障害者雇用の短時間勤務は可能?時短の特例とメリット

障害者雇用の短時間勤務は可能?時短の特例とメリット
近年、障害者雇用において「短時間勤務」が注目を集めています。
障害のある方が自分の体調や生活リズムに合わせて働けるよう、企業や国も柔軟な制度を整えつつあります。
本記事では、障害者の短時間勤務に関する制度や特例措置、実際の導入ポイントなどを詳しく解説します。
短時間勤務は、障害のある方にとって身体的・精神的な負担を軽減し、自分らしい働き方を実現する有効な手段です。
一方で、企業側にも生産性向上や人材の多様化といったメリットがあります。
制度の背景や最新動向、成功事例を踏まえ、これから短時間勤務の導入を検討する方にとって有益な情報をお届けします。
障害者雇用の労働時間の基準
障害者の雇用を進めるうえで、労働時間に関する基準を正しく理解することは欠かせません。
特に法定雇用率の算定対象となるか否かは、勤務時間によって大きく左右されるため、企業側にも求職者側にも制度の正確な理解が必要です。
このセクションでは、障害者雇用における労働時間の原則、例外、さらには制度を活用するうえでの留意点について詳しく解説します。
原則週20時間以上の勤務が必要
障害者雇用促進法に基づき、企業が障害者を法定雇用率の対象とするためには、原則として週20時間以上の勤務が必要です。
この基準を下回ると、法定雇用率の算定対象にはならないのが一般的です。
この「週20時間」という基準は、単なる労働時間のラインではなく、雇用保険の加入対象とも連動しており、社会保険制度との関連も深いものです。
週20時間を超えることで雇用保険に加入でき、失業給付や各種助成制度の対象にもなりやすくなります。
特に、失業時の生活保障や職業訓練などの再就職支援を受けるためには、雇用保険への加入が前提となることが多いため、この基準を満たすことの意味は大きいといえるでしょう。
一方で、週20時間以上の勤務を確保することが困難な障害者にとっては、この基準が雇用の大きな壁になることもあります。
たとえば、精神疾患の回復期にある方や、慢性的な体調不良を抱える方にとって、週20時間を超える連続勤務は大きな負担となる可能性があります。
また、内部障害や発達障害など、外見からは分かりづらい障害を抱える方の中には、疲労やストレスの蓄積が通常よりも速く進行し、一定以上の労働時間に適応するのが難しいケースもあります。
そのため、企業側は単に「20時間を満たせば良い」と考えるのではなく、個々の障害特性や生活環境を踏まえた柔軟な働き方の設計が求められます。
具体的には、1日4時間×週5日、または1日5時間×週4日といった働き方が考えられます。
さらに、業務の難易度や職場環境の影響も考慮し、本人の適性に合った業務内容の検討が重要です。
たとえば、静かな環境で集中力を要する作業を行う方には、個室やパーテーションのある作業スペースを用意することが推奨されます。
また、20時間以上の勤務であっても、実際に業務が負担になりすぎて短期離職につながるケースもあるため、雇用後のフォローアップや段階的な就労支援も不可欠です。
たとえば、入社後1~2か月間は週20時間に満たない短時間勤務から始め、徐々に労働時間を延ばしていく「ステップアップ型の雇用設計」も有効です。
企業と本人、そして支援機関が連携して、適切な労働時間の設定と見直しを行う体制づくりが、障害者雇用の安定と質の向上につながります。
また、近年では、特例子会社や支援付き雇用といった多様な就業形態の中で、20時間をひとつの目安としつつも、より柔軟な働き方を企業独自に整備する動きも見られます。
これらの取り組みは、単に制度を満たすための雇用ではなく、「働く本人が無理なく続けられる環境」を整えるという意味でも、非常に価値のある方向性といえるでしょう。
次に、週20時間未満の勤務でも雇用率算定の対象となる「特例措置」について見ていきましょう。
週20時間未満の短時間勤務に対する特例措置
