障害者が長く働き続けるコツ!年齢別の就労状況と定着支援
日本において障害者の就労が進められてきた背景には、障害者の経済的自立や社会参加の推進という重要な意義があります。
しかし、制度が整備されてきた一方で、「働き始めたものの長く続けられない」といった声も少なくありません。
とくに年齢や障害の種類によって、就職のしやすさや職場での悩みも大きく異なります。
だからこそ、一人ひとりが自分に合った働き方を見つけ、職場環境や支援制度と上手につながることが重要です。
この記事では、障害のある方が安定して働き続けるために必要な考え方や制度、職場での工夫をわかりやすくお伝えします。
障害者の就労に関するデータ
障害者の雇用状況は年々改善の兆しを見せていますが、その背景には国の制度改正や企業の理解促進、そして障害者本人の努力が積み重なっていることを忘れてはなりません。
障害者雇用促進法の整備や雇用率制度の強化により、障害者を雇用する企業の数は確実に増えています。
2024年の厚生労働省の発表によれば、民間企業における障害者の実雇用率は2.41%に達し、過去最高を更新しました。
しかし、「就職できること」と「長く働き続けられること」は別問題です。
ここでは、平均勤続年数や離職率、年齢ごとの就労傾向について詳しく見ていきます。
障害者の平均勤続年数と離職率
厚生労働省の令和5年版「障害者雇用実態調査」によると、障害種別ごとの勤続年数は以下の通りです。
- 身体障害者:平均12年2か月
- 知的障害者:平均9年1か月
- 精神障害者:平均5年3か月
- 発達障害者:平均5年1か月
いずれの障害種別においても、前回(令和2年)の調査よりも勤続年数が伸びており、職場への定着が進んでいることが読み取れます。
特に精神障害者・発達障害者においては、過去に短期間での離職が課題とされていましたが、近年では支援制度の充実や職場環境の改善により、定着率の向上が見られます。
とはいえ、全体としては一般労働者と比べて短い傾向が残っており、働き続けるための支援のさらなる拡充が求められます。
年齢別の就労状況の特徴
障害者の就労は年齢によって抱える課題が異なり、それぞれに応じた支援策や働き方の工夫が必要です。
以下に、年齢層ごとの特徴を詳しく解説します。
中高年齢層の就労の現状
40代・50代の障害者にとって、転職や再就職の壁は決して低くありません。
長年同じ職場で働いてきた場合、再就職先の業務内容や職場文化に適応するための柔軟性が求められます。
また、加齢に伴う体力の低下や持病の悪化も、就労の継続を妨げる要因になります。
しかし、この世代には豊富な経験や対人スキル、職業倫理が備わっていることが多く、これらを活かせる職場を見つけることができれば、若年層よりも高い定着率を誇るケースもあります。
特に中高年層の就労では「過去のスキルを活かす働き方」が重要な視点となります。
特に、中高年層には以下のような支援策が有効です。
- シニア向け職業訓練の活用
- 中高年対象の再就職支援事業(都道府県主導)
- テレワークによる通勤負担の軽減
また、再就職に不安を抱える中高年の方に対しては、ジョブリターン制度(再雇用制度)やミドル・シニア向け求人に特化したマッチング支援の利用も選択肢の一つです。
若年層の就労の現状
一方で、20代〜30代の若年層は、就業経験が乏しく、職業意識や就労スキルが未成熟なケースが多く見られます。
そのため、職場での基本的なルールや報連相(報告・連絡・相談)の習得が定着へのカギとなります。
さらに、若年層は「働くことへのイメージが曖昧」「職場への不安が強い」などの心理的課題を抱えがちであり、自己理解や職業理解を深めるための支援が欠かせません。
高校や大学卒業後すぐに就職するケースでは、社会人経験がないことへの不安感も大きく、初期支援が重要です。
特に有効なのは以下のような取り組みです。
- キャリアカウンセリングの実施
- 若者向け職場実習・体験就労
- ジョブコーチによる職場定着支援
また、学校卒業後すぐに就職を目指すのではなく、まずは就労移行支援事業所で職業訓練やビジネスマナーを学ぶ段階を経ることで、自信を持って就労に臨むことが可能となります。
自己理解の支援と段階的な就労経験の蓄積が、若年層の職場定着を後押しします。
長く働き続けるための心構え
就労の定着にはスキルや制度の活用といった外的な要因に加えて、本人の心構えや考え方といった内面的な姿勢が大きく影響します。
障害のある方が安心して長く働くためには、自分自身の状態や気持ちを客観的に理解し、必要な工夫を取り入れていくことが求められます。
ここでは、安定して長く働き続けるために意識したいポイントを紹介します。
自分に合った仕事と職場環境を選ぶ
障害のある方が就職を目指す際には、給与や勤務時間だけでなく、自分の特性や希望に合った仕事を選ぶことが大切です。
