喜ばれる介護食を目指して
介護食は数種類あるので、提供する側としては大変ですよね。
人員やメニューの関係で、提供するだけで精一杯という施設も少なくないでしょう。
しかし、その介護食は本当に患者様や入居者様に喜ばれているのでしょうか。
今回は、介護食を改善したいと思った私の体験をお話します。
今の介護食で本当にいいの?
「今の介護食で本当にいいんだろうか」これは私が老健で働いていたとき、何度も思った言葉です。
当時私が働いた老健で出していた食事形態は、ミキサー食、きざみ食(極きざみ・荒刻み)、一口大食でした。
やはりミキサー食は見た目が悪く、入所者様から「何を食べているか分からない」「こんなものは食べたくない」といった声を何度も聞きました。
ご家族の方から、「あんなに食べることが好きだった父が、ここまで食べないなんて…」という落胆した声聞いたこともあります。
そんな声を聞くたびに、「このままじゃ良くない」と思うのですが、日々の忙しさにかまけて考えることを放棄するというパターンに陥っていたのです。
その状態を本気で改善しようと思ったきっかけが、研修で訪れた別施設の取り組みでした。
多施設の入居者様の笑顔がきっかけ
研修で訪れた施設は、従来の介護食を改善することを目標に、日々の食事提供を行っているのだと聞きました。
きざみ食をソフト食にすることで、これまで喫食率が低かった入居者様も食べる量が増えたのだそうです。
しかし、ミキサー食をソフト食にするにはとても手間がかかります。
人員の関係や、調理員の技術によっては毎日実施するのが難しいなど、様々な問題があったと聞きました。
くじけそうになる度に、ソフト食を試食してもらったときの入居者様の笑顔を思い出して乗り越えそうです。
認知症が進んでいる方も、ミキサー食のときより喫食率が上がった人が多いと聞きました。
実際、食事の時間を見学した際、ソフト食を美味しそうに召し上がっていた入居者様の顔がとても印象的でした。
私たち管理栄養士にできること
研修終了後、早速自分たちの老健でもソフト食を作るために、調理スタッフと話し合いました。
最初は「そんな手間がかかることは無理」「シフトによっては無理だと思う」「朝は時間がないのにできるの?」など、否定的な意見が多く出ました。
そのため、「最初はメインの1品だけ作ってみる」「朝は出来合いのソフト食を利用する」など折り合いをつけ、ソフト食の提供がスタートしました。
安定するまで紆余曲折があったのは言うまでもありません。
メニューによってはとても大変なときもありましたし、問題が浮上する度にもう元に戻そうかと思ったことも何度もありました。
しかし、入居者様の「美味しかったよ」という声を聞く度に、もう少しやってみようと思えたのです。
ソフト食に前向きでない調理スタッフには実際の食事風景を見てもらい、いかに喜んでもらえているかを体験することで、やりがいを持ってもらえるようになりました。
まとめ:
「今の介護食を改善する」口で言うのは簡単ですが、改善するにはとてつもない労力と努力が必要です。
途中で投げ出したくなるかもしれません。
しかし、喜ばれる介護食を提供することで、管理栄養士や栄養士としてのやりがいをもっと感じられるでしょう。
もし行き詰ったら、実際にソフト食を提供している施設に直接質問するのもアリだと思います。
つい後回しにしてしまいがちですが、患者様や入居者様の笑顔や楽しみのために、介護食のあり方について少し考えてみませんか?