障害のある方の中には、体力や精神面の課題により、いきなり週20時間以上の勤務をこなすことが難しい方も少なくありません。
特に、就労経験が浅い方や、ブランクのある方にとっては、短時間勤務から始めることが自信や習慣の形成につながる場合があります。
こうした背景を受けて、国は週20時間未満の勤務でも雇用率に算入できるような特例措置を整えています。
特例措置の導入は、企業にとっても重要な意味を持ちます。
例えば、人材の多様化を進める上で、柔軟な雇用制度の整備は避けて通れません。
週20時間未満の勤務でも障害者雇用率に算定されることで、企業は自社のニーズに合った雇用形態を構築しやすくなります。
また、実際の就労状況に応じた支援が可能となるため、結果として雇用の質も向上します。
こうした制度の活用は、単に制度的な対応にとどまらず、障害者が社会の一員として活躍する機会を広げることにもつながります。
企業・本人双方にとって無理のない形で雇用を実現するために、これらの特例を積極的に取り入れることが求められています。
このセクションでは、精神障害者に向けた短時間勤務の特例と、企業の努力を雇用率算定に反映するための柔軟な制度について詳しく紹介します。
短時間勤務の精神障害者に対する特例
精神障害のある方の中には、体調や症状の特性から、はじめから週20時間以上の勤務をこなすことが難しいケースがあります。
このような事情をふまえ、週10時間以上の勤務でも法定雇用率の算定対象とすることができる特例制度が導入されました。
この制度は、令和4年の障害者雇用促進法の改正により整備され、令和6年4月1日から施行されています。
制度の目的は、精神障害のある方が無理なく働きながら社会参加できるよう、就労機会を広げることにあります。
制度の対象となるには、週10時間以上の勤務を一定期間継続していることが条件です。
また、企業側には、雇用の実態を示すために、勤務時間や勤務状況を記録した書類の整備が求められます。
たとえば、出勤簿や勤怠記録、業務報告などを使って、就労の安定性を確認できるようにしておく必要があります。
さらに、働いている方の状況を定期的に確認し、必要に応じて業務の内容や職場環境を見直すことも大切です。
このような取り組みによって、本人の不安を軽減し、職場でのトラブルや離職のリスクも低く抑えることができます。
企業にとってもこの制度は、単に法定雇用率の達成に役立つだけでなく、精神障害者の就労支援に取り組む姿勢が社会的にも評価されるという意味でも重要です。
また、短時間勤務からスタートして、本人の体調や業務への適応状況に応じて、段階的に勤務時間を増やしていくことも可能です。
最終的にフルタイムでの雇用につなげることも視野に入れることができます。
この制度は、精神障害者の働く機会を一時的なものにせず、継続的な雇用を実現するための有効な支援策として、今後の活用が期待されています。
週20時間未満の雇用率算定特例
厚生労働省は、精神障害者だけでなく、他の障害種別においても、トライアル雇用や就労訓練の一環として短時間勤務を行う場合、企業側の努力を評価する形で雇用率に反映させる特例措置を設けています。
この制度の背景には、「週20時間の壁」によって就労機会を制限されていた多くの障害者の声があります。
特に重度の身体障害、内部障害、知的障害など、継続的に体力や集中力を保つことが難しい障害特性を持つ方にとって、柔軟な雇用制度は働く第一歩となりえます。
この特例を活用するには、企業が支援機関と連携し、短時間勤務の枠組みを明示した雇用計画を立てる必要があります。
雇用主は、労働時間や業務内容、支援内容を明文化し、一定期間の実施状況を記録・報告する義務があります。
これにより、単なる時短雇用ではなく、継続性と成長性を持った雇用として評価されるのです。
また、対象者が週10時間以上勤務していることが条件となり、そのうえで定着支援や職場適応支援が継続的に行われている場合に、雇用率の算定対象とされます。
