障害者総合支援法とは?目的・改正点・サービス内容までを徹底解説
障害のある方が、地域で安心して暮らし、そして自分らしく働き続けるためには、福祉制度について正しく知ることがとても大切です。
支援制度を知っているかどうかで、選べる生活や働き方が大きく変わることもあります。
その中でも「障害者総合支援法」は、就労支援や生活支援の土台となる法律です。
名前を聞いたことはあっても、
「どんな目的で作られた法律なのか」 「具体的にどんなサービスが受けられるのか」 「自分は対象になるのか」
といった点が分かりにくいと感じている方も、多いのではないでしょうか。
法律と聞くと難しそうに感じますが、ポイントを押さえれば決して特別なものではありません。
この記事では、障害者総合支援法とは何かを基礎から分かりやすく解説します。
目的や考え方、この法律で定められている制度やサービス内容、支援措置の利用までの流れ、そして近年の改正ポイントまで、できるだけ丁寧に整理しています。
今後の就職活動や生活設計を考える際の参考として、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次
- 障害者総合支援法とは?:すべての人が自立した社会生活を送るための基本となる法律を理解する
- 障害者総合支援法の目的と基本理念:共生社会を実現するための考え方
- 障害者総合支援法の仕組みとサービス内容:自立支援給付と地域生活支援事業を中心に解説
- 障害者総合支援法の対象者と認定区分:誰がどのように支援を受けられるのか
- サービス利用の流れ:申請から支給決定・受給者証交付まで
- 利用者負担と減免制度:所得区分ごとの上限額と注意点を整理
- 障害者総合支援法の主な改正ポイント:2022年・2024年の変更点を中心に
- 障害者自立支援法との違い:制度の理念・支援範囲・対象拡大の視点で比較
- 今後の課題と展望:持続可能な障害福祉制度を目指して
障害者総合支援法とは?:すべての人が自立した社会生活を送るための基本となる法律を理解する
ここでは、障害者総合支援法とはどのような法律なのかについて、基本から整理していきます。
制度が作られた背景や、以前の法律との違いを知ることで、この法律が目指している社会の姿が見えてきます。
障害者総合支援法の定義と制定の背景
障害者総合支援法とは、障害のある人が地域で生活を送れるようにするため、必要な福祉サービスを総合的に支援することを目的とした法律です。
正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といいます。
2013年に施行され、現在の障害福祉サービスの中心となっている法律です。
この法律が制定された背景には、「障害があるから特別な場所で生活する」という考え方から、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしく「障害があっても地域で当たり前に暮らす」という考え方への転換があります。
障害の種類や重さに関係なく、住み慣れた地域で暮らし続けること。
社会的な障壁を取り除き、障害がある方の社会参加を制度として支えていくこと。
そのために、支援の仕組みを整理し直す必要がありました。
従来の制度では、サービスの種類や対象が複雑で、利用する側にとって分かりにくいという課題がありました。
そうした課題を解消し、利用者目線で使いやすい制度を目指して整えられたのが、障害者総合支援法です。

障害者自立支援法からの改正経緯と制度の変遷
障害者総合支援法は、2006年に施行された「障害者自立支援法」を見直す形で、題名を改めて制定されました。
当時は「応益負担」という考え方が強調されたことへの不安や批判もあり、のちの見直しでは、利用者の負担が過度にならないよう所得区分に応じた上限など、負担軽減の考え方がより重視される形で整理が進められました。
また障害の内容などによって、制度の対象にならない方がいるなどの問題も抱えていました。
こうした反省を踏まえ、障害のある人の生活のしやすさや尊厳をより重視する制度へと転換したのが、障害者総合支援法です。
改正により、負担の考え方が見直され、所得に応じた上限額が設定されました。
また、それまで対象外だった一定の難病患者が新たに制度の対象に加えられたほか、これまでは精神障害の内に含まれていた発達障害が法律の対象として明記されたことも大きな変更点です。
相談支援体制の強化も進められ、制度を「使いやすくする」視点が強く意識されるようになりました。
障害者総合支援法が目指す社会像と理念
障害者総合支援法が目指しているのは、障害の有無によって人生の選択肢が制限されない社会です。
施設で保護されることを前提とするのではなく、地域で生活し、地域で働き、地域とつながることを基本としています。
就労支援や生活支援は、そのための「手段」にすぎません。
大切なのは、障害のある方が生活の場を自分で選び、自分らしい生き方を決められることです。
必要な支援を受けながらも、主体はあくまで本人であるという考え方が、制度の根底にあります。
この理念は、就職や転職を考える際にも非常に重要な視点となります。
障害者総合支援法の目的と基本理念:共生社会を実現するための考え方
この章では、障害者総合支援法とは何を目的としている法律なのか、そして、その背景にある考え方や理念について詳しく見ていきます。
法律の目的を理解することで、制度が「誰のために」「何を支えようとしているのか」が、より明確になります。
尊厳と自立を重んじる法の目的
障害者総合支援法とは、単に福祉サービスを提供するためだけの法律ではありません。
この法律の最終的な目的は、障害のある人一人ひとりの尊厳を守ることです。
ここでいう「尊厳」とは、 障害があるからといって一方的に生活の場を定められるのではなく、地域にいる一人の生活者として尊重されることを意味しています。
また、法律の目的として掲げられている「自立」は、すべてを一人でこなすことを求めるものではありません。
必要な支援を受けながら、
「どこで暮らすか」
「どんな働き方を選ぶか」
「どんな人生を送りたいか」
を自分で選択できる状態を指しています。
障害者総合支援法では、支援を受けること自体が「依存」ではなく、自立した生活を実現するための「手段」であると考えられています。
この考え方は、就職活動や転職を考える際にも重要です。
「配慮を求めることは悪いことではない」
「支援を受けながら働くことも立派な選択肢である」
そうした価値観を、制度として後押ししているのが、障害者総合支援法です。

