障害者雇用を辞めたいと感じたときの対処法

障害者雇用を辞めたいと感じたときの対処法
障害者雇用で働いていると、さまざまな理由から「辞めたい」と感じることがあります。

職場の環境や仕事内容が自分に合っていないと、毎日の仕事が苦痛になり、心身の負担が増してしまうこともあるでしょう。

本記事では、障害者雇用における退職理由や、仕事を続けるための環境作り、退職を考えた際のチェックポイント、退職手続き、転職・再就職の選択肢、そして就労支援サービスの活用方法について詳しく解説します。

退職を考えている方が、よりよい選択ができるようにサポートしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

1. 障害者雇用で辞めたくなる主な理由
2. 仕事を続けるための環境作り
3. 退職を考えたときのチェックポイント
4. 退職の手順と必要な手続き
5. 転職・再就職の選択肢
6. 就労支援サービスの活用
- 6.1. 就労継続支援とは？
  - 6.1.1. A型支援の特徴
  - 6.1.2. B型支援の特徴
- 6.2. 就労移行支援のメリット
7. まとめ

障害者雇用で辞めたくなる主な理由

障害者雇用に限った話ではありませんが、企業に所属し働いていく中で、「このまま続けていて大丈夫だろうか」と不安に感じることは珍しくありません。

多くの方が退職を考える主な理由を整理し、どのような対応ができるのかを見ていきましょう。

給料が安い

障害者雇用特有の話としては、一般雇用と比較して給料が低いと感じる方が多いでしょう。

がま口財布を持つ若い女性

これは、以下のような理由によるものです。

非正規雇用（契約社員・パート・アルバイト）の割合が多い
専門的な業務よりも補助業務が中心になることが多い
労働時間が短く設定されている
残業が少ない、または禁止されている

例えば、精神障害者の平均月収は約125,000円と報告されています。

生活費をまかなうには厳しい額だと感じる方も多いでしょう。

退職を考えた理由が給料面である場合は、職場の上司や人事部門などに交渉してみるのも1つの手段です。

交渉が難しいのであれば、キャリアアップを図る、より条件の良い職場を探す、障害者向けの転職支援サービスを利用するなどの方法を検討してみましょう。

合理的な配慮が不足している

障害者雇用では、本来「合理的配慮」が提供されるべきですが、実際には職場によって対応に差があるのが現状です。

以下のような事情から、配慮を受けられない場合があります。

必要な休憩時間の確保が難しい
作業環境（照明、騒音、温度など）が適切でない
障害特性に合わない業務を任される
体調管理のための通院や服薬時間を確保できない

職場に配慮を求める場合は、具体的にどのようなサポートが必要かを整理し、上司や人事担当者と話し合うことが大切です。

また、各自治体で設置されている「障害者就業・生活支援センター」や最寄りの「ハローワークの専門相談窓口」を活用することで、職場への配慮交渉をサポートしてもらうこともできます。

単純作業ばかりでやりがいがない

「毎日同じ仕事の繰り返しで、やりがいを感じられない」という理由で退職を考える方も少なくありません。

障害者雇用では、以下のように比較的簡単な業務が割り当てられることが多いため、成長の機会が少ないと感じることがあります。

書類整理やデータ入力などの単調な作業ばかり
業務の幅が広がらず、スキルアップの機会がない
責任のある仕事を任せてもらえない

もし「もっと成長したい」と考えているなら、上司に相談して新しい業務にチャレンジする、資格取得やスキルアップを目指すといった行動を起こしてみましょう。

人間関係が上手くいかない

人間関係は、障害者雇用に限らず、退職の要因の上位を占める問題です。

職場の人間関係がうまくいかないと、業務自体はこなせていてもストレスが増大し、「辞めたい」と感じる大きな要因になります。

特に障害者雇用の場合は、障害に対する理解が不足している職場で、以下のような問題が生じることがあります。

同僚や上司に障害を理解してもらえない
必要な配慮を求めると「甘え」だと誤解される、「特別扱い」と思われる
他の社員とうまくコミュニケーションが取れない

解決が難しい場合は部署異動で職場を変えることで、より自分に合った環境を見つけるのも一つの方法です。

退職を考える理由は人それぞれですが、まずは「本当に辞めるべきかどうか」を慎重に判断しましょう。

仕事を続けるための環境作り

退職を避け、できるだけ仕事を続けるためには、自分に合った環境を整えることが重要です。

以下の方法を試すことで、今の職場でも働きやすさを改善できるかもしれません。

合理的配慮を求める方法

職場での困難を減らし、働きやすい環境を作るためには、「合理的配慮」を積極的に求めることが大切です。

合理的配慮とは、障害のある人が働きやすいように、業務や職場環境を調整することを指します。

法律上、企業にはこの配慮を提供する義務があります。

合理的配慮の例

体調に応じた勤務時間の調整（時短勤務やフレックスタイム）
休憩時間や通院のためのスケジュール調整
作業スペースの変更や業務内容の調整
コミュニケーションの方法（口頭指示→メール指示など）の工夫