就業後にフルタイム勤務へ移行する可能性もあり、段階的な働き方の実現にもつながります。
企業側のメリットとしては、障害者雇用率を充足できるだけでなく、多様な人材を受け入れる組織文化の形成にも貢献します。
また、短時間勤務であっても能力を発揮できる場を提供することで、職場全体の生産性やモチベーション向上にも好影響を与えることがあります。
短時間雇用の助成金制度
短時間勤務での障害者雇用に取り組む企業には、国や自治体からの助成金制度も整備されています。
たとえば「特定求職者雇用開発助成金(短時間労働者コース)」では、週20時間未満の労働でも対象となるケースがあります。
この助成金のほか、「障害者雇用安定助成金」や「中小企業障害者雇用支援助成金」なども活用できる場面があります。
助成金には申請条件や支給要件があるため、事前にハローワークや地域障害者職業センターなどの支援機関に相談することが大切です。
また、助成金は単に人件費を補填するだけでなく、職場のバリアフリー化や設備導入、支援者(ジョブコーチ)の配置など、働きやすい職場環境を整備するための投資にも充てることができます。
これにより、長期的に障害者が活躍できる土台作りにもつながるでしょう。
障害者の短時間勤務を成功させるポイント
短時間勤務は、単に労働時間を短縮するだけではなく、業務内容や働き方全体を見直すことによって、障害者が持続的に働ける環境を整える取り組みです。
ここでは、短時間勤務を効果的に導入・継続していくための実践的なポイントについてご紹介します。
業務と勤務時間のマッチング
障害者が短時間で効率的に働くためには、業務内容と勤務時間のバランスを見極めることが非常に重要です。
集中力や体力に限界がある場合には、負荷が少なく達成感を得やすい業務を優先的に割り当てるといった工夫が求められます。
具体的には、以下のような取り組みが効果的です:
- 業務を細分化し、1日の作業量を調整しやすくする
- 定型的な事務作業や軽作業など、短時間でも完結しやすい業務を選定する
- 成果の可視化ができる業務を中心に据える
- 単純作業やルーチン業務だけでなく、個人の得意分野を活かせる業務を積極的に取り入れる
- 就業開始前に業務内容を事前に共有し、不安軽減を図る
また、業務内容は一度決めて終わりではなく、実際に仕事を始めてからの様子を観察し、定期的に内容を見直すことで、より定着しやすくなります。
テレワークの活用
障害の特性によっては、通勤が負担になる場合もあります。
こうしたケースでは、在宅勤務などのテレワークを導入することで、身体的・精神的な負担を大きく軽減することが可能です。
テレワークを導入する際のポイント:
- 明確な業務指示や業務報告のルールを定める
- ITツール(チャット、メール、タスク管理システム等)を活用して進捗を共有する
- 定期的なオンライン面談を行い、孤立感を防ぐ
- 就業規則にテレワーク勤務に関する条項を盛り込み、労使で合意する
- 自宅の作業環境整備に対して補助や備品提供を行う
特に精神障害のある方にとって、自宅という安心できる環境で働くことが安定した就業継続に直結する場合もあります。
企業側がテレワーク体制を整備することで、より多様な人材の活用が可能になります。
柔軟な勤務時間の設定
障害者の中には、体調の波により毎日同じ時間に働くことが困難な方もいます。
こうした方には、フレックスタイム制やシフト制の導入が有効です。
たとえば:
- 午前中のみや週3回の勤務からスタートする
- 体調が安定した時間帯に勤務時間を設定する
- 回復状況に応じて段階的に時間を延ばす
- 医療機関の通院や服薬状況に応じて、勤務時間の調整に柔軟に対応する
- 本人と話し合いながら、短期間での見直しスケジュールを設ける
柔軟な勤務時間の運用は、定着率の向上にも寄与します。
また、他の従業員とのシフト調整を通じて、職場全体の理解や協力体制の醸成にもつながります。
