
障害者雇用の給与では生活できない理由と解決策
障害者雇用という制度は、障害のある方々が働く機会を得られるように設けられた、社会的に大切な仕組みです。
多くの方がこの制度を通じて社会とのつながりを実感し、前向きに働く第一歩を踏み出しています。
けれども一方で、「働いているのに生活が苦しい」「収入が少なくて将来が不安」と感じている方も決して少なくありません。
特に一人暮らしを目指す方や、ご家族を支える必要がある方にとっては、今の給与水準では到底やりくりできないと感じてしまう場面もあるでしょう。
「障害者雇用なら安定して長く働ける」と言われることもありますが、実際には雇用形態や待遇面での制限が壁となってしまうこともあります。
このコラムでは、障害者雇用における給与水準の実態を詳しく見ていきながら、なぜ「生活できない」と感じるのか、その根本的な理由をひも解いていきます。
そして、どのような工夫や制度を活用すれば、少しでも安定した生活に近づけるのか。
経済的に自立したいと願うあなたに向けて、現実的で前向きな解決策をお伝えしていきます。
また、働くことを支援する仕組みについても紹介しますので、就職に不安がある方にもきっと役立てていただけるはずです。
「働きたいけれど、この先どうすれば生活していけるのか…」そんな不安を抱えているあなたに、今すぐ始められる行動のヒントをお届けします。
障害者雇用の現状と課題
障害のある方が安心して働ける社会を目指し、障害者雇用制度は整備されてきました。
近年では多くの企業が障害者を受け入れるようになり、就労の機会は確実に広がっています。
しかしその一方で、「雇用されても安定した生活にはつながらない」「働き続けることに不安がある」といった声も少なくありません。
障害者雇用は“入口”としては機能していても、その後の定着やキャリア形成においては、まだ課題が多いのが現実です。
この章では、まず制度上の背景と企業の取り組みの実情、そして働く本人にとってのメリット・デメリットを分けて見ていきます。
障害者雇用率制度と企業の実情
法定雇用率と企業規模別の状況
日本では、障害のある方が働く権利を守るために「法定雇用率」が定められています。
2024年時点での民間企業の法定雇用率は2.5%とされ、従業員が40人以上の企業には、その割合に応じた障害者の雇用が義務づけられています。
この雇用率は数年おきに改定され、今後も上がっていく見込みとなっています。
大企業では比較的この基準を満たしている傾向がありますが、中小企業では対応が追いつかず、未達成のままのところも少なくありません。
また、形式的に採用していても、業務内容や職場環境が実際の障害特性に合っていないというケースもあります。
こうした背景から、「法定雇用率を満たすためだけの採用になってしまっているのでは」と不安を抱く求職者も増えているのです。
雇用形態と労働条件の実態
障害者雇用では、パートや契約社員といった非正規雇用が中心になっているのが実情です。
勤務時間も短時間で設定されることが多く、収入が限られてしまう原因となっています。
また、業務内容がごく限定的なものに偏る傾向もあり、自分の得意な分野や能力を発揮できずにモチベーションを失ってしまう方も少なくありません。
企業側としても「配慮」はしているつもりでも、実際には「隔離的な業務配置」になってしまっているというケースがあるのです。
合理的配慮が名ばかりの制度にならないよう、企業には労働条件や職務内容の改善が引き続き求められています。
障害者雇用のメリットとデメリット
就職のしやすさと合理的配慮
障害者手帳を持っている方は、企業の障害者雇用枠に応募できるため、就職の機会が広がりやすくなります。
また、障害者雇用では「合理的配慮」が法的に求められているため、必要に応じて業務の調整や通院配慮などをお願いすることができます。
「障害者トライアル雇用」など、短期間の試用的な雇用制度を利用すれば、無理なく職場に慣れるステップを踏むことも可能です。
初めての就労に不安を感じる方にとって、こうした制度は大きな支えになるでしょう。
仕事の種類や昇進の限界
ただし、障害者雇用では、担当できる仕事の範囲が限られているケースが少なくありません。
単純作業や補助的な業務に固定されがちで、スキルアップや昇進のチャンスが得られにくいという側面があります。
「この人にはこれだけの仕事で十分」と決めつけられてしまい、本来の能力や成長の可能性が活かされないこともあります。
結果として、やりがいを感じにくくなり、将来の展望が見えなくなってしまう人もいるのです。