障害者雇用であれば、入社時に必要な合理的配慮の聞き取りがあります。

入社後に職場に新たな配慮を求める際は、具体的な内容を整理し、上司や人事担当者と話し合いましょう。

また、社内に相談窓口がある場合は、積極的に利用するのも良い方法です。

面接・面談

スキルアップや業務の幅を広げる

「やりがいが感じられない」「仕事に成長を感じない」という悩みがある場合、スキルアップや業務の幅を広げることで解決できるかもしれません。

スキルアップの方法

資格取得やオンライン講座の受講
社内研修への参加
新しい業務への挑戦（上司に相談して仕事の幅を広げる）

スキルを高めることで、より責任のある仕事を任される機会が増え、仕事にやりがいを感じやすくなります。

職場の人間関係を改善する

職場の人間関係がストレスの原因になっている場合、良好なコミュニケーションを意識することで、状況が改善することがあります。

人間関係を改善するためのポイント

相手の意図を確認しながら会話する（誤解を減らす）
必要な配慮を伝え、協力を求める
信頼できる同僚や上司に相談する
適度な距離を保ち、無理に関係を深めようとしない

配慮を求めるだけでなく、周りの人に何かできることがないか聞いてみるのも良いでしょう。

また、社内に相談窓口があれば、悩みを打ち明けることで、職場の環境を改善する手助けをしてもらえることもあります。

改善するのが難しいときは、社内の相談窓口や、外部の支援機関（例：障害者就業・生活支援センター）を活用することも検討しましょう。

退職を考えたときのチェックポイント

ここまで職場環境を改善する方法をお伝えしてきましたが、個人の力で職場を変えることに限界を感じ、「辞めたい」と考えることもあるでしょう。

退職を考える際には、勢いで辞めるのではなく、冷静に状況を整理することが大切です。

以下のポイントをチェックしながら、退職すべきかどうかを検討しましょう。

ビジネスマン

辞めたい理由を明確にする

まず、「なぜ辞めたいのか？」を明確にしましょう。

具体的な理由を整理することで、ここまでに述べてきた方法で問題を解決できる可能性があるからです。

よくある退職理由の例

給与が低い → 転職やキャリアアップの検討
仕事が単調でやりがいがない → 業務の幅を広げる
職場の人間関係が悪い → コミュニケーションの改善、部署異動の相談
体調面で不安がある → 勤務時間や業務量の調整を依頼