適性に応じた業務の見直しと調整
短時間勤務を導入した後も、業務が本人に適しているかどうかを定期的に見直すことが大切です。
業務内容が適していないと、ストレスや疲労の原因となり、早期離職のリスクが高まります。
そのため、以下のような見直しを継続的に行うことが推奨されます:
- 定期的なフィードバック面談を実施する
- 作業スピードや負担感などを本人と共有・評価する
- 必要に応じて配置転換や業務の再設計を行う
- 職場の同僚や管理職との連携を深め、情報共有を密にする
- 本人のスキルアップに応じて、業務のステップアップや幅を広げる
このように、雇用後のフォローアップを丁寧に行うことで、短時間勤務であっても安定した雇用関係を築くことができます。
本人の強みや希望に寄り添った業務設計は、企業にとっても貴重な戦力を活かすための重要な取り組みです。
短時間勤務の障害者雇用を進める手順
短時間勤務による障害者雇用を円滑に進めるためには、単に制度を導入するだけではなく、職場全体の理解と協力、実務的な準備が不可欠です。
ここでは、企業が段階的に行うべきステップを具体的に紹介します。
社内の理解醸成と制度整備
まず重要なのは、経営層から現場スタッフまで、障害者雇用の意義や短時間勤務の必要性について理解を深めることです。
トップダウンだけでなく、ボトムアップで意見を汲み取る双方向の取り組みが有効です。
具体的な取り組みとしては:
- 社内研修や勉強会の実施(障害の理解、配慮のポイント)
- 成功事例やデータを活用したプレゼンテーション
- 就業規則や人事制度への反映(短時間勤務制度の正式導入)
- 上司・同僚への受け入れガイドラインの策定
- 部署ごとの受け入れマニュアルやチェックリストの作成
こうした準備を通じて、制度導入後の現場混乱や誤解を未然に防ぐことができます。
また、研修では「障害のある方と接したことがない」社員に向けて、配慮の方法や声かけのポイントを具体的に伝えることも効果的です。
適切な業務の選定とアサイン
短時間勤務でも十分に成果を出せるよう、本人の能力・特性に適した業務を選定することが重要です。
また、部署やチームの中で孤立しないような業務設計も求められます。
検討すべきポイント:
- 作業の切れ目がわかりやすい、タスクベースの業務
- 一人完結型ではなく、周囲と連携できるチーム業務
- 1~2時間単位で進めやすい作業
- 負担が少なく、かつ成果が見える業務
- 本人の希望や強みを聞き取ったうえでの業務設計
さらに、業務に必要なスキルや適性を見極めるため、採用前の職場体験や短期インターン制度を活用するのも効果的です。
また、業務マニュアルやチェックシートを整備することで、誰でも一定水準の成果を上げやすい環境をつくることができます。
採用プロセス時の工夫
短時間勤務に適した人材を採用するためには、求人情報の記載内容や面接時のコミュニケーションにも工夫が必要です。
具体的な対策として:
- 募集要項に「短時間勤務可能」「時間・曜日応相談」などを明記
- 実習や職場見学の機会を提供し、職場とのミスマッチを防ぐ
- 面接時に具体的な勤務イメージや配慮事項について確認
- 必要に応じて、家族・支援者同席での面談を実施
- エージェントや就労支援機関を活用したマッチング
さらに、採用に際しては「働きやすさ」「配慮がある職場環境」といった企業側の取組を求人票やホームページで発信することも重要です。
障害のある方に安心感を与えるだけでなく、企業の社会的信用を高める効果もあります。
継続的な評価と改善
制度は導入して終わりではありません。
短時間勤務の実施状況や成果を定期的に振り返り、必要に応じて改善を図ることが、継続的な雇用と制度の成熟に不可欠です。
評価のポイント:
- 本人の就労状況(体調、業務への適応、モチベーション)
- 周囲の受け入れ状況(チームとの連携、支援体制)
- 担当業務の成果や課題(業務量、質、納期遵守)