働きやすさと引き換えに、キャリアの選択肢を狭められてしまうというジレンマが、今もなお課題として残されています。
障害者雇用の給与で生活が難しい理由
「働いているのに、なぜ生活が成り立たないのか」。
障害者雇用で就労している多くの方が、そんな疑問や不安を抱えています。
制度としての整備は進んでいるものの、実際の収入面に目を向けると、自立した生活には不十分と感じる現実が浮かび上がってきます。
ここでは、収入が低くなってしまう構造的な理由を、4つの視点から解説します。
短時間勤務や最低賃金の減額特例
障害者雇用、特に精神障害者の方では、週20時間未満の短時間勤務が基本となるケースが多く見られます。
この場合、月収が10万円に届かないこともあり、家賃や生活費をまかなうには明らかに不足しています。
さらに、企業は一定条件のもとで、「最低賃金の減額特例」を申請・適用することができます。
これは、障害特性などにより通常の業務遂行が難しいと判断された場合、最低賃金以下での雇用が合法とされる仕組みです。
この制度は「通常の業務が行えない方にも雇用のきっかけを広げる」側面がある一方で、安定的な生活を望む人にとっては深刻な足かせになることもあります。
非正規雇用が多く、昇給が望みにくい
障害者雇用においては、非正規雇用の割合が高く、昇給や賞与が得られにくいという現実があります。
厚生労働省のデータによると、障害種別ごとの正社員雇用割合は以下の通りです:
- 身体障害者:59.3%
- 知的障害者:20.3%
- 精神障害者:32.7%
- 発達障害者:36.6%
(参照:厚生労働省|「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」)
これに対し、一般労働者の正規雇用率は約59.4%であるため、特に知的・精神・発達障害者の正社員雇用率が低いことがわかります。
(参照:厚生労働省|「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-(HTML版)」)
非正規雇用では、賞与や昇給の機会が限られていることが多く、長期的な収入の安定が難しい傾向にあります。
また、退職金制度が整備されていない企業も多く、老後の備えや将来設計に不安を感じる方も少なくありません。
このような状況下では、非正規であっても十分な評価や報酬が得られる仕組みの整備が求められています。
単純作業が多く、スキルアップが難しい
障害者雇用の現場では、ルーチン業務や補助的な作業に偏っている職場が多い傾向にあります。
こうした職場では、新たなスキルを学ぶ機会が乏しく、キャリアアップや転職に向けた準備が難しいと感じる方もいます。
たとえば、清掃・軽作業・郵便仕分けなどの仕事では、ITスキルや資格といった“評価されるスキル”を積みにくいのが現実です。
その結果、他職種への転職や正社員登用を目指そうとしても、「スキルがないから採用できない」と言われてしまうこともあるのです。
医療費負担や地方の求人不足
障害のある方の中には、継続的な通院や服薬が必要な人も多く、月々の医療費が家計を圧迫してしまうケースがあります。
また、地方に住んでいる場合は、そもそも障害者向けの求人自体が少ないという問題も存在します。
求人があったとしても、交通機関が不便で通勤が困難だったり、配慮のある職場が遠方に限られていたりと、選択肢が限られることも多いのです。
その結果、就労を続けるためのコスト(通院費・交通費)がかさみ、「働いても赤字」という状況に陥ってしまう人もいます。
自立した生活のための解決策
障害者雇用の給与だけでは生活が難しい――。
そう感じる方にこそ、知っていただきたいのが、今ある制度や支援を活用する方法です。
工夫と準備次第で、今よりも安心して暮らせる環境を整えることができます。
この章では、制度の活用・収入アップの工夫・職場選びのポイントの3つに分けて、現実的に役立つ方法をご紹介します。
「自立した生活を送りたい」という想いを、一歩ずつかたちにしていくためのヒントになれば幸いです。
各種制度の利用
障害年金や手当の受給
障害者の生活を支える重要な制度のひとつに、障害年金があります。
障害の程度や就労状況に応じて、月に数万円〜10万円以上の支給を受けることも可能です。
特に「障害基礎年金」や「障害厚生年金」は、働きながらでも条件を満たせば受給できます。
また、自治体によっては、特別障害者手当や福祉手当など、独自の支援制度が設けられていることもあります。
まずは、自分の障害手帳の等級や年金加入歴をもとに、受給資格があるかどうかを確認することが大切です。
