転職・就労支援

障害者雇用と一般雇用の違いを徹底比較!制度からメリデメまで

障害者雇用と一般雇用の違いを徹底比較!制度からメリデメまで

障害者雇用と一般雇用の違いを徹底比較!制度からメリデメまで

働きたいと願うすべての人にとって、雇用の形は多様であるべきです。

とりわけ、障害のある方々にとっては、自身の特性に合った働き方を選べることが、安定した生活や社会参加に直結します。

本記事では、障害者雇用と一般雇用の違いについて、制度面からメリット・デメリットまで丁寧に解説します。

障害者雇用を検討されている方や、制度について知りたいとお考えの方にとって、正しい理解と判断の助けとなる情報をお届けします。

パソコンを持って案内をする笑顔の女性

 

障害者雇用とは

障害者雇用とは、障害のある方がその特性に応じて就労できるよう、国が制度として整備した雇用形態です。

障害の内容や程度に応じて合理的な配慮が求められるほか、企業側にも一定の雇用義務が課されています。

 

障害者が特性に応じて就労できる制度

障害者雇用は、身体・知的・精神障害などを持つ方が、無理のない形で社会に参加し、経済的自立を目指せる制度です。

例えば、通院の必要がある方には勤務時間の調整、音や光に過敏な方には環境への配慮などが行われます。

このように、障害の特性に合わせて働きやすい職場環境を整えることが制度の目的です。

また、障害者雇用は、就労機会を提供するだけでなく、職場における多様性の推進にもつながります。

多様な価値観や視点が共存することで、組織の柔軟性や創造性が高まり、企業全体の競争力強化にも寄与すると言われています。

さらに、障害者雇用は地域社会の中でも重要な役割を担っています。

就労機会の創出は地域経済の活性化にもつながり、福祉と経済の好循環を生む礎ともなり得ます。

 

事業主に義務付けられていること

法定雇用率と障害者雇用納付金制度

企業には、従業員数に応じて障害者を一定割合で雇用する義務があります。

これを法定雇用率と呼び、民間企業の場合は令和6年(2024年)4月から2.5%に設定されています。

なお、この法定雇用率は段階的に引き上げられており、令和8年(2026年)7月からは2.7%となる予定です。

(厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、令和6年6月1日現在の実雇用率は2.41%でした。)

法定雇用率を達成できない常時雇用する労働者数が100人を超える企業には、1人あたり月額50,000円の障害者雇用納付金が課されることもあります。

この制度は、障害者の就労を社会全体で支えるための仕組みとして機能しています。

納付金は「障害者雇用納付金制度」として、法定雇用率を上回って雇用する企業への助成金や、職場改善のための費用補助に充てられています。

たとえば、障害者職業生活相談員の配置に関する助成や、職場内のバリアフリー化に対する補助金制度など、多様な支援が整備されています。

 

合理的配慮の提供義務

企業は、障害者が職場で不利にならないよう、合理的配慮を提供する義務があります。

これは、働くうえで必要とされる特別な措置(例:作業手順の簡素化、支援機器の導入など)を講じることを意味します。

ただし、過度な負担となる場合は除外されることもあります。

合理的配慮の具体例としては、音声読み上げソフトの導入、休憩時間の調整、指示の明文化、車椅子での通勤を想定した施設のバリアフリー化などがあります。

また、合理的配慮の提供は法令遵守の観点だけでなく、企業の社会的責任(CSR)やSDGsの達成にも関連しています。

 

