事が大変でしたか?思い描いていた栄養士の仕事とのギャップはありましたか?
私はもともと、スポーツ栄養に興味があって管理栄養士の道に進みたいと思っていました。
管理栄養士のお仕事には、病院給食の現場であったり、企業の委託給食であったり、老人施設の給食の現場であったり、それぞれに求められることって違うなという印象は持っていました。
とは言ってもぼんやりとしかイメージできず、当時の私は「命に関わるような病気の方の食事ではなく、健康な人が楽しく食べられる食事をサポートできる現場で働きたい」と思っていました。
しかし、臨地実習でお世話になった時に、この思いがとても浅はかだったなと気づく出来事があり、徐々に自信が無くなっていきました。
―――その出来事とは、どういった出来事でしょうか?
まず、陸上自衛隊の駐屯地に実習でお世話になった時のことなのですが、自衛隊で勤務中の方は、過酷なトレーニングを日々積み重ねていらっしゃるため、1日に必要な摂取エネルギーも一般の私たちとは比べ物にならないのですが、そのためにはとにかくたくさん食事からエネルギーや栄養素を摂らないといけません。
私のこの時までのイメージでは、健康な方の食事には制限や我慢ってそれほど無く、食事に悩んでいる人なんてそんなにいないだろう。と、思っていました。
しかし、この自衛隊で勤務されている方の中には、必要なエネルギー分のご飯を食べられず悩んでいる方がいらっしゃいました。
食べなければいけないことは理解しているけれど、実際にはそんなに食べられない。
その現実とのギャップに悩まれている方を目にしたことで、食事に対する悩みや不安って、制限することによる悩みだけではなく、食べられないことに悩むということもあるんだと知りました。
―――食事に関する悩みはそれぞれなんですね。
また、別の実習で保育園の給食現場の見学をさせていただく機会があったのですが、ここでは、健康な人だから命に関わるようなことはない。と思ってしまっていた自分は浅はかだったなと思う出来事がありました。
―――それはどういうことでしょうか?
私の中では「保育園に通う子供=健康」という、イメージを持っていたのですが、保育園児の中にはアレルギー疾患と向き合わなければならない子供さんもたくさんいることを、この実習で知りました。
ただアレルギーの原因となる食品を除外するだけでは無く、調理工程で使われる器具を徹底的に分けるなど、細かなところまで気をつけなければ、少しでもアレルギーの原因物質が体に入ってしまえば、アナフィラキシーショックという、死にも繋がりうる反応が起こってしまう、そんな現場であるということを学ばせていただき、自分の考えの甘さを思い知りました。
この2つの実習を通して、管理栄養士として、人の食事に関わっていくということは、その一人一人の命と向き合っていくということなんだ、食に関わるお仕事はどんな現場であっても、直接的ではないにしても、命を預かるくらいの覚悟がいるのだなと思うようになり、健康だから命に関わるような仕事ではないという考えは絶対にあってはならないのだなと思いました。
それと同時に、私にはそんな大切な役割を担うことができるだろうか?と不安にもなり、そのことから、自信が無くなっていきました。