障害者就労支援センターや年金事務所に相談すれば、丁寧に教えてもらえるので、ひとりで悩まずに声をあげてみましょう。
障害者控除や生活保護の活用
所得が少ない方には、所得税や住民税の負担を軽くできる「障害者控除」という制度もあります。
これは年末調整や確定申告の際に申請ができ、家計の支出を抑える大きな助けとなります。
さらに、収入が一定以下で、生活が困難な場合には、生活保護を受ける選択肢も用意されています。
「働いているのに保護を受けていいのか」とためらう声もありますが、就労しながらでも申請できる場合があることを知っておいてください。
収入アップの工夫
資格取得やスキルアップ
収入を増やすには、できる仕事の選択肢を広げることが何よりも大切です。
たとえば、パソコン操作(Word・Excel)や簿記、医療事務、福祉関連の資格は取得難易度の割にニーズが高く、給与アップにつながる可能性があります。
最近では、就労移行支援事業所やハローワークで無料の職業訓練を受けられることもあります。
「今の自分には無理かも…」と思わずに、少しずつステップアップを目指してみましょう。
正社員登用や転職の検討
現在パートや契約社員として働いている方も、正社員登用のチャンスがある企業は少なくありません。
真面目に勤務を続けていれば、社内評価や制度によって登用の道が開けることもあります。
また、今の職場で限界を感じているなら、より条件の良い職場への転職を考えるのも一つの手です。
その際におすすめしたいのが、障害者向けの求人を専門に扱っている「スグJOB」です。
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専任のキャリアアドバイザーに相談もできるので、「どんな仕事が合っているのかわからない」と感じている方も、安心して利用できます。
副業の可能性
本業だけで生活費をまかなうのが難しい場合、副業という選択肢も視野に入れてみましょう。
ライティング・イラスト・データ入力など、在宅でできる仕事も増えています。
ただし、副業OKの職場かどうかを事前に確認することや、確定申告など税務の知識も必要になる点には注意しましょう。
自分の体調やライフスタイルに合わせて、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
自分に合った職場選び
業種や職種の幅広い検討
「障害があるからこの仕事しかできない」と思い込んでいませんか?
実際には、事務、IT、製造、医療、サービス業など、さまざまな業界で障害者雇用は行われています。
自分の得意なことや興味のある分野をヒントに、視野を広げて求人を探すことが大きな第一歩になります。
また、職場の雰囲気や支援体制も含めて検討すると、長く続けやすい職場に出会える可能性が高まります。
働き方の希望を明確に伝える
面接や職場見学の場では、「週何時間働けるか」「どのような配慮が必要か」をしっかりと伝えることが重要です。
これは、自分を守るための大切なコミュニケーションでもあります。
合理的配慮は、企業が一方的に与えるものではなく、あなた自身が自分の希望を言語化することで、よりよい形で実現されていくのです。
無理なく、安心して働くためには、お互いに納得したうえで雇用契約を結ぶことが何よりの安心材料になります。
まとめ
障害のある方が、社会の一員として働くことは決して特別なことではありません。
それを支えるのが、障害者雇用制度という仕組みです。
制度の存在によって、多くの方が「働く」という経験を得られるようになってきました。
けれども現実には、「働いても生活が苦しい」「将来が不安」という声が根強く残っているのもまた事実です。
その背景には、短時間勤務や非正規雇用、スキルアップの機会不足、医療費や地域差といった多くの要因が関係しています。
しかし、希望がないわけではありません。
制度を正しく知り、受けられる支援を活用し、自分に合った働き方を模索することで、生活を安定させることができます。
そして、もし今の働き方に限界を感じているなら、あなたに合った仕事を一緒に探してくれる存在に頼ることも選択肢のひとつです。
「スグJOB」では、障害のある方の就労に特化した求人やサポート体制を整え、一人ひとりの強みや希望に寄り添った就職支援を行っています。
「自分にもできる仕事があるかもしれない」
そう思えたときが、次の一歩のはじまりです。
働くことがつらいものではなく、安心して続けられる未来をつくるために。
あなたの歩幅で、できることから始めてみませんか?
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。