失語症の症状や種類とは?仕事を探すときに使える支援サービスも紹介
失語症とは、脳の損傷によって言語機能に障害が発生する状態を指します。
失語症を発症すると、話す、聞く、読む、書くといった言語能力全般に支障をきたし、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすことがあります。
この記事では、失語症の症状や種類について解説し、治療方法や仕事に関する支援サービスも紹介します。
失語症と向き合いながら、自分に合ったサポートを見つけ、スムーズなコミュニケーションを取り戻す方法を探っていきましょう。
失語症とは
失語症は、脳の左半球にある言語中枢が損傷することで発生します。
これにより、言葉を理解する、適切に発話する、文章を読む、書くといった基本的な言語機能が失われます。
脳卒中や外傷性脳損傷、脳腫瘍、神経変性疾患などが主な原因です。
発症の仕方や進行具合によって症状の重さは異なり、軽度のものから重度の全失語までさまざまです。
また、失語症は単なる「言葉を話せない」という問題だけでなく、コミュニケーション全般に影響を与えます。
相手の言っていることを理解できなくなったり、適切な言葉が見つからなくなったりするため、患者の心理的負担も大きく、社会的な孤立感に繋がることもあります。
早期の診断と適切な治療が重要です。
失語症の症状
失語症の症状は、患者の脳損傷の部位や程度によって大きく異なります。
以下に、代表的な失語症の症状を紹介します。
喚語(かんご)困難
喚語困難は、話したい言葉が思い浮かばなくなる状態です。
患者は言いたいことを理解しているにもかかわらず、適切な単語が出てこないことがあります。
例えば、リンゴを指して「これは何?」と聞かれた際、正しい単語が出ず、代わりに「果物」と言ってしまうことがあります。
このように、日常的な会話で言葉を思い出すのに時間がかかる症状が見られます。
錯語(さくご)
錯語は、間違った言葉を使ってしまう症状です。
例えば、犬と言いたいのに猫と言ってしまったり、意味の似ている言葉を取り違えることがあります。
錯語は比較的軽度な失語症でも見られることが多く、患者自身も間違いに気づくことがありますが、会話が途切れる原因になることがあります。
新造語(しんぞうご)
新造語は、存在しない言葉を作り出してしまう症状です。
患者は自分の言いたいことを表現しようとするものの、意味をなさない言葉を発してしまいます。
例えば、「リンゴ」を「パトコ」と言ったり、話の中に無意味な言葉が混じることがあります。
このような状態は、重度の失語症で見られることが多く、他人にとっては何を言っているのか理解できないことがほとんどです。
ジャーゴン
ジャーゴンは、文脈のない言葉の羅列を話す症状です。
話す内容が一貫性を欠いており、理解することが非常に難しい状態になります。
患者は無意味な音声や単語を次々と発してしまうため、周囲とのコミュニケーションがほとんど取れなくなります。
これも重度の失語症でよく見られる症状です。
復唱障害
復唱障害は、他人が言った言葉やフレーズを繰り返すことができなくなる症状です。
たとえ聞き取れても、それを自分の言葉で復唱する能力が失われてしまうため、単純な言葉を繰り返すことさえも困難になります。
その他の症状
失語症の患者は、話すスピードが極端に遅くなったり、文法的な誤りが頻繁に起こることがあります。
また、読み書きにも影響が及び、文章を読んでも内容が理解できなかったり、書くことが困難になることがあります。
これらの症状は、コミュニケーション全般に大きな支障をもたらします。
失語症の種類
失語症は、大きくいくつかのタイプに分けられます。
脳の損傷部位やその範囲によって、言語機能に異なる影響を与えるため、それぞれ異なる症状が現れます。
以下は、代表的な失語症の種類です。
ブローカ失語(運動性失語)
ブローカ失語は、脳のブローカ領域に損傷が生じることによって発症します。
患者は言葉を発することが非常に困難で、短いフレーズや単語しか話せなくなります。
しかし、言葉の理解は比較的保たれているため、他人の話を聞いて理解することはできます。
典型的な症状は、発話が遅く、単調でぎこちないことです。
ウェルニッケ失語(感覚性失語)
ウェルニッケ失語は、脳のウェルニッケ領域に損傷が生じることで発症します。
患者は流暢に話すことができますが、言葉の意味が失われており、文法的にも正しくない場合が多いです。
他人の言うことを理解することが難しく、自分の発言内容にも誤りが多くなります。
患者自身が自分の言語の誤りに気づかないことも特徴です。
