
障害者雇用の給料の実態を解説!手取りを増やす方法も
障害者雇用は、一人ひとりの「働きたい」という気持ちを応援し、それぞれの個性を活かして社会で活躍するための取り組みです。
「障害者雇用の給料って実際どのくらいなの?」「今の手取りでちゃんと生活していけるのかな?」と、将来への不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そんな不安を少しでも和らげるために、この記事では障害者雇用における給料の実態や平均額、手取り額の目安をわかりやすく解説します。
また、少しでも手取りを増やすために意識したいポイントや、使える制度・サービスについてもお伝えします。
「自分らしく働きながら、安心して暮らしたい」そんな方に少しでも役立つ情報をお届けできたら嬉しいです。
ぜひ、気になるところから読み進めてみてくださいね。
障害者雇用の賃金の基礎知識
障害者雇用の給料について理解を深めるためには、まず基本的な仕組みや平均的な金額を知る必要があります。
障害の有無にかかわらず、働くことで得られる報酬は生活の安定だけでなく、「自分で選ぶ」ことができる毎日を支える力になります。
「自分に合った働き方を見つけたい」「安心して暮らせる収入を得たい」という方は、この章で一緒に確認していきましょう。
給与の水準や基本的な知識を身につけておくことが、就職活動を進めるうえで役に立つはずです。
障害者の働き方と平均賃金
令和6年6月1日現在、民間企業における障害者雇用数は約67万7,462人に達しています。
前年より5.5%増加し、実雇用率も2.41%と、いずれも過去最高を更新しています。
このように雇用の場は広がっていますが、給与水準は働き方や障害の内容によって大きく変わるのが現状です。
厚生労働省『令和5年度障害者雇用実態調査』(厚生労働省|2024年)によると、障害種別の月額平均賃金は以下の通りです。
障害の種類 | 月額平均賃金 |
身体障害者 | 約23万5千円 |
知的障害者 | 約13万7千円 |
精神障害者 | 約14万9千円 |
発達障害者 | 約13万円 |
特に身体障害のある方は、他の障害種別より約10万円ほど高い水準であることが分かります。
ただし、これはあくまで平均の目安です。
障害の程度や特性、通院の必要性、体調の波などに応じて、ご自身に合った働き方を選ぶ必要があります。
たとえば、
- 週30時間以上のフルタイム勤務をする方
- 短時間勤務や週数日の勤務を選ぶ方
など、さまざまな働き方が選択されています。
調査によると、
- 週所定労働時間30時間以上の方の平均賃金:月額約17万円
- 短時間勤務(週20時間未満)の方の平均賃金:月額約7万7千円
勤務時間が短い分、賃金も比例して低くなる傾向が見られます。
また、就労継続支援A型・B型などの福祉的就労を利用する場合は、さらに賃金水準が低くなることが多いです。
- A型事業所:雇用契約を結ぶため最低賃金は保障されます
- B型事業所:工賃という形で支給され、月1〜5万円程度の例もあります
このように、働き方は本当に多様です。
だからこそ、単に「平均賃金」という数字だけを見て不安になるのではなく、自分の希望するライフスタイルに合った働き方を考えることが大切です。
そして、その働き方を実現するために、
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
などの支援機関を活用してみましょう。
専門の担当者と相談することで、自分に合った勤務時間や職種の求人に出会える可能性が高まります。
さらに、最近ではフレックスタイム制度、在宅勤務、短時間正社員制度など、柔軟な働き方を導入する企業も増えています。
こうした制度を活用することで、働く側の負担を減らしつつ、収入の安定を目指すことも可能です。
障害者の年収と最低賃金減額特例
障害者の年収は、勤務日数や労働時間によって大きく変わります。
- フルタイム勤務の場合:年収約200万~250万円前後が多い
- パートタイム勤務の場合:年収100万円未満のケースも
さらに、賞与の有無や、時間外勤務の有無、各種手当の支給状況などによっても実際の年収は変動します。
また、非正規雇用の場合、契約更新の有無や繁忙期・閑散期の勤務日数の変動なども大きく影響します。
また、「最低賃金減額特例制度」という仕組みもあります。
これは、労働能力が著しく低いと認められた場合に、労働局の許可を得て法定最低賃金より低い賃金での雇用を認める制度です。
この制度は、障害の程度によっては一般の雇用機会が得にくい方に対し、就労の機会を拡大するというメリットがあります。