たとえば、体調に波がある場合は、柔軟な勤務時間が設定できる職場や在宅勤務が可能な業務を選ぶとよいでしょう。
仕事内容がシンプルで明確な業務や、コミュニケーション頻度が低めの業務など、自分の特性と照らし合わせながら選択することも大切です。
「得意なことを活かせる職場」よりも、「無理なく続けられる職場」を重視する考え方が、長期的な安定につながりやすくなります。
また、職場見学や実習制度を活用して、事前に職場の雰囲気や作業内容を確認することもミスマッチを防ぐうえで有効です。
就労移行支援事業所やハローワークなどでは、こうした実習先の紹介を受けられる場合があります。
必要な配慮は率直に伝える
多くの企業では「合理的配慮」の提供が求められていますが、その実現には本人からの申し出が不可欠です。何に困っているのか、どのような配慮があると働きやすいのかを整理し、自分の言葉で伝えることが大切です。
以下のような点を事前にメモにしておくと、面接や就労時に役立ちます。
- 長時間の集中が難しいため、定期的に休憩を取りたい
- 聴覚過敏があるため、静かな作業環境を希望したい
- 通院のため、定期的な休みを取りたい
こうした配慮の希望は、面接時だけでなく、実際に働き始めたあとでも見直しや相談が可能です。
最初は気づかなかったことでも、業務に取り組む中で必要だと感じる場面は少なくありません。
自分から声をあげることは、安心して働き続けるための大切な一歩です。
働く目的とモチベーションを意識する
「生活費を得るため」「安定した暮らしを実現したい」といった現実的な目的に加えて、「自分はなぜ働くのか」「働くことで何を得たいのか」という気持ちに目を向けることも、就労を続ける力になります。
たとえば、「人とつながりたい」「社会の役に立ちたい」「毎日にリズムを持たせたい」など、モチベーションは人によって異なります。紙に書き出したり、支援者と話し合ったりすることで、自分にとっての働く意味を再確認してみましょう。
また、モチベーションは時間とともに変化するものです。
仕事がうまくいかないときほど、「なぜこの仕事を選んだのか」「どんな生活を目指しているのか」といった原点に立ち返ることが、気持ちを立て直す助けになります。
失敗を恐れずチャレンジする
職場では、新しい作業や人との関係づくりなど、不安に感じる場面が多くあります。
その中で、うまくいかないことがあっても、落ち込まずに次につなげていく姿勢が大切です。
たとえば、失敗したと感じたときには、
- どのような点でつまずいたのか
- 事前に準備できたことはなかったか
- 次に同じ場面が来たとき、どう対応すればよいか
といった観点から振り返ってみましょう。
うまくいかなかったことを、成長するチャンスと捉えることができれば、就労の継続にもつながります。
また、ミスをしたときは、ひとりで抱え込まずに、信頼できる上司や同僚、あるいは支援者に相談するのも有効です。
誠実に対応しようとする気持ちは、相手にも伝わります。
プライベートも大切にする
仕事に集中することは大事ですが、頑張りすぎてしまうと心と体に疲れがたまりやすくなります。
休日には自分の好きなことを楽しんだり、家族や友人との時間を過ごすなど、仕事以外の時間を充実させることも、働き続けるための大切なポイントです。
たとえば、趣味の時間を設ける、外に出て軽く体を動かす、カフェで気分転換をするなど、リフレッシュの方法は人それぞれです。仕事に影響を与えない範囲で、自分にとって心地よい習慣を見つけてみましょう。
仕事以外の人間関係を持っておくことも、気持ちの切り替えに役立ちます。
もし職場での人間関係に悩んだときでも、別の場所に安心できるつながりがあることで、気持ちが楽になることがあります。
職場での人間関係づくり
職場での人間関係は、働きやすさや定着に大きく影響します。
障害のある方にとっては、周囲との関係性が仕事のしやすさや安心感に直結することも少なくありません。
特に職場は、日々の多くの時間を過ごす場所であり、孤立を感じることなく安心して働くためには、人とのつながりが欠かせません。
ここでは、円滑な人間関係を築くためのヒントをご紹介します。
コミュニケーションを積極的に取る
あいさつやお礼、ちょっとした雑談など、日常的なやり取りを大切にすることが信頼関係の第一歩です。
話しかけられたら笑顔で答える、相手の話をよく聞くといった基本的な姿勢が、職場での好印象につながります。
特に入社して間もない頃は、「おはようございます」「ありがとうございます」といった短い言葉だけでも、自分の存在を周囲に伝える良い機会になります。
はじめは緊張するかもしれませんが、繰り返すことで自然と習慣になっていきます。
また、職場によっては黙々と作業する雰囲気の職場もあるため、その場の空気を読みながら、無理のない範囲での声かけを意識することも大切です。