- 支援体制の有効性(ジョブコーチ、社内相談体制など)
- 想定外の課題への対処(急な欠勤、業務ミス等)
評価は、1on1の面談や支援者を交えた定例ミーティングなどを通じて実施します。
本人にとって無理のない働き方が維持されているかを確認し、必要に応じて就業条件を見直すことがポイントです。
また、これらのフィードバックを次回の雇用や制度運用に反映させることで、企業全体としての障害者雇用の質が高まっていきます。
次章では、短時間勤務によって得られる具体的なメリットについて紹介します。
短時間勤務の障害者雇用のメリット
短時間勤務制度を導入することは、障害のある方だけでなく、企業にとっても多くのメリットがあります。
ここでは、雇用の柔軟性や多様性を高め、職場環境の改善や人材戦略の幅を広げる点など、具体的な利点を詳細に紹介します。
適材適所の人材活用が可能に
障害者雇用において短時間勤務を導入することで、従業員の能力や特性に合わせた配置がしやすくなり、適材適所の人材活用が可能になります。
たとえば、特定の時間帯に集中力を発揮できる方にはその時間に重要な業務を任せたり、細かい作業が得意な方には検品やデータ入力などの業務を割り振るといった形で、それぞれの強みを活かす運用が実現できます。
このように短時間であっても、生産性の高い人材を確保することができ、結果として業務の質や効率の向上にもつながります。
また、業務の細分化やマニュアル化を進める過程で、職場全体の業務プロセスの見直しにも寄与します。
地方在住の障害者の直接雇用も実現
テレワークの普及や柔軟な勤務制度の導入により、居住地に関係なく雇用の機会を提供することが可能になり、地方在住の障害者の採用も現実的になります。
これまで都市部への通勤が困難であった障害者にとって、短時間勤務は現実的な働き方の選択肢となります。
特に地域によっては、障害者向けの就労支援機関や求人情報が限定的であったため、企業側が直接採用する体制を整えることは、地域の活性化にもつながる重要な取り組みです。
また、地方に暮らす障害者にとって、通勤や住環境の課題が少なくなることは長期的な就業継続にも大きな影響を与えます。
企業にとっても多様な人材を確保するチャンスが広がるという点で、非常に大きなメリットといえます。
従業員のエンゲージメント向上にも寄与
障害者にとって働きやすい環境を整えることは、組織全体の働きやすさや心理的安全性を高めることにもつながり、従業員のエンゲージメントの向上にも効果的です。
短時間勤務の導入により、時間の使い方や働き方に対する柔軟な考え方が社内に広がります。
これによって、子育てや介護などライフイベントと仕事の両立に悩む従業員にも好影響を与えることができ、企業文化の変革にもつながります。
さらに、障害者と共に働くことを通じて、職場全体のコミュニケーションの質が高まり、多様性に対する理解が進むことも期待できます。
こうした変化は、離職率の低下や職場の一体感の醸成といった形で現れ、企業の持続的な成長を支える土台になります。
次章では、短時間勤務を導入・定着させるために支援機関をどのように活用できるかを解説します。
支援機関の活用で円滑な定着を
短時間勤務での障害者雇用を成功させるためには、企業内だけで対応を完結させるのではなく、外部の支援機関と連携することが重要です。
採用から定着までのプロセスにおいて、専門的な知見や人的支援を取り入れることで、障害のある方が無理なく職場に慣れ、長期的に働き続けるための土台を築くことができます。
就労移行支援事業所との連携
就労移行支援事業所は、一般就労を目指す障害者に対して、職業訓練やビジネスマナー、応募書類の作成支援、職場実習などを提供する福祉サービスです。
企業にとっては、就労前から障害者の特性や強みを把握した上で採用を進められる大きなメリットがあります。
- 採用前に実習を実施し、業務との適性や勤務時間の相性を確認