理由を明確にすることで、今の職場で改善できることがないかを考え、転職の必要性を判断しやすくなります。

次の仕事の条件を整理する

問題を解決するのが難しい場合、退職も視野に入ってきます。

退職を決意する前に、次の仕事に求める条件を整理しましょう。

整理すべきポイント

どんな職種で働きたいか
給与の希望額
勤務地の条件（通勤時間や在宅勤務の可否）
障害に対する配慮があるか

自分にとって最適な働き方を考え、転職活動の準備を進めることが大切です。

転職活動にかけられる時間を考える

転職活動には一定の時間がかかるため、今の仕事を続けながら進めるのか、退職してから活動するのかを考えましょう。

転職活動にかかる期間の目安

現職を続けながら転職活動をする → 3〜6ヶ月程度
退職後に転職活動をする → 1〜3ヶ月程度

退職後の生活費を考えながら、無理のないスケジュールを組むことが重要です。

退職時期を決める

転職活動の進捗や、現職での引き継ぎ期間を考慮しながら、適切な退職時期を決めていきます。

一般的には、退職の意思は1ヶ月前までに伝えるのが望ましいとされています。

この時期については就業規則に定められていることが多いので、会社に退職を伝える前に確認してみましょう。

また、次の仕事が決まる前に退職する場合は、失業手当や生活費の準備も忘れずに行いましょう。

退職の手順と必要な手続き

退職を決意したら、スムーズに進めるために適切な手続きを踏むことが大切です。

特に、退職時のトラブルを防ぐためにも、以下の手順を参考に進めていきましょう。

パソコンを持って案内をする笑顔の女性

退職交渉の進め方

退職を決めたら、まずは直属の上司に退職の意向を伝えることが必要です。

退職の理由を伝える際は、前向きな言い方を心がけ、必要以上にネガティブな内容にならないように注意しましょう。

例えば、「職場環境が合わなかったから辞めたい」と伝えるよりも、「新しい環境でスキルを活かしたい」といった表現のほうが、スムーズに話が進みやすくなります。

また、退職の申し出は、できるだけ1カ月以上前に行うのが望ましいです。

企業によっては退職までに必要な期間が異なるため、就業規則を事前に確認しておくと安心です。

退職届の提出

退職の意思が受理されたら、正式に「退職届」を提出します。

退職届の基本的な書式

退職届

私こと○○○○は、一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたします。

○○株式会社

代表取締役 ○○○○ 殿

○年○月○日

（署名・捺印）

会社によっては指定の書式がある場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

退職までの引き継ぎ

円満に退職するためには、業務の引き継ぎも重要です。

特に、後任者がスムーズに業務を進められるように、以下の内容を整理しておきましょう。

担当業務のマニュアルを作成する
クライアントとのやり取りや進行中の案件の状況をまとめる
業務に関する資料を整理し、共有する
同僚や後任者と引き継ぎミーティングを行う

しっかりと引き継ぎを行うことで、退職後も良好な関係を維持しやすくなります。

雇用保険の手続き

退職後に新しい仕事が決まっていない場合は、雇用保険（失業保険）を受給するための手続きが必要です。

失業保険を受給するための条件

退職前の2年間で、雇用保険に12カ月以上加入していること
ハローワークで求職活動を行っていること
就職の意思があること（病気療養中の場合は対象外）

失業保険の手続きの流れ

会社から「離職票」を受け取る（退職後10日以内に発行される）
ハローワークで求職申し込みを行う
雇用保険説明会に参加する
待機期間（7日間）を経て、失業手当の支給が開始される

注意点

「自己都合退職」の場合、手続き後に3カ月の給付制限期間があります。

この間は失業給付は受け取れません。

自己都合による退職の場合、最低でも3ヶ月分の生活費は確保しておくようにしましょう。

一方、「会社都合退職」（解雇・倒産など）の場合は、待機期間なしで給付が開始されるため、退職理由を正しく申請することが重要です。

健康保険・年金の手続き

退職すると、健康保険と年金の切り替え手続きが必要になります。

健康保険の選択肢

選択肢	特徴
国民健康保険	市区町村の窓口で手続き。保険料は世帯の所得に応じて決定。
任意継続保険	退職前の健康保険を最大2年間継続可能。保険料は全額自己負担。
家族の扶養に入る	家族の勤務先で加入可能（条件あり）。

年金の手続き

厚生年金から国民年金に切り替え（市区町村の窓口で手続き）
配偶者の扶養に入る場合は、相手の勤務先で手続きを行う

退職後14日以内に手続きを行う必要があるため、早めに対応しましょう。

転職・再就職の選択肢

退職後の新しい仕事探しには、さまざまな方法があります。

自分に合った転職活動の進め方を選び、より良い環境で働けるように準備を進めましょう。

社外で仕事をする女性

障害者向け転職エージェント・サイトの利用

障害者雇用に特化した転職エージェントや求人サイトを活用すると、スムーズに転職活動を進められます。

特に「スグJOB」のような障害者雇用専門の転職情報サイトは、様々な障害に理解のある企業の求人を多数掲載しており、サポートも充実しています。

障害者向け転職エージェントのメリット

メリット	説明
障害に配慮した求人を紹介してもらえる	一般求人では見つけにくい、障害者雇用枠の求人を専門的に紹介してもらえる。
履歴書や面接の対策をサポートしてもらえる	応募書類の書き方や面接対策を行い、内定獲得率を高めるアドバイスを受けられる。
企業との交渉も代行してもらえるため、条件交渉がしやすい	給与や勤務条件、配慮事項について、企業との交渉をサポートしてもらえる。

利用の流れ

転職サイトやエージェントに登録：基本情報や希望条件を入力し、エージェントとの面談日を設定します。
キャリアアドバイザーとの面談：現在の状況や希望する職種、勤務形態について相談し、適した求人を探してもらいます。
求人紹介を受ける：希望条件に合った求人情報を提供してもらい、応募を検討します。
面接・選考：企業との面接や筆記試験を受け、選考を進めます。
内定・入社：内定後、雇用契約を結び、入社準備を進めます。

転職エージェントを利用することで、自分に合った企業を見つけやすくなります。

就労移行支援を活用する

転職活動をスムーズに進めるために、「就労移行支援」を活用するのもおすすめです。

就労移行支援は、障害者の就職活動をサポートする公的な支援サービスです。

スキルアップや職場体験を通じて、より良い仕事に就くための準備ができます。

就労移行支援のメリット

就職に向けたスキルアップができる（ビジネスマナー、パソコンスキル、職業訓練など）
実際の職場を体験しながら、適性を見極められる
専門スタッフのサポートを受けながら、転職活動を進められる
就職後の定着支援も受けられるため、長く働き続けやすい

