・「特食」の調理方法
はじめまして、私は栄養士経験5年目のRIONです。
病院調理の業務に5年携わり、子育てのために一度離れてブランクはありますが、現在は介護施設でパート勤務として栄養士の仕事を再開しました。
ブランク期間の間に食生活アドバイザーの資格も取得し、食育指導も行っています。
私が栄養士として初めて働いた先は、「病院」でした。
大量調理の仕事には、病院以外にも学校や保育園、食堂などいろいろな場所がありますが、病院以外ではあまり目にすることがない「特食」と言うものがあります。
今回は、病院調理と特食についてお話します。
「特食」ってなに?
私が病院での大量調理の仕事に就いた時に初めて「特食」と言う言葉を知りました。
特食とは病気やアレルギーのある患者さまのための特別なメニュー食のことを言います。
糖尿病や高血圧、卵アレルギーの方など、一人ひとりの要望にお応えしてお食事が作られます。
また、食べられるものと食べられない物など、患者さまのお好みで「出してほしくない食材」を指定される場合もあります。
牛乳アレルギーではないけど、味が苦手で飲めないからつけないでほしいといった要望ですね。
「特食」の調理方法
特食はどのように作ってるの?
入院患者さまの数によっては特食専門のキッチンが用意されている病院もあるようですが、私が働いていた病院は、すべて同じキッチンで行っていました。
献立表を見て、ホワイトボードに特食の人の数をチェックしてから調理に取り掛かります。
例えば、塩分制限のある方の場合は、普通の方の味噌汁を作り、出来たものを別の鍋に人数分確保し、だし汁で薄めてからお出しします。
卵アレルギーで卵料理を食べることができない人には、豆腐を使ったメニューを代わりに出すことがあります。
同じたんぱく質を取ることができ、違うメニューでお出しすることができます。
特食のメニューを把握しながら調理をしていかなければいけないので、迅速な行動かつ的確で丁寧に行わなければいけません。
体力も頭も使うお仕事に、最初はついていくのが大変でしたが、仕事を続けていくうちに「この方は○○が食べられない人」など、把握をすることができるようになります。
ミキサー食や刻み食
患者さまの中には、術後の食事などを提供することもあります。
また、嚥下(飲みこむのが)困難な方もいらっしゃるので、食べやすいように刻んだり、ミキサーをかけてお出しすることもあります。
この食事も特食の一つです。
刻み食を作る場合は、出来上がったものをみじん切りに切ってお出しします。
刻みの中でも、あら刻みや極刻みなど、刻み具合によっても食べやすさが変わってきます。
出来たものを刻む作業にも時間がかかるため、いかに効率よく作業を行うかを考えながら行う必要があります。
ミキサー食の場合は、出来たものをミキサーにかけるので、ものによってはなかなかミキサーにかけられないものがあったりと大変です。
ミキサーを使う頻度が多ければすぐに壊れてしまいます…
私が働いている時は、1年で2回ほど買い替えました。
ミキサー食の中でも、特におかゆはドロッとして回りにくいです。
おも湯がある時は、少しずつ足しながらまわしていかないと、キレイにミキサーをかけることができません。
「一口大」が特食に加わる
実は私には栄養士と言う仕事を離れてからブランクが10年以上あるのですが、最近再び栄養士の仕事をするようになり、聞かない言葉がありました。
それが「一口大」と言う言葉でした。
ミキサー食や刻み食はよく聞いていたのですが、「一口大」は以前にはなかった食形態です。
形のある物と刻みのものの中間が合ってもよいのではと言う意見からできた形態で、デザートスプーンにのるくらいの大きさにしてお出しします。
刻み食も従来同様提供しているのですが、人によっては細かく刻まれた食材がバラバラになってしまい、食べにくいと言う意見も多いようです。
これを解決するために、あんをかけて食べやすくするなど、対策を行ってきました。
今回の「一口大」と言う形態が加わることによって、飲み込む力や噛む力をより保つことができるようになるのではないかと言われています。
特食を作るのは正直大変!だけど…
飲食業界では、どんな分野であっても衛生面には気を付けなければいけません。
そして、特に病院の食事を作るという事は、提供する人の命を左右していると言ってもいいと思います。
そのように考えると、特食を作ることは、それだけ神経を使います。
私も最初は覚えることがたくさんありすぎて大変でした。
時間になかなか間に合わずにバタバタとしてしまうことも多く、見落としが無いようにチェックをするのは特に神経を使います。
正直、ここまで気を使うのは面倒…と感じることもあるかもしれません。
でも、こうしたら食べやすいかな!など、食べる人の事を考えて作るようにすることで、大変なことも大変に感じつつも、それ以上にやりがいを持って仕事をすることができるようになりました。
「病院食は美味しくない」と言ったイメージも強いですが、食事を食べることで、明日への希望を生み出してほしいと思います。
そんな気持ちが強くなればなるほど、退院する日も近くなるかもしれません。
食べることの楽しさをいつまでも忘れないように、どんな食事でも満足していただけるものを提供していけるようになるといいですね。