- 事業所の職員と企業担当者が面談し、支援方針や配慮事項を共有
- 採用後も定期的に事業所からの訪問・助言を受ける
このようなプロセスを通じて、企業側は障害者の特性を理解したうえで適切な業務設計ができ、本人にとっても安心して働き始めることが可能になります。
定着支援や職場適応援助者(ジョブコーチ)の利用
就職後の支援として有効なのが、「定着支援」や「職場適応援助者(ジョブコーチ)」の存在です。
これらは、職場での人間関係や業務への適応に課題が生じた際に、外部の第三者として中立的な立場から助言・支援を行う専門職です。
- 障害者本人への日常的な業務サポート(業務手順の確認、声かけ等)
- 企業内スタッフへの支援方法や接し方に関するアドバイス
- 勤務開始直後の不安や混乱を軽減するための同行支援
- トラブルやミスが起きた場合の第三者的な調整・フォローアップ
このような支援があることで、障害者本人は安心感を持って業務に取り組め、企業側も不安なく受け入れることが可能となります。
ジョブコーチの支援は数か月間にわたって継続することが一般的で、職場への定着を確実にするうえで非常に効果的です。
障害者就業・生活支援センターの活用
地域ごとに設置されている「障害者就業・生活支援センター」も、有力な支援機関の一つです。
ここでは、就労と生活の両面から一貫したサポートが提供されており、特に体調管理や金銭管理といった生活面の課題がある方にとって重要な役割を果たしています。
- 勤務開始後の生活環境の安定に向けたサポートが受けられる
- 離職リスクを早期に察知し、必要な支援に繋げられる
- 難しい相談ごとや制度利用に関する助言を得られる
こうした多面的な支援を取り入れることで、職場内外での孤立を防ぎ、障害者本人が無理なく継続就労できる仕組みを構築できます。
支援機関との連携は、短時間勤務に限らず、すべての障害者雇用において鍵となるポイントです。
企業単独では補いきれない課題に対して、的確なフォローが期待できる外部資源をうまく活用することで、より質の高い雇用と定着が実現できます。
次章では、ここまでの内容をふまえ、短時間勤務制度の意義と今後の展望についてまとめます。
まとめ
障害者の短時間勤務制度は、本人の体調や特性に合わせた働き方を実現するための、重要な雇用支援の仕組みです。
従来の「週20時間以上」という雇用基準にとらわれることなく、より柔軟に働ける選択肢が広がることで、障害のある方が安心して社会参加できる道が開かれました。
特例制度の活用により、週10時間以上の短時間勤務であっても、一定の条件を満たせば法定雇用率の算定対象となるようになりました。
これにより、企業にとっては新たな人材確保の機会となり、採用のハードルも大きく下がっています。
短時間勤務を導入する際には、業務の切り出しや職務設計、勤務スケジュールの柔軟な設定など、現場に即した工夫が欠かせません。
これらを丁寧に整えることで、定着率や生産性の向上といった成果につながる可能性も高まります。
また、短時間勤務は、地方在住の方や長時間勤務に不安を感じる方にも働く機会を提供できる手段であり、多様な人材の活躍を後押しする制度として大きな意義を持っています。
このような取り組みは、企業における働き方改革の一環としても位置づけられ、職場全体の柔軟性や対応力を高める効果も期待できます。
少子高齢化が進み、労働力確保が課題となるこれからの時代において、障害者雇用の意義はさらに高まっていくでしょう。
短時間勤務制度を積極的に活用しながら、一人ひとりが自分らしく働ける環境づくりに取り組むことが、社会全体の持続可能な成長につながります。
企業には、制度の内容を正しく理解し、現場で実効性のある運用を行っていくことが求められます。
障害者が短時間であっても安心して働ける社会の実現に向けて、今こそ行動に移すべき時です。
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。