たとえば、朝のあいさつや休憩時間の一言など、小さな積み重ねが信頼関係の土台となります。
信頼できる相談相手を見つける
困ったときや不安を感じたときに相談できる相手がいることは、精神的な安定に大きく貢献します。
職場内にそうした存在がいれば理想的ですが、いない場合は支援機関やジョブコーチに相談するのも有効です。
直属の上司や教育係、先輩社員など、比較的接点の多い人が候補になりやすいですが、無理に仲良くなろうとする必要はありません。
まずは、質問しやすい雰囲気の人に「この書類の出し方で合っていますか?」といった業務上の確認を通じて、自然な関係を築いていくのが良いでしょう。
また、自分の状態を定期的に振り返り、誰かに言葉で伝える習慣を持つことで、問題の早期発見・解決にもつながります。
自分ひとりで考え込まずに「今の自分の状態」を外に出すことが、長く働くための安心材料になります。
感情と事実を切り分けて考える
仕事をしていると、どうしても感情的になってしまう場面が出てきます。
注意された、失敗した、相手の態度が冷たく感じた——そうした場面では、自分の感じたことと、実際に起こった事実とを切り分けて考えることが大切です。
たとえば「注意された=嫌われた」と感じるのではなく、「指摘されたのは業務上のことで、自分への否定ではない」と捉え直すことで、気持ちを整理しやすくなります。
こうした考え方は、感情に振り回されにくくなり、人間関係を安定させる上で非常に役立ちます。
日記やメモに「起きたこと」と「感じたこと」を分けて書いてみるのも、自分を客観的に見つめ直す方法として効果的です。
上手な感情コントロール法
- 深呼吸を数回行って気持ちを落ち着かせる
- その場を一時的に離れる
- 感じていることをメモに書き出す
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
- 帰宅後にゆっくりリラックスする時間をつくる
無理に我慢したり感情を押さえ込んだりするのではなく、落ち着くための方法を自分の中でいくつか持っておくと、心の負担を軽減できます。
適度な距離感を保つ
職場では仲良くなることも大切ですが、距離が近すぎることでかえってトラブルにつながることもあります。
気軽に話せる関係は心強い反面、プライベートなことに踏み込みすぎたり、相手に頼りすぎたりしてしまうと、相手との関係が疲れるものになってしまうこともあります。
自分と相手のペースを尊重しながら、心地よい関係性を築いていくことが大切です。
必要以上に自分を良く見せようとせず、自然体で接することを意識しましょう。
具体的には、次のような点に注意してみてください。
- プライベートな話題を共有しすぎない
- 相手の表情や反応を見ながら会話する
- 仕事中は業務に集中し、雑談は休憩時間に行う
- 相手との関係性に応じて、話す内容の深さを調整する
このように、「無理に仲良くなろうとしすぎないこと」も、良好な人間関係を築くコツのひとつです。ほどよい距離感を保つことで、長く安定した関係を続けやすくなります。
また、職場以外にも話せる相手がいると、職場の人間関係に依存しすぎず、バランスが取りやすくなります。
家族、友人、支援機関など、相談できる人とのつながりを複数持っておくことが、心の安定にもつながります。
就労を支える制度の活用
障害のある方が安定して働き続けるには、国や自治体、企業などが提供する支援制度をうまく活用することが重要です。
これらの制度を理解し、自分に合ったサービスを選ぶことで、就職から定着までをスムーズに進めることができます。
就労移行支援・就労定着支援
「就労移行支援」は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、一般企業で働きたい障害者に対し、職業訓練や生活支援、履歴書作成や面接練習などを提供する制度です。
事業所に通うことで、生活リズムの安定や職場での適応力を身につけることができます。
一方「就労定着支援」は、一般就労後6か月〜3年間、事業所の支援員が本人や職場と連携しながら、安定して働き続けるためのサポートを行う仕組みです。
業務上の困りごとや人間関係の悩みを共有し、継続就労につなげる役割を果たします。
トライアル雇用・ジョブコーチ制度
トライアル雇用とは、障害者を試行的に雇用し、適性や職場との相性を見極めながら本採用を検討できる制度です。
一定期間の雇用を通じて、お互いの理解を深めることができ、ミスマッチの防止にも役立ちます。
また「ジョブコーチ制度」では、専門の支援員が職場に入り、業務内容の指導や人間関係の調整など、就労環境の整備を支援してくれます。
職場内での課題に対して第三者の視点からアドバイスを受けることができるため、職場にも本人にも安心感があります。
障害者就業・生活支援センター