「転職活動に自信がない」「自分に合った仕事がわからない」と感じる方は、就労移行支援を活用することで、より自分に合った職場を見つけやすくなります。

一般雇用枠へのチャレンジ

障害者雇用だけでなく、一般雇用枠での転職も選択肢の一つです。

一般雇用枠では、障害者雇用枠よりも職種の幅が広がり、給与や待遇の面でも好条件の求人が見つかることがあります。

しかし、一般雇用枠では、障害への配慮が少ない可能性があるため、慎重に検討することが必要です。

一般雇用枠に応募する際のポイント

企業に障害を開示するかどうか検討する
- 企業に障害を開示し、必要な配慮を求めるかどうかを考える。
面接で職場環境を確認する
- 仕事の負担や配慮の有無について、面接時に企業側と相談する。
試用期間を利用して働きやすさを確認する
- 一般雇用枠では、試用期間が設定されていることが多いため、その間に職場環境をチェックする。

一般雇用枠へのチャレンジは、キャリアアップや高収入を目指したい方にとって有力な選択肢になります。

就労支援サービスの活用

仕事探しの際には、公的な就労支援サービスを活用すると、よりスムーズに就職活動を進めることができます。

特に、障害者雇用での就職の経験が少ない方や、次の仕事を探す際に不安を感じる方にとって、こうした支援サービスは大きな助けとなります。

以下のような支援サービスをうまく活用しながら、自分に合った職場を見つけるための準備を進めていきましょう。

就労継続支援とは？

就労継続支援は、一般企業での就職が難しい方が、働きながらスキルを身につけることができる福祉サービスです。

就労継続支援には「A型」と「B型」の2種類があり、それぞれ雇用契約の有無や働き方に違いがあります。

就労継続支援	特徴
A型事業所	雇用契約あり。最低賃金が保証され、比較的安定した収入を得られる。
B型事業所	雇用契約なし。工賃（給与）が発生するが、収入はA型より低い傾向。比較的自由な働き方ができ、体調に合わせた勤務が可能。

A型支援の特徴

雇用契約が結ばれるため、最低賃金が保証される。
企業と同じような形で仕事ができるが、障害に配慮した環境が整っている。
福祉的な支援を受けながら、一般企業への就職を目指すことが可能。

A型支援は、「ある程度の体力があり、労働時間に耐えられるが、一般企業での勤務には不安がある」という方に向いている制度です。

B型支援の特徴

雇用契約がないため、比較的自由な働き方ができる。
作業量や勤務時間を、自分の体調や生活スタイルに合わせて調整可能。
工賃（給与）はA型よりも低めだが、無理なく働くことを優先できる。

B型支援は、「長時間の勤務が難しい」「まずは仕事に慣れながら、少しずつスキルを身につけたい」という方に適しています。

就労移行支援のメリット

就労移行支援は、一般企業での就職を目指す方に向けた支援サービスです。

この支援を活用することで、就職に必要なスキルを学びながら、自分に合った職場を見つけることができます。

就労移行支援の主なメリット

職業訓練を受けながら、スムーズに就職準備ができる。
ハローワークや企業と連携しながら、安心して転職活動を進められる。
支援スタッフが応募書類の作成や面接対策をサポートしてくれる。
就職後の定着支援も受けられるため、長く働き続けるためのサポートが受けられる。

就労移行支援で受けられる主なサポート内容

サポート内容	説明
職業スキル訓練	ビジネスマナー、PCスキル、軽作業など、職種ごとに必要なスキルを学べる。
企業実習の提供	実際の職場で働く体験ができ、自分に合った仕事を見極められる。
就職活動のサポート	応募書類の添削や面接対策を受け、企業とのマッチングをスムーズに進められる。
就職後の定着支援	職場での悩み相談や、働き続けるためのアドバイスを受けられる。

就労移行支援を活用すると、自分のペースで就職活動を進めながら、無理なくスキルアップできる環境が整っています。

「就職活動に不安がある」「自分に合った仕事を見つけたい」と考えている方は、ぜひ一度、就労移行支援の利用を検討してみてください。

これらの就労支援サービスを上手に活用することで、自分に合った働き方を見つけ、より良い環境で長く働き続けることが可能になります。

まとめ

障害者雇用で「辞めたい」と感じたときは、まずその理由を明確にし、解決策を考えることが重要です。

「今の職場が自分に合っていない」と感じたとしても、すぐに辞めるのではなく、改善できる点がないかを冷静に見極めましょう。

退職を考える前にできること

問題点	取るべき対応
給与が低い	スキルアップを目指す、転職を検討する
合理的配慮が足りない	職場と相談し、改善を求める
仕事にやりがいがない	新しい業務にチャレンジする、業務の幅を広げる
人間関係が悪い	コミュニケーションの工夫をする、部署異動を相談する