しかし一方で、この特例が適用されることで、生活を維持するには厳しい水準の賃金での就労が常態化してしまうリスクも指摘されています。
大幅に低い賃金は基本的に認められません。
減額幅には上限があり、
- 最低賃金に近い水準
- 減額されてもわずかに低い程度
となるケースがほとんどです。
もし極端に低い賃金を提示された場合は、最低賃金法違反の可能性もありますので注意が必要です。
特に、最低賃金減額特例が適用される場合でも、企業は障害のある方の職業能力の評価や、適切な指導体制の整備を行う責任があります。
また、企業側は、
- 職業能力の適切な評価
- 必要な指導体制の整備
を行う責任があります。
特例が適用される場合でも、働く人への適切な支援や指導が行われているかを確認し、長く安定して働き続ける場所かどうか見極めるようにしましょう。
さらに、特例が一時的なものか、継続的な見直しが行われているかもチェックしておくと安心です。
一般雇用との賃金格差の現状
障害者雇用と一般雇用の間には、依然として賃金格差が存在しています。
たとえば、民間企業における一般労働者の平均月収は約310,000円程度であるのに対し、障害者の方の平均月収はその半分程度です。
この差は、以下のような複合的な要因によって生じています。
- 職種の偏り
- 勤務時間の制約
- 合理的配慮による業務内容の調整
また、障害者雇用枠では、補助的な業務や定型的な作業に限定されるケースも多いです。
そのため専門性や責任の程度が限定され、賃金水準が伸びにくいという構造的な課題があります。
さらに、非正規雇用の割合が高いことも、賃金格差を広げる一因です。
一般雇用と比べて賞与や昇給が得られにくく、長期的な所得形成が難しくなる傾向があります。
だからこそ、単に就職することだけを目指すのではなく、長く安定して働ける職場を選ぶことが重要です。
また、スキルアップやキャリア形成を意識することも大切なポイントです。
一方で、処遇改善に向けた政策的な取り組みも進んでいます。
厚生労働省は「障害者雇用の質の向上」を掲げ、能力に応じた業務の創出や、企業への助成金制度の充実を進めています。
こうした動きによって、今後は専門性の高い業務への登用や賃金の引き上げが期待されます。
現状として賃金格差があるのは事実ですが、制度や企業の取り組みが進むことでその差を縮めていくことは十分に可能です。
そのためにも、求職者自身が制度を理解し、情報を積極的に集めていくことが、将来の安定した収入への大切な一歩となります。
「自分らしく働き、安心して暮らす」そんな未来を一緒に目指していきましょう。
障害種別ごとの雇用状況と平均給与
障害の種別によっても、雇用状況や平均給与にははっきりとした違いがあります。
それぞれの特徴を理解することは、自分に合った働き方を考える大事な手がかりになります。
また、障害種別ごとの特性は、雇用される業種や就業形態、受けやすい職業訓練や支援内容にも大きく影響します。
この章では、それぞれの障害種別ごとの雇用状況や給与水準を、できるだけわかりやすく丁寧にお伝えします。
身体障害者の雇用と給料の実態
身体障害者の方の多くは、一般企業で週30時間以上のフルタイム勤務をされています。
実際の調査では、その割合は約75%にもなります。(令和5年度障害者雇用実態調査|厚生労働省|2024年)
また、平均勤続年数は約12年と非常に長く、これは賃金の安定や職場での信頼関係の構築にもつながっています。
さらに、身体障害者は他の種別と比べて、無期雇用・正社員としての採用が多い傾向があります。
これは、移動やコミュニケーションに配慮された職場環境が整いやすいことや、業務の継続性が高いことが背景にあると考えられています。
身体障害者の場合、就労時間によって給与に明確な差があります。
週の勤務時間 | 平均賃金 |
30時間以上 | 約26.8万円 |
20〜30時間未満 | 約16.2万円 |
10〜20時間未満 | 約10.7万円 |
10時間未満 | 約6.7万円 |
(「令和5年度障害者雇用実態調査」より作成|厚生労働省|2024年)
このように、フルタイムに近い働き方ほど賃金は高くなる傾向です。
ただし、短時間勤務でも職務設計や支援体制がしっかりしていれば、生活に見合った収入を得ることも可能です。
自分に合った働き方を見つけて、無理なく働き続けられる環境を探すことが大切です。
知的障害者の雇用と給料の実態
障害者雇用が広がる中で、知的障害のある方々もさまざまな現場で活躍しています。