各地域に設置されている「障害者就業・生活支援センター」は、障害者の就業と日常生活の両面を支える総合的な相談窓口です。
就職活動だけでなく、生活リズムの整え方や健康管理、家族との関係に関する相談にも応じてくれます。
また、必要に応じて医療機関や福祉サービスとの連携も図られるため、さまざまな課題を総合的にサポートしてもらえるのが特徴です。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金
企業が障害者を雇用する際に必要な配慮や設備導入にかかるコストを軽減するため、「障害者雇用納付金制度」に基づく助成金が設けられています。
具体的には、以下のような内容が助成対象となります。
- 車いす対応のスロープやトイレの整備
- 通勤支援(送迎費用など)
- 作業補助員の配置費用
- ICT機器の導入(読み上げソフトなど)
これらの助成金を利用することで、企業が障害者の働きやすい環境を整えやすくなり、結果的に定着率の向上にも寄与します。
制度を使いこなすための実践的ポイント
制度を活用するといっても、「どの制度を、どのタイミングで、どう使えばよいかわからない」と感じる方は多いかもしれません。
ここでは、各制度の活用場面や、効果的に利用するための手順を具体的に解説します。
就労移行支援を受けるには?
就労移行支援は、市町村の障害福祉課に申請し、「サービス等利用計画」に基づいて提供されます。
以下のようなステップで進みます。
- 自治体に相談し、支給決定を受ける
- 就労移行支援事業所と契約する
- 訓練計画を作成し、週3~5日の通所を開始
- 職場実習や応募活動を経て、企業への就職を目指す
なお、就労移行支援の利用は原則2年間までであり、その間に職業能力や生活スキルの向上を目指します。
トライアル雇用の流れ
企業がトライアル雇用を導入しているかどうかは、ハローワークの求人票に記載されています。
トライアル雇用の対象者には要件があるため、事前にハローワークで確認しておきましょう。
雇用期間は原則3か月で、企業・本人双方が合意すれば本採用につながります。
職場内での評価ポイントや改善点を明確にしたうえで、次のステップに進むことが望ましいです。
ジョブコーチの利用方法
ジョブコーチは、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどに申請することで派遣されます。
企業にとっても、ジョブコーチの存在は職場内の混乱や誤解を減らすための大きな安心材料となります。
たとえば、「上司との指示の行き違いが多い」「同僚と話すタイミングがつかめない」といったケースでも、第三者として現場に入り、両者の間をつなぐ役割を果たします。
ジョブコーチは一定期間で支援を終了しますが、その後も必要に応じてフォローアップ支援を受けられる場合があります。
地域資源としての支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、地域のネットワークを活かして、以下のような支援が行われています。
- 通院・服薬の自己管理支援
- 家族との関係改善のサポート
- 障害年金・生活保護との併用相談
- 事業所・病院・学校との連携
こうした包括的な支援を受けることで、「働くこと」だけでなく「生活そのもの」が安定し、定着率の向上につながるというメリットがあります。
年齢・障害特性に応じた働き方
障害者が長く安定して働くためには、年齢や障害特性に応じた働き方を選択することが重要です。
体力、生活環境、得意なこと・苦手なことは人それぞれ異なります。その違いを踏まえた就労の工夫が、長期的な就業のカギを握ります。
40代・50代の障害者の転職のポイント
中高年層は経験やスキルの蓄積がある一方で、転職市場では「年齢の壁」を感じることが少なくありません。
特に障害がある場合、「即戦力性」や「柔軟な働き方」が重視される傾向にあり、選考段階で不利になることもあります。
このような場合、次のような対策が有効です。
- 前職での実績や得意分野を明確に伝える
- スキルアップや資格取得に取り組む姿勢を見せる
- 雇用継続支援制度や障害者向けの人材紹介サービスを活用する
また、中高年層にとっては「再就職=キャリアの延長」ではなく、「働き方のリスタート」として捉える意識も大切です。
自分のペースで働ける環境を選ぶことで、身体やメンタルへの負担を軽減できます。
60代以降の継続雇用・再就職
定年退職後も働き続けたいと考える障害者も増えています。
特に年金だけでは生活が成り立ちにくい現状において、継続就労は経済的安定と社会参加の手段として重要な選択肢です。
高齢障害者の就労には、次のようなポイントがあります。
- 週2〜3日・1日4時間程度の短時間勤務が可能な職場を選ぶ
- 定年後再雇用制度や高齢者雇用安定助成金などを活用する