失名詞失語(健忘失語)
失名詞失語は、特定の単語、特に物の名前を思い出せない状態です。
一般的に軽度の失語症とされ、日常会話において適切な名前や単語がすぐに思い浮かばないことが特徴です。
たとえば、「テレビ」と言おうとしても、その単語が出てこないため、説明的な言葉で「映像が見える機械」などと言う場合があります。
全失語
全失語は、最も重度の失語症です。
患者は話すこと、言葉を理解すること、読むこと、書くことのすべてにおいて困難を抱え、コミュニケーションがほとんどできない状態に陥ります。
全失語は、広範囲の脳損傷が原因となり、リハビリテーションが必要不可欠です。
失語症の原因
失語症の原因の多くは、脳卒中や外傷性脳損傷、脳腫瘍など脳に損傷を与える出来事です。
特に脳卒中は、脳の血管が破裂したり、血流が遮断されることで脳細胞が死滅し、言語中枢にダメージを与える最も一般的な原因です。
その他にも、頭部外傷や脳腫瘍、脳炎、アルツハイマー病などの神経変性疾患も失語症を引き起こす可能性があります。
また、稀に全身的な感染症や毒素が脳に影響を及ぼし、言語障害が発生することもあります。
失語症の治療・回復方法
失語症は、脳の損傷が原因であるため、完全な治癒が難しい場合もありますが、リハビリテーションを通じて症状の改善を目指すことが可能です。
以下に、失語症の主な治療方法を紹介します。
リハビリテーションを行うことで改善する
失語症の治療には、言語聴覚士(ST)による専門的なリハビリテーションが必要です。
リハビリテーションは、失語症のタイプや患者の状態に応じて行われ、言語能力の回復を図ります。
特に、発症直後からリハビリを始めることで、回復が早くなることが期待されます。
「話す」能力を回復するリハビリテーション
患者が言葉を発する能力を回復させるためのリハビリテーションでは、発音練習や単語・フレーズの反復練習が行われます。
言いたいことを思い出す訓練や、言葉の連想訓練を通じて、話す力を少しずつ取り戻していきます。
「聞く」能力を回復するリハビリテーション
他人の言葉を聞き取り、理解する能力を高めるための訓練も行われます。
聴覚的な刺激を通じて、聞く力を鍛えるとともに、言葉の意味を正しく理解する能力を取り戻していきます。
刺激法による回復
言語中枢を刺激して機能を活性化させる「刺激法」も有効です。
視覚的、聴覚的な刺激を通じて、失った言語能力を取り戻すためのトレーニングが行われます。
失語症を発症した方の仕事について
失語症を発症すると、コミュニケーション能力の低下が仕事に大きな影響を与えることがあります。
しかし、多くの場合、失語症の症状が改善すれば職場復帰も可能です。
また、復職が難しい場合でも、失語症に対応した新たな仕事を見つけることができます。
職場とよく相談して復職する
失語症を発症した後、まずは職場の上司や同僚としっかり相談し、復職に向けた支援や配慮を受けることが重要です。
職場環境や仕事内容が適切に調整されれば、再び仕事に取り組むことが可能です。
例えば、コミュニケーションを支援するツールの導入や、業務の一部を他の社員にサポートしてもらうことが考えられます。
また、労働基準法や障害者雇用促進法に基づき、雇用者は障害を持つ労働者に対して適切な支援を提供する義務があります。
合理的配慮を求めることができるため、職場復帰に向けた柔軟な対応が期待されます。
合理的配慮を求める
合理的配慮とは、障害を持つ労働者がその能力を最大限発揮できるように、職場環境や業務内容を調整することを指します。
失語症の患者の場合、口頭でのコミュニケーションを補助するための手書きメモや、電子メールなどの文字ベースでのやり取りを増やすことが可能です。
また、定期的な休憩時間を設けたり、リハビリのための柔軟な勤務時間を設定することも合理的配慮に含まれます。
合理的配慮を受けるには、まずは雇用者とコミュニケーションを取り、自分の状況を説明し、どのような支援が必要かを具体的に伝えることが大切です。
別の企業に転職する
現在の職場での復職が難しい場合、転職を考えることも一つの選択肢です。
特に、障害者雇用に積極的な企業では、失語症を持つ方に理解のある職場環境が整っていることが多く、適切な支援を受けながら働くことが可能です。
転職を考える際には、障害者雇用をサポートする専門の支援機関や就労移行支援事業所、転職エージェントを活用すると良いでしょう。
これらの機関では、失語症などの障害に対応した求人情報を提供し、面接対策や職場見学などの支援を行ってくれます。
失語症の方が転職するには?仕事の探し方
失語症の方が新たに仕事を探す際、サポートを受けられるサービスや機関がいくつかあります。