「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省|2024年)によると、民間企業での知的障害者の雇用数は157,796人。
これは民間企業に雇用されている障害者全体(約677,462人)の約23%を占めています。
毎年増加しており、支援学校の卒業後の就職や、就労移行支援を経た一般就労が徐々に浸透しています。
特に製造業、小売業などでの雇用が多く見られます。
また「令和5年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省|2024年)によると、知的障害者の平均月額給与(所定内賃金)は約13万7千円です。
これは障害種別の中でも最も低い水準で、身体障害者(約23.5万円)とは約10万円の差があります。
背景には、以下の要因があります。
-
- 比較的単純作業が中心の業務内容
- 給与水準の低い業種に集中しがち
- 長期的なキャリア形成の難しさ
- 短時間勤務の割合が高い
一方で、適切な支援環境がある職場では、フルタイム勤務や昇給の実績も増えており、就労時間の傾向はフルタイム(30時間以上)が約64.2%程度です。
週の勤務時間 | 平均給与(約) |
30時間以上 | 15.6万円 |
20〜30時間未満 | 11.1万円 |
10〜20時間未満 | 7.9万円 |
10時間未満 | 4.3万円 |
(「令和5年度障害者雇用実態調査」より作成|厚生労働省|2024年)
勤務時間が短くなるほど、当然ながら給与も下がる傾向です。
また、福祉的就労(就労継続支援A型・B型など)を選ぶ方もいます。
- A型事業所:雇用契約を結び、平均月収約8万円
- B型事業所:雇用契約なし、工賃として月1〜3万円程度
福祉的就労は「働くための準備期間」として重要ですが、生活の主な収入源にはなりにくいです。
ただ、数字だけを見て一喜一憂するのではなく、「自分に合った働き方」を見つけることが何より大切です。
支援制度や職場の工夫を上手に活用して、無理なく就労を継続し、安定した生活を目指しましょう。
精神障害者の雇用と給料の実態
近年、精神障害者の方の雇用は大きく進展しています。
2018年の法改正で法定雇用率の対象に正式に含まれたことで、企業の採用も加速しています。
特例子会社や福祉的就労を含め、多様な働き方が実現しつつあります。
「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省|2024年)では、民間企業での精神障害者の雇用数は150,717人となっています。
これは前年度比15%以上の増加という、障害種別で最大の増加幅です。
企業側も就労支援体制を徐々に整備しており、フレックスタイムや在宅勤務の導入も進んでいます。
「令和5年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省|2024年)による平均月額給与(所定内賃金)は約14万9千円です。
障害種別の中では中間的な水準という位置づけです。
ただし、就労継続期間が短くなりやすい傾向があり、勤務日数や時間に応じて収入が不安定になるケースもあります。
精神障害者の方の働き方と給与には大きな個人差があります。
体調の波や通院の頻度に応じて、フルタイムで働く人もいれば、週20~30時間未満のパートタイムを選択される方も多くいます。
週の勤務時間 | 平均給与(約) |
30時間以上 | 約19.3万円 |
20〜30時間未満 | 約12.1万円 |
20時間未満 | 約7.1万円 |
10時間未満 | 約1.6万円 |
(「令和5年度障害者雇用実態調査」より作成|厚生労働省|2024年)
特に、職場のストレスや人間関係への配慮が大切です。
そういった配慮を必要とする方については、短時間勤務で無理なく働ける職場環境を選ぶことが、長く続けるための大きなポイントになります。
発達障害者の雇用と給料の実態
社会の多様性が広がる中で、「発達障害」への理解と支援の輪も広がりを見せています。
厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、発達障害者の正確な雇用人数は個別には公表されていません。
多くの場合、精神障害者枠としてカウントされ、その一部に発達障害のある方が含まれています。
発達障害者の雇用は年々増えており、特にIT業界、事務補助職、製造業などでの雇用実績が伸びています。
「令和5年度障害者雇用実態調査」では、平均月額給与(所定内賃金)は約13万円と報告されています。
これは知的障害とほぼ同水準で、障害種別の中では低めの部類に入ります。
