緑内障と仕事の両立って可能?症状理解から就労支援まで完全ガイド
緑内障は視神経にダメージを与え、視野が狭くなる病気です。
この病気と仕事を両立するには、症状の理解と適切なサポートが重要です。
本記事では、緑内障の基礎知識から、仕事に関する課題、適した仕事の特徴、
就労継続のためのポイント、そして利用可能な公的支援と就労支援について詳しく解説します。
緑内障の基礎知識
緑内障とは何か
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、
視野が狭くなる病気です。
日本でも多くの人々がこの病気に苦しんでおり、早期発見と治療が重要です。
主な症状と進行過程
緑内障の初期症状は自覚しにくいですが、視野が徐々に狭くなります。
症状が進行すると、視力の低下や視覚障害が現れますが、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。
視野が狭くなることで、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
症状がない場合でも、眼科の定期健診を受けることをおすすめします。
緑内障の種類
緑内障にはいくつかの種類があります。
原発開放隅角緑内障:(げんぱつかいほうぐうかく りょくないしょう)
隅角部の房水の排出路にあたる網目の部分(線維柱帯)が目詰まりすることで、
房水の流れが悪くなり、少しずつ眼圧が上昇して緑内障を起こします。
最も一般的なタイプで、緩やかに進行します。
日本人の緑内障患者の多くがこのタイプに該当していると言われています。
正常眼圧緑内障:(せいじょうがんあつ りょくないしょう)
眼圧が正常範囲であるにもかかわらず、視神経が損傷するタイプです。
詳しい発症メカニズムはまだ明らかではないようですが、
眼圧は高くないのに、目の圧に弱いため視神経が痛んで視神経に障害をきたしていると
考えられています。
また視神経の栄養不足・視神経の血液の流れが悪いことも影響するといわれています。
原発閉塞隅角緑内障:(げんぱつけいそくぐうかく りょくないしょう)
房水が隅角部に溜まり、虹彩が前に押し付けられ隅角を塞いでしまうことで、
眼圧が上昇することで発症します。
急激な症状が出るため、早期の治療が求められます。
発症スピードにより、慢性原発閉塞隅角緑内障と急性原発閉塞隅角緑内障に分けられます。
急性原発閉塞隅角緑内障の症状としては、激しい頭痛、目の痛み、一晩で嘔吐などがあり、
一晩で失明してしまうこともあります。
また症状からくも膜下出血と間違われることもあるようです。
続発緑内障:(ぞくはつ りょくないしょう)
緑内障以外の眼の病気や糖尿病・眼のケガ・薬物によって引き起こされる緑内障です。
これらの原因によって、結果的に眼圧上昇を引き起こして、視神経が障害され、
視野欠損、視力低下などの視機能の以上に至ります。
治療は原因疾患の治療も必要です。
発達緑内障: (はったつ りょくないしょう)
先天性の緑内障で、早期型小児緑内障は生後1歳までに発症、遅発型小児緑内障は10~20歳代に発症。
生後すぐに発症することがあります。早期の診断と治療が重要です。
検査と診断方法
緑内障の診断には、眼圧検査、眼底検査、視野検査、画像検査などがあります。
緑内障の診断は眼底検査で視神経が減っている箇所があり、それに一致して視野異常がある場合に緑内障と診断されるようです。
緑内障は病気がかなり進行するまで自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診が推奨されます。
特に40歳以上の方は、年に一度の検診が望ましいといわれています。
治療法と予防策
緑内障の治療は、眼圧を下げる薬物療法、レーザー治療、手術があります。
治療法の選択は患者の症状や進行度により異なります。
- 薬物療法
点眼薬や内服薬で眼圧を下げる治療法です。
最も一般的な治療法であり、多くの患者がこの治療を受けています。 - レーザー治療
眼内の流体の排出を促進するためにレーザーを使用する治療法です。
比較的簡便で安全な治療法とされています。 - 手術