これらを利用することで、自分の状況に合った仕事を見つけやすくなります。
ハローワーク
ハローワークでは、障害者向けの就職支援サービスが提供されています。
各地に設置された「障害者専門窓口」では、失語症などの障害を持つ方に適した職業紹介や、面接対策、職場見学などのサポートが受けられます。
また、職業訓練や適性検査など、スキル向上に向けたプログラムも用意されています。
さらに、ハローワークでは障害者枠での求人情報も提供しており、失語症を理解した企業を見つけるための大きな助けとなります。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害を持つ方の職業適応訓練や、就職活動のサポートを行う専門機関です。
専門のカウンセラーが個別に面談し、失語症の方に合わせた職業訓練プログラムを作成します。
さらに、就労支援に向けた職場環境の調整や、雇用者への助言なども行っています。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者が職業訓練を受けて就職を目指すための施設です。
ここでは、失語症に対応したコミュニケーション訓練や、パソコンを使った作業の練習、職場での適応力を高めるためのプログラムが提供されています。
個別のサポートが充実しており、就職後も継続的なフォローアップが行われるため、安心して仕事に取り組むことができます。
障害者雇用に特化した転職サイト
近年では、障害者雇用に特化した転職サイトも増えてきています。
これらのサイトでは、障害者枠の求人情報が豊富に掲載されており、失語症などの障害を持つ方でも働きやすい職場を見つけやすくなっています。
また、企業側が障害者に対してどのような配慮を行っているか、具体的なサポート体制についても詳細に説明されていることが多いため、安心して応募できます。
障害者雇用に特化した転職サイトには、「スグJOB障害者」があります。
これらのサイトでは、専任のコンサルタントが面接対策や履歴書の書き方のアドバイスを行い、スムーズな転職活動を支援してくれます。
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失語症の方がスムーズにコミュニケーションを取るには
失語症を発症した方が、日常生活や職場で円滑にコミュニケーションを取るためには、いくつかの工夫やリハビリテーションが必要です。
以下に、コミュニケーションを円滑に進めるための具体的な方法を紹介します。
失語症であることを周囲に伝え、理解してもらう
まず最も重要なことは、失語症を周囲の人に理解してもらうことです。
自分がどのような言語障害を抱えているのか、どういった場面で困難を感じるのかを説明することで、周囲の人々は協力しやすくなります。
また、相手が失語症に対する知識を持つことで、無理のないコミュニケーションが生まれやすくなります。
例えば、「話すのが少し遅くなるけれど、ゆっくり聞いてもらえると助かる」など、具体的なお願いをすることが効果的です。
焦らずゆっくり会話する
失語症の方とのコミュニケーションでは、焦らずゆっくりと会話を進めることが大切です。
話すスピードが遅くなる場合もありますが、相手が話し終わるまでしっかりと待つことが大切です。
また、相手が言葉を思い出せないときには、無理に助け船を出すのではなく、じっくりと待つ姿勢を持つことが重要です。
また、言葉が出にくい場合でも、ジェスチャーや筆談を活用することで、コミュニケーションがスムーズに進む場合があります。
リハビリテーションによって能力の回復を促す
失語症を持つ方にとって、定期的なリハビリテーションを続けることは、コミュニケーション能力の向上に不可欠です。
特に、専門家による言語訓練や認知トレーニングを受けることで、言語機能の回復が期待できます。
失語症の種類や程度に応じて、個別のプログラムが用意されているため、効果的なリハビリを受けることが重要です。
まとめ
失語症は、脳の損傷によって言語機能に障害が生じる状態ですが、適切な治療やリハビリテーションを通じて回復が可能です。
失語症にはさまざまな種類と症状があり、個々の症例に応じた支援が必要です。
職場復帰や転職に際しても、合理的配慮を求めたり、支援機関を活用することで、仕事を続けることができる可能性があります。
また、日常生活や職場でのコミュニケーションを円滑にするために、周囲の理解や協力を得ることも大切です。
失語症に対する正しい知識を持ち、焦らずじっくりとコミュニケーションを取ることで、より良い日常生活を送ることができるでしょう。