障害者雇用と一般雇用の主な違い

このセクションでは、障害者雇用と一般雇用の違いについて、採用プロセス、職務内容、サポート体制の3つの視点から丁寧に解説します。

採用プロセスの違い

障害者雇用では、障害のある方に配慮した採用プロセスが導入されることが多くあります。

  • 面接時に希望する配慮事項を事前に確認される
  • 適性検査や試験内容が簡略化される場合がある
  • 就労支援機関が間に入り、事前調整がなされることもある

一方で、一般雇用では、定型の選考フローが適用され、個別の事情に対する特別な配慮は設けられていません。

また、障害者雇用では、採用後のフォローアップ体制も重要です。

職場定着支援員やジョブコーチといった外部支援者が就労状況を見守り、本人と企業の双方に対してアドバイスを行います。

オフィスで働くビジネスウーマン

職務内容と働き方の違い

障害者雇用では、障害のある方の特性に応じて業務が設計されます。

  • 単純作業に特化した業務を中心とする
  • テレワークや短時間勤務といった柔軟な働き方が可能
  • 作業量や業務負荷を段階的に調整する

一方、一般雇用では職務範囲が広く、業務のスピードや変化に柔軟に対応することが求められます。

また、障害者雇用では「ジョブカーブ」という考え方が重視されます。

これは、働く人の成長曲線が一律ではないことを前提とし、その人のペースでのキャリア形成を支えるというものです。

サポート体制の違い

障害者雇用においては、職場での支援体制が整えられています。

  • 外部のジョブコーチによる就労サポート
  • 職場定着支援員による定期的なフォローアップ
  • 上司や同僚も巻き込んだサポート体制の構築

一方、一般雇用ではこうした制度的なサポートは用意されておらず、自らの力で適応していくことが求められます。

もちろん、近年ではメンタルヘルス対応やダイバーシティ研修を実施する企業も増えていますが、障害者雇用のような継続的・個別的支援とは性質が異なります。

障害者雇用のメリット

障害者雇用には、個人だけでなく企業や社会全体にとっても意義深い多くのメリットがあります。

ここでは、働く本人の安心と成長、企業の組織的メリット、社会全体の持続的発展という観点から、主な利点を具体的に解説します。

障害者雇用は単なる制度ではなく、多様な価値観を受け入れ、ともに未来をつくるための一歩とも言えるでしょう。

障害特性に応じた配慮が受けられる

障害のある方が安心して働くためには、その人の特性に応じた環境整備が欠かせません。

障害者雇用では、事前の面談などを通じて本人の希望や必要な配慮を把握し、無理のない業務の割り当てや勤務時間の調整が行われます。

たとえば、精神疾患のある方には業務内容を明確にし、突発的な変更が起きないように配慮する、身体に障害がある方には作業スペースや動線の工夫を行うなど、現場での柔軟な対応が期待されます。

また、聴覚障害のある方には筆談やチャットツールの活用、発達障害のある方には視覚的な手順書の用意など、具体的なサポート手段が整っている職場も少なくありません。

就職のハードルが一般雇用より低い

障害者雇用枠では、一般雇用と比べて応募要件が緩やかに設定されていることが多く、履歴書の空白期間や資格の有無に関わらずチャレンジできる機会が提供されています。

企業によっては、書類選考を行わず、直接面談に進めるケースや、職場実習でスキルを確認する機会を設けているところもあります。

これにより、自分の適性を見極めながら就労に移行しやすくなっています。

また、障害者雇用の求人は、ハローワーク、就労移行支援機関、障害者向けの就職サイトなど、さまざまな経路で公開されており、サポート付きで活動できるのも大きな特徴です。

教育ビジネスイメージ 面接をする女性のポートレート

職場の理解と協力が得られやすい

障害者雇用を行っている企業の多くは、社内で障害に関する研修を実施したり、マニュアルを整備したりして、組織全体で受け入れる体制を構築しています。

そのため、上司や同僚からのサポートも得やすく、安心して働ける環境が整っています。

支援員やジョブコーチが企業と定期的に連携し、本人と職場双方を支援する体制も一般的です。

こうした伴走型の支援体制は、安定した就労継続につながる大きな要素です。

さらに、多様性を受け入れる文化が職場に根付き、障害の有無にかかわらず働きやすい環境が生まれ、エンゲージメント向上や離職率の低下にもつながります。

社会参加と収入の安定

障害のある方にとって、働くことは単なる収入手段ではなく、社会とのつながりを感じ、自己肯定感を得る大切な機会です。

定期的な収入が生活の安定につながるだけでなく、将来の資金形成や自立に向けた一歩にもなります。

「社会に必要とされている」と感じられることは精神面の安定にも貢献し、リハビリとしての効果も多くの現場で報告されています。

また、労働を通じてスキルの向上や人間関係の構築が進み、より豊かな人生を築くための重要な要素となります。

障害者雇用のデメリット

障害者雇用には多くの利点がある一方で、実際に働くうえでの制約や悩みも無視できません。

ここでは、代表的なデメリットや課題について丁寧に解説します。

これらを正しく理解しておくことで、就職先の選択や働き方の見通しが立てやすくなります。

職種や働き方の選択肢が限られる傾向

障害者雇用では、企業が配慮しやすい業務に限定されることが多く、単純作業やルーティンワークが中心になる傾向があります。

たとえば、書類整理やデータ入力、清掃業務といった補助的な業務が多くを占めています。

そのため、本人がやりがいを感じる仕事や、これまでに培ったスキルを生かせる職種に出会うことが難しい場合もあります。

また、短時間勤務やパートタイム中心の雇用形態が多いため、フルタイムで働きたい方や、正社員としてキャリアを積みたいと考えている方にとっては、選択肢が狭まってしまうこともあるでしょう。

このような背景から、専門性の高い分野で活躍したい方や、キャリアアップを望む方にとっては、「障害者雇用=妥協」と感じてしまうこともあるかもしれません。

一般雇用との賃金格差がある

障害者雇用では、賃金水準が一般雇用よりも低くなる傾向があります。

これは、担当業務の内容が限定的であることや、労働時間が短いことが要因とされています。

厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査結果」によると、雇用されている障害者の平均賃金は、障害種別や働き方(週所定労働時間など)によって異なります。