薬物療法やレーザー治療が効果を示さない場合に行われる手術です。
眼内の圧力を低下させるための手術が行われます。
予防には、定期検診と生活習慣の改善が重要です。
例えば、バランスの取れた食事や適度な運動、良質で充分な睡眠、ストレス管理が有効です。
また、家族に緑内障の患者がいる場合は、特に注意が必要です。
緑内障患者の仕事に関する課題
仕事中に感じやすい困難
緑内障患者は、視神経にダメージを与え、視野の欠損や視力の低下を引き起こします。
視野の欠損がおこるため、パソコン画面の一部が見えにくくなったり、書類や資料の一部の見逃しを起こしてしまったりすることがあります。
また、視力の低下により小さな文字を読むのが難しくなったり、長時間の集中作業が困難になったりもします。
視力低下の場合には、適切な照明がないと、視覚的な負担が増し、作業効率が低下します。
照明が明るすぎて目に負担がかかったり、暗すぎて文字などが読みづらくなったりしますし、グレア(眩しさ)の問題で反射光や直射光が視界を妨げたり、モニターや書類が見えにくくなることもあります。
避けるべき作業環境
以下のような作業環境は、緑内障患者には適していません。
・激しい肉体労働
重労働は眼圧を上昇させるリスクがあります。
特に重い物を持ち上げる作業は避けるべきです。
・高温多湿の環境
体力を消耗しやすく、眼圧に影響を与える可能性があります。
例えば、夏場の屋外作業などは避けることが望ましいです。
・長時間のPC作業
目の疲れを増し、視力に悪影響を及ぼします。
定期的な休憩を取り入れることが必要です。
運転や視力を要する業務への影響
視野が狭くなると、運転や細かい作業が難しくなります。
これにより、仕事の選択肢が制限されることがあります。
例えば、運転手や精密機械のオペレーターなどの職種は避けた方が良いでしょう。
緑内障患者に適した仕事の特徴
柔軟な時間管理が可能な職種
フレックス制やリモートワークが可能な職場は、体調に合わせて働くことができ、緑内障患者に適しています。
例えば、IT業界やクリエイティブな職種などが該当します。
サポート体制の整った職場環境
職場にサポート体制が整っていると、緑内障患者が働きやすくなります。
緑内障は治る病気ではなく、治療によって進行スピードを抑えていく必要があり、定期的な受診が必要になるため上司や同僚の理解と協力が重要となります。
また、障害者雇用に力を入れている企業は良い選択肢です。
医療・製薬関連の仕事
医療・製薬関連や介護の仕事は、まわりに病気の基礎知識が備わっている方が多いため、緑内障についても理解されやすい職場といえます。
視力への負担が少ない仕事
・オフィスワーク
オフィスワークの中でも視力への負担が少ない業務内容を選ぶことが重要です。
例えば、バックオフィス業務などデータ入力や書類整理ではなく、
電話対応やスケジュール管理など、目を酷使しない業務や人事や総務など
人とのコミュニケーションが中心で、視覚的な集中を要しない業務など。
・サービス業
飲食店のホールスタッフやフロントデスク業務などの接客業や
人の話をきくことが主な業務のカウンセラーやコーチングなど
・クリエイティブな仕事
聴覚が重視される職種の音楽関連
・専門職
クライアントとの会議や相談が中心で、視覚的な作業が少ないコンサルタント
(分析や報告書作成は音声入力ツールを活用) や、体を動かすことが中心のヨガインストタクラ―など
・リモートワークが可能なデスクワーク
自宅で仕事環境を整えることにより、照明や休憩時間を自分で調整可能であったり
拡大鏡や音声入力ツールなどを活用して、視覚的負担を軽減できる可能性があります。
これらのお仕事は、視力の負担を少なくしながら働ける可能性が高いです。
ただし、個々の視力状態や職場環境によって適切な職種は異なるため、職業選択の際には専門医や職業カウンセラーと相談することをおすすめします。
就労継続のためのポイント
主治医との密接な連携
主治医との定期的な診察と相談は、病状の管理と適切な治療を継続するために重要です。
医師の指示に従い、治療を継続しましょう。
職場への適切な情報開示