発達障害者の雇用と給料の実態
社会の多様性が広がる中で、「発達障害」に対する理解と支援の輪も広がりを見せています。
厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省|2024年)によると、企業が雇用する障害者のうち、発達障害者の正確な人数は個別には公開されていません。
雇用されている発達障害者の方は、統計上は精神障害者の中に含まれています。
発達障害者の雇用は、年々増加しており、とくにIT業界や事務補助職、製造業などでの雇用実績が伸びています。
「令和5年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省|2024年)では、発達障害者の平均月額給与(所定内賃金)は13万円と報告されています。
これは知的障害とほぼ同水準で、障害種別の中では低めの部類に入ります。
発達障害者の給与が低めとなる背景には、以下の要因が挙げられます。
- 短時間勤務や補助的業務が多い
- 就職後の定着が課題
- 特性に応じた職務設計が未整備な職場が多い
ただし、職務設計や合理的配慮が進んだ企業では、正社員として安定した収入を得ているケースもあります。
また、障害を公表せず一般枠で働いている方もいると考えられます。
このように、発達障害者の方は働き方によって収入差が出やすい傾向があります。
発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)など幅広い特性を含みます。
それぞれの特徴に応じて、以下のような合理的配慮が有効です。
・静かな職場環境の確保
・曖昧な指示を避け、マニュアルを活用
・視覚的な情報提示
・時間管理や優先順位づけのサポート
このような環境が整えば、継続就労やスキルの発揮がしやすくなります。
逆に、環境や業務内容が合わないと、離職やメンタル不調のリスクが高まるため、職場選びと支援の質が重要です。
障害者の給料・手取りに影響する要因
障害者雇用で得られる給料や手取り額は、さまざまな要素によって左右されます。
働き方や職種、企業規模、本人のスキルや経験、さらには通勤や住居といったライフスタイルまで、総合的な条件によって実質的な収入は大きく変わってきます。
ここでは、主な4つの要因を取り上げ、それぞれの影響を具体的に解説します。
雇用形態と労働時間の影響
まず注目すべきは、雇用形態と労働時間の違いです。
雇用契約の種類や働く時間帯、日数は、直接的に給与の多寡に影響します。
・正社員:
安定した月給制で、ボーナスや昇給、退職金制度の対象となることが多く、長期的な収入の見通しが立てやすいです。
・パート・アルバイト:
時給制で、働いた分だけ収入になります。
繁忙期と閑散期で就労時間が変動しやすく、収入に波が出ることがあります。
・契約社員・派遣社員:
更新の有無によって雇用が左右されることもあるものの、フルタイム勤務が可能であれば正社員並みの収入を得ることも可能です。
さらに、週20時間以上勤務すると、健康保険や厚生年金、雇用保険といった社会保険の適用対象になります。
これらの制度に加入していれば、医療費負担の軽減や将来的な年金受給などの面でも恩恵を受けられます。
また、就業時間だけでなく「定時制」か「シフト制」かも生活や収入の安定性に関わってきます。
たとえば通院やリハビリの必要がある方には、柔軟に勤務時間を調整できる職場の方が、就業継続しやすく、結果的に収入を保ちやすくなります。
さらに、フルタイム勤務か否かは、企業からの期待値やキャリアアップの機会にも影響します。
たとえば正社員登用制度のある企業では、パートや契約社員から正社員への道が開かれていることがあります。
これにより給与水準が上がるだけでなく、ボーナスや退職金などの待遇も改善される可能性があります。
こうした制度の有無を事前に確認し、自分のライフプランに合った雇用形態を選ぶことが、将来的な収入安定に繋がります。
職種・業務内容による違い
同じ労働時間であっても、担当する業務や職種によって給与に差が出ます。
- 一般事務や受付業務:
ルーチン化された業務が中心であり、安定した給与が見込まれます。事務補助としての雇用が多く、障害者枠の求人でも比較的多く見られます。 - 製造・清掃・軽作業系:
未経験でも始めやすい利点がありますが、給与水準は比較的低めに設定されることが多くなります。 - IT・デザイン・専門職:
業務に対するスキルの要求水準が高くなる一方で、時給や月給は比較的高い傾向があります。
とくに事務の経験やパソコンスキル、簿記、CAD操作、プログラミングスキルなどがある場合、IT系などの比較的高収入の職種に就くことが可能です。