- 高齢者向けの就業マッチング支援(シルバー人材センター等)を利用する
60代以降は、無理のないペースで社会とのつながりを持ち、孤立を防ぐことも大切です。
障害特性を踏まえた職種選択
障害の種類や程度によって、向いている仕事は異なります。
自分の障害特性に合った業務を選ぶことで、ストレスを軽減し、能力を最大限に発揮することができます。
- 視覚障害:読み上げソフトを使った事務作業、点字校正など
- 聴覚障害:組立や検品などのモノづくり、図書館業務など
- 発達障害:明確なルールのあるデータ入力、ルーティン作業など
- 精神障害:時間の裁量があるライティング業務、在宅型カスタマーサポートなど
また、職場との相性も大切です。オープンなコミュニケーションができる風土か、柔軟な働き方が許容されているかなど、職場環境の「空気感」も見極めましょう。
テレワークなど柔軟な働き方の活用
テレワークは、通勤の負担を軽減し、自分のペースで働くことができる点で、障害者にとって非常に相性のよい働き方です。
特に精神障害や発達障害のある方にとっては、静かな環境で業務に集中できるメリットがあります。
- 時差出勤制度を設けている企業
- フルリモートまたは一部リモート勤務が可能な業種(IT、事務、クリエイティブなど)
- スーパーフレックス制(コアタイムなし)
テクノロジーの進化により、場所や時間にとらわれずに働ける選択肢が増えている今こそ、柔軟な働き方を積極的に検討しましょう。
年齢や状況に応じた職業訓練の活用方法
就職や転職を考える際、「ブランクがある」「スキルに自信がない」といった不安を抱える方も少なくありません。
そんなときに役立つのが、公的機関による職業訓練です。
- 公共職業訓練(ハロートレーニング):就職に必要なスキルや知識を無料で学べる制度
- 障害者職業能力開発校:手話通訳や点字、障害特性に配慮した指導体制が整っている
- 地域障害者職業センター:希望職種へのステップアップを支援する個別の職業評価や訓練プログラム
特に40代以上での再就職では、「過去の経験を活かしつつ、新しい技能を身につける」ことが鍵となります。
まとめ
障害者が長く安定して働き続けるためには、単に仕事に就くことだけでなく、自分に合った働き方の選択、職場での人間関係の構築、支援制度の活用など、多面的な視点が求められます。
また、年齢や障害特性に応じた課題に丁寧に向き合い、無理をせず、長期的な視点で働くことも大切です。
自分自身を知り、適切なサポートを受けながら、自分らしく働き続けることは、誰にとってもかけがえのない生き方のひとつです。
本記事が、障害のある方が安心して長く働くためのヒントとなり、前向きな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
障害者雇用のこれからに向けて
近年、障害者雇用を取り巻く環境は少しずつ変化しています。
2024年4月からは、法定雇用率が2.5%に引き上げられ、2026年にはさらに2.7%となる予定です。
これにより、多くの企業が障害者雇用に本腰を入れるようになってきました。
一方で、就職した後に長く働き続けられる環境づくりは、まだまだ課題も多いのが実情です。
だからこそ、制度・環境・本人の意識という3つの側面がそろってはじめて、「定着」が実現されるといえるでしょう。
読者の皆さんには、ぜひ「自分にとっての働きやすさとは何か」「どのような職場なら無理なく続けられるか」を大切に考えながら、焦らず一歩ずつ、就労への道を進んでいただければと思います。
そして、職場に不安があるとき、困りごとがあるときは、決して一人で抱え込まず、地域の支援機関や就労支援者に相談することをおすすめします。
誰かと一緒に考えることで、きっと前向きな選択肢が見えてくるはずです。
今後ますます多様な働き方が広がる中で、自分らしい働き方を見つけ、安心して働き続けられる方が増えていくことを心から願っています。
最後に
障害のある方が働くということは、「社会とつながる」ことでもあります。
そして、それは決して特別なことではなく、誰もが自分の役割を見つけ、他者と関わり合いながら生きていく自然な営みです。
「どうせ自分にはできない」「続かないかもしれない」と思ってしまうこともあるかもしれません。
けれども、それは一人で抱える必要はありません。
これまで多くの人が、支援を受けながら、自分に合った働き方を見つけ、人生を築いてきました。
この記事が、そんな選択肢のひとつになれたなら嬉しく思います。あなたのこれからの就労が、安心できるものでありますように。
そして、仕事を通じて自分らしく輝ける場所に出会えることを、心より願っています。
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。