上司や同僚に病状を正直に伝えることで、必要なサポートを受けやすくなります。
緑内障の特性や必要な配慮を説明することが大切です。
作業環境の調整要請
自然光を活用したり、明るさを調整できるデスクランプやオフィス照明の導入、眩しさを防ぐためのカーテン・ブラインドの設置・モニターやデスクに反射防止フィルムを貼るなど、適切な照明環境を整えることは有効です。
またモニターは拡大表示機能を活用したり、画面の明るさとコントラストの調整や、拡大鏡や読み上げソフトなどの補助ツールを導入することで視覚的負担が軽減されます。
可能であれば、これらを職場に要請し、職場の理解と協力を得ながら、適切な調整を行うことは重要です。
定期的な休憩と服薬管理
定期的に休憩を取り、処方された薬を適切に服用することで、症状を管理できます。
例えば、1時間ごとに5分の休憩を取ることで、目の疲れを軽減できます。
利用可能な公的支援と就労支援
身体障害者手帳の取得
緑内障の症状が進行して、視力が大幅に低下したり、視野が大きく欠損してメガネなどで矯正できない場合は、身体障害者手帳を取得できる可能性があります。
自治体により異なりますが、医療費の助成や税金の障害者控除などが受けられますし、障害者雇用枠での求人に応募することができます。
障害年金の申請
障害年金とは、病気やケガなどで仕事や生活が制限される方が受給できる年金制度です。
障害年金を申請することで、経済的な支援を受けることができる可能性があります。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日に加入していた年金により、国民年金加入者は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」の受給対象となります。
障害年金の申請には、年金請求書・年金手帳・戸籍謄本など(単身者の方で、日本年金機構にマイナンバー登録されている方は不要)・医師の診断書・受診状況等証明書(受診状況等証明書が添付できない申立書)・病歴・就労状況等申立書などが必要になります。
ハローワークの活用
全国のハローワーク(公共職業安定所)では、障害をお持ちの方向けの専門の相談窓口が設置されており、専門知識のある職員が担当者制によってきめ細かな支援を行っています。
また、障害者向けの求人情報の探し方、就職にむけて履歴書の書き方支援、面接の対応の仕方、その他就職・転職に関するさまざまな相談を受けてくれます。
他にも、求人企業側に就職後の必要な配慮について説明してくれたり、希望により面接に同行してくれたりする場合もあります。
さらには、ハローワークの求人情報にでていなくても個別のケースに応じて、企業と交渉してくれるケースもあります。
障害者向け求人サービス
ハローワーク以外にも、多くの障害者向け求人サービスが存在します。
障害者に特化した求人サイト、地域障害者職業センター、障害者職業能力開発校、就労移行支援事業センター、市町村の障害者支援センター、民間の障害者向けの就職支援サービスなどもあります。
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まとめ
緑内障は40歳以上の5%は緑内障であるとも言われており、珍しい病気ではありません。
ただし、初期段階での自覚症状がほとんどなく病気が進行し、視野障害などの症状を自覚する頃には中期~末期の状態となってしまいます。
一度失われた視野は回復しないため、早期発見と早期治療がとても大切です。
40歳をすぎたら、定期的に眼科の検診を受けるようにしましょう。
もし緑内障と診断されたら、症状を理解し、定期的な通院と眼圧をあげないような生活が望ましいです。
緑内障の症状により働き辛さを感じる場合には、自分がどのような環境であれば働きやすいか、どのような配慮が必要かを職場に相談することは大切なことでしょう。
緑内障と仕事を両立させるためには、適切な職業選択、作業環境の調整、職場でのコミュニケーション、支援サービスの活用、そして定期的な目のケアが重要です。
これらの対策を講じることで、緑内障患者も快適に働き続けることが可能になるでしょう。