これらの職種は在宅勤務やフレックスタイム制を導入しているケースも多く、働きやすさの面でも優れています。
ご自身の障害特性に応じた職種を選ぶことで、無理なく働きながら収入を安定させることができます。
支援機関のアドバイザーと相談し、自分に合った職種選びを進めることが重要です。
さらに、職種によっては将来的にマネジメントや専門職としてのキャリアパスが用意されている場合もあります。
たとえば、事務職であっても総務・人事・経理といったより専門的な部門への移行や、チームリーダーとしての昇格が見込まれる職場もあります。
このように、自分の適性とキャリア目標を照らし合わせて職種を選ぶことが、収入向上だけでなく仕事のやりがいや成長実感にもつながるのです。
企業規模と福利厚生制度の充実度
同じ業種・職種であっても、企業の規模や制度の整備状況によって、給与や手取りの実質的な差が生じます。
- 大企業や上場企業:
給与水準が高く、昇給制度や賞与もあり、福利厚生が整備されています。特に住宅手当、家族手当、通勤費支給などが充実しているケースが多くあります。 - 中小企業やベンチャー企業:
給与水準はやや低めの傾向がありますが、業務の自由度が高く、障害に対する柔軟な対応が得られるケースもあります。
福利厚生には、給与以外の支出を抑える重要な役割があります。
たとえば健康診断の実施や、メンタルヘルスケアの支援、ワークライフバランスを保つための制度があるかなどです。
これらがあるかどうかで、長期的な就労のしやすさが大きく変わります。
企業の障害者雇用に対する姿勢も確認ポイントです。
特例子会社や障害者雇用優良企業(もにす認定など)では、制度面でも精神的なサポート面でも、より働きやすい環境が整っている傾向があります。
本人のスキルと経験年数
最後に、本人のスキルと就労経験の積み重ねも、収入に大きな影響を及ぼします。
専門スキルや資格があることで、より難易度の高い業務を任されるようになり、給与も上がります。
- 資格取得:
簿記、MOS、医療事務、介護職員初任者研修、ITパスポートなど、業務と直結する資格は特に有利です。 - 職歴・経験年数:
業界や業種に関する知識が蓄積されることで、任される業務の幅が広がり、役職や昇給に結びつくケースもあります。
また、同じ企業で長く勤めることで、信頼関係が築かれ、昇給・賞与の評価にもつながる可能性があります。
定期的な研修制度がある企業を選べば、自身の成長と収入の向上の両立も期待できます。
このように、給料や手取りに影響する要素は一つではありません。
多面的に戦略を立てて働き方を選ぶことが必要です。
障害者の手取り額アップの方法
限られた条件の中でも、手取り額を増やすための工夫はできることがあります。
給与額そのものを上げるだけでなく、支出を抑える工夫や制度の活用も、手取り額の実質的な増加につながります。
ここでは、手取り額を増やすための具体的な方法を紹介します。
スキルアップで高給職種を目指す
手取り額を増やすうえで最も基本的かつ確実なのが、スキルアップによって賃金水準の高い職種に就くことです。
特に障害者雇用枠では、補助的な業務にとどまることが多く、給与が低くなりがちです。
しかし、専門性を身につけることで、職域を広げ、昇給や昇格のチャンスをつかむことが可能になります。
以下のようなスキルは、就職活動や職場内での評価を大きく左右します。
- MOSや簿記資格などの事務スキル:データ入力や経理補助など、幅広い業務で活かせます。
- プログラミングやデザインスキル:Web制作やシステム開発など、高単価案件が多い分野で活躍できます。
- 医療事務や介護福祉士などの国家資格:福祉・医療分野での正社員雇用や安定収入につながります。
また、職業訓練校やハローワークの訓練プログラム、地域の障害者就業・生活支援センターが提供する講座などを利用すれば、比較的費用を抑えて学ぶことができます。
就労移行支援事業所では、就労に向けたスキルの習得や模擬業務も提供されており、実務的な訓練が受けられる点が魅力です。
さらに、スキルを活かして副業や在宅ワークに挑戦することも一つの手です。
ライティングや動画編集、データ入力など、自宅で行える業務は多様化しており、自分のペースで働くことが可能です。
福利厚生の充実した企業を選ぶ
給与額だけでなく、福利厚生も手取り額を左右する大きな要素です。
福利厚生が充実している企業では、実質的な支出が抑えられるため、同じ額面給与でも生活にゆとりが生まれます。
以下のような福利厚生が整っている企業を選ぶと、結果的に手取り額の増加につながります。