例えば、週所定労働時間が30時間以上の精神障害者の平均賃金は約19.3万円、知的障害者は約15.7万円、身体障害者は約26.8万円となっています。

全体の傾向として、一般労働者の平均賃金と比較すると差があるのが現状です。

さらに、昇給や賞与制度が整備されていない企業も少なくありません。

このため、収入面に不安を抱えやすく、生活費のやりくりに苦労する方もいます。

また、就労後も「将来的に収入が上がっていく見込みがあるのか」といった点が不透明なケースもあり、長期的なキャリア設計が難しくなる要因となるのです。

周囲の配慮が過剰に感じられることも

職場での配慮は安心感につながる反面、過剰であったり、本人の意図や能力に合わない内容であったりすると、かえってストレスの原因になることもあります。

たとえば、責任の軽い業務ばかり任されると、「自分は信頼されていないのでは」「成長の機会が奪われているのでは」と感じてしまう方も少なくありません。

また、配慮が形式的で一方的に決められていると、「自分の意見が尊重されていない」と思うこともあります。

このような状況が続くと、孤立感や職場内での疎外感を覚える原因にもなりかねません。

企業にとっては善意のつもりで行っているサポートでも、本人との十分なコミュニケーションや意思確認が不足していれば、逆効果になることもあるのです。

大切なのは、「どうすれば最も能力を発揮しやすく、働きやすいか」を当事者と一緒に考え、必要な支援を対話を通じて柔軟に調整していく姿勢です

 

障害者の就労を支援する制度・機関

障害のある方が無理なく社会参加し、自分らしく働くことができるように、さまざまな支援制度や機関が整備されています。

これらの仕組みを知っておくことで、就職活動をより前向きに進めることができます。以下に、代表的な支援機関・制度を紹介します。

ハローワークの専門援助窓口

全国のハローワークには、障害のある方の就職を専門にサポートする窓口(専門援助部門)が設けられています。

ここでは、専門知識を持つ職員や相談員が常駐し、一人ひとりの特性や希望に応じたきめ細やかなサポートを行っています。

たとえば、以下のような支援が受けられます:

  • 障害特性や希望職種に合わせた求人の紹介
  • 就労準備に関する相談(例:履歴書の書き方や模擬面接などの面接対策)
  • 企業とのマッチング調整、連絡の仲介
  • 職場実習(トライアル雇用など)のあっせん
  • 必要に応じた面接への同行や、採用後の職場定着支援

希望に近い求人と出会える可能性が高まります。

初めての就職や転職活動に不安を感じている方も、安心して相談できる体制が整っています。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方に対して、ハローワークと連携し、より専門的かつ実践的な職業リハビリテーションサービスを提供する機関で、各都道府県に設置されています(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営)。

職業リハビリテーションの専門家(障害者職業カウンセラーなど)による個別支援が行われており、障害のある方が職場で長く安定して働けるようサポートしています。

主な支援内容:

  • 職業評価(職業能力や適性の評価、職業選択に関するアドバイス))
  • 職業準備支援(作業体験、職業準備講習、社会生活技能訓練など)
  • ジョブコーチ支援事業(職場適応のための専門的な支援)
  • メンタルヘルスに関する相談支援

また、事業主に対しても、障害者の雇用管理に関する相談・援助や、合理的配慮に関するアドバイスなどを提供しており、雇用側の理解促進にも寄与しています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づき設置された福祉サービス事業所で、主に一般企業への就職を目指す65歳未満の障害のある方を対象にしています。

利用期間は原則として2年間です。

個別の支援計画に基づき、以下のような多岐にわたる支援を提供します。

  • 就労に必要な知識・能力向上のための訓練(例:PCスキル、ビジネスマナー)
  • 求職活動に関する支援(例:履歴書添削、面接練習、企業探し)
  • 適性に応じた職場探しや職場実習のあっせん
  • 就職後の職場定着支援(就職後の相談対応、企業との調整など)
  • 生活リズムの安定やコミュニケーションスキルの向上支援

多くの事業所があり、特色もさまざまなので、見学や体験利用を通じて、自分に合った場所を選ぶことが大切です。

まとめ

障害者雇用は、障害のある方が自分らしい働き方を実現するための重要な選択肢の一つです。

制度が整備され、社会の理解も少しずつ広がってきた一方で、職種や賃金、職場内でのコミュニケーションなどに課題も残されています。

重要なのは、ご自身の特性や希望をよく理解し、利用できる制度や支援機関を上手に活用しながら、焦らず納得できる道を選ぶことです。

そして、企業側も共に働く仲間として、対話と適切な配慮を継続していくことが求められます。

多様な人材がその能力を最大限に発揮し、安心して働ける社会を築くために、一人ひとりが理解を深め、具体的な行動を積み重ねていくことが大切です。

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この記事の執筆者

村上 智之職業:愛知県委託事業 資格:障害者パソコン訓練(スクエアマイスターシューレ)校長
村上 智之職業:愛知県委託事業 資格:障害者パソコン訓練(スクエアマイスターシューレ)校長

2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。

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