- 社会保険完備:医療費負担軽減や年金保障などが受けられ、将来的な不安も軽減されます。
- 交通費支給:通勤にかかる自己負担がなくなることで、月々の可処分所得が増えます。
- 障害者向け配慮制度の整備:通院配慮、勤務時間の柔軟化、支援担当者の配置など、継続就業を支える環境が整っていると、安定して働きやすくなります。
また、企業によっては住宅手当や食事補助制度、財形貯蓄、社員割引制度などを設けているところもあり、日常生活での負担を軽減してくれます。
こうした制度が活用できるかどうかは、求人票や企業の採用説明会、面接の際に確認しておくとよいでしょう。
障害者が生活できる給料レベルとは
就職して収入を得られるようになっても、実際の生活を安定させるには、生活に必要な収入額を把握することが必要です。
生活費は個人差が大きいため、最低限の目安を知っておくことで、就職活動時の判断材料になるでしょう。
単身世帯の生活費の目安
総務省の家計調査(2023年)によると、単身世帯の平均消費支出は年に約201万円、月当たりにして約16.7万円となります。
これは、家賃・食費・光熱費・通信費・医療費などを含んだ金額です。
ただ、居住地によっても生活費は変動します。
都市部では家賃が高くなるため月20万円程度必要なケースもありますが、地方では月13万円程度で生活できることもあります。
近年は物価上昇が著しいため一概には言えませんが、月収15万円前後が一つの基準とされており、この水準に届いていれば、自立した生活を目指すことが可能と考えられます。
また、生活保護を受給している場合の基準額や、障害年金との併給などを考慮すると、収入の補完的手段を理解しておくことも重要です。
扶養家族がいる場合の必要収入
配偶者や子どもなど扶養家族がいる場合は、生活費がさらに増加します。
たとえば、子育て世帯では以下のような費用がかかります。
- 住宅費:家族向け物件は家賃が高くなる傾向
- 食費:家族人数に比例して増加
- 教育費:学用品・給食費・習い事などの出費
このため、月収25万円以上が望ましいとされており、家族の人数によってはさらに多くの収入が必要となります。
収入が不足する場合は、児童手当や福祉手当、生活福祉資金の活用など、公的制度を活用して補完することも考えましょう。
障害年金の併給で収入アップ
障害者の場合、就労による収入に加えて、障害年金を併給することで生活の安定を図ることが可能です。
- 障害基礎年金2級の場合:年額約83万円(月6.9万円程度)
- 障害厚生年金が加算される場合:報酬額に応じて増額
これらの年金は、就労の有無にかかわらず支給されるため、収入の下支えとして重要になります。
さらに、医療費の一部負担免除や通院交通費の助成など、障害者手帳に基づく自治体サービスを活用することで、支出の軽減も可能です。
なお、障害年金と就労収入の両立は制度上可能ですが、収入額が一定を超えると等級の見直しが行われる場合もあります。
就職前あるいは受給手続き前に、社会保険労務士や年金事務所などに相談しておくと安心です。
まとめ
障害者雇用における給料の実態は、働き方や職種、企業規模、本人のスキルや経験年数によって大きく変わります。
決して一律ではなく、条件によって支給額も待遇も幅広く異なるため、表面的な数字だけにとらわれず、背景にある要因をしっかりと把握することが重要です。
たとえば、フルタイムでの正社員雇用を目指す場合と、短時間のパート勤務を希望する場合では、給料水準や福利厚生の内容が大きく変わります。
また、同じ職種でも企業の規模や業界によって賃金の水準や就業支援の体制に差があります。
しかし、こうした現実の中でも、自分に合った働き方や職場を見つけること、そしてスキルアップを継続することによって、手取り額を増やし、生活の安定を実現することは十分可能です。
今は難しいと感じていても、就労支援機関のサポートを受けたり、職業訓練や資格取得を通じてステップアップしたりすることで、働き方や収入の選択肢は広がっていきます。
また、障害年金の活用や福利厚生制度のある企業を選ぶことにより、実質的な手取り額の向上を図ることができます。
特に、通勤配慮や柔軟な勤務制度がある企業では、長く働き続けやすくなるため、就業継続による収入の安定にもつながります。
障害者雇用における給料の現状を正しく理解し、障害の特性と希望に合ったキャリアを築いていくことで、より豊かで安定した働き方と生活の実現が可能になるでしょう。
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。