地域で生きる力を支える支援体制の構築
障害者総合支援法のもう一つの大きな柱が、地域生活の支援です。
この法律では、これまで当たり前だった、施設や病院に長期的にとどまる生活を前提とせず、できる限り地域で生活することが基本とされています。
そのために、
- 介護サービス
- 医療機関
- 就労支援機関
- 相談支援事業者
- 自治体
といった関係機関が連携し、支援体制を整えています。
一つのサービスだけで生活を支えるのではなく、複数の支援を組み合わせることで、生活全体を支える仕組みです。
例えば、
- 日中は就労移行支援を利用しながら働く準備を進める
- 生活面では居宅介護を利用し、困ったときには相談支援員に相談できる
といった形が想定されています。
このように、生活・就労・医療を切り離さずに支えるという考え方が、障害者総合支援法の特徴です。
地域全体で支える仕組みを作ることで、孤立を防ぎ、安心して社会参加できる環境づくりが進められています。
就職を目指す障害のある方にとっても、「働くこと」だけでなく、「働き続けられる生活」を支える制度であることを、ぜひ知っておいてください。
障害者総合支援法の仕組みとサービス内容:自立支援給付と地域生活支援事業を中心に解説
この章では、障害者総合支援法とはどのような仕組みでサービスが提供されているのかを、全体像から分かりやすく解説します。
「制度が複雑でよく分からない」と感じやすい部分ですが、基本の考え方を押さえれば、必要な支援が見えてきます。
制度の全体像とサービス分類
障害者総合支援法の支援は、中心となる「障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付等)」と「地域生活支援事業」に大別されます。
さらに、医療費を支える自立支援医療や、補装具などの仕組みも関連します(利用可否や手続きは自治体で確認が必要です)。
障害福祉サービスは、国が定めた基準にもとづき、全国共通で提供されるサービスです。
どの自治体に住んでいても、基本的な内容は同じである点が特徴です。
一方、地域生活支援事業は、市区町村が主体となって実施するサービスです。
地域の実情やニーズに応じて内容が異なるため、自治体ごとに利用できる支援に差があります。
この2つを組み合わせることで、 「生活を支える支援」と「地域で暮らすための支援」の両方をカバーできる仕組みになっています。
制度全体としては、必要な支援を必要な分だけ利用するという考え方が基本です。
そのため、支援の内容や量は、障害支援区分や個々の生活状況によって調整されます。

介護給付・訓練等給付・相談支援の具体的な支援内容
自立支援給付の中には、いくつかのサービス区分があります。
まず「介護給付」です。
介護給付には、
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
- 短期入所(ショートステイ)
- 療養介護
- 生活介護
- 施設入所支援
などが含まれます。
これらは、日常生活において介助が必要な方を支えるサービスです。
食事、入浴、外出といった場面でのサポートを受けることができます。
次に「訓練等給付」です。
訓練等給付には、就労に関する支援が多く含まれています。
-
- 自立訓練
- 就労選択支援
- 就労移行支援
- 就労継続支援(A型、B型)
- 就労定着支援
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
などがあります。
就労移行支援では、一般企業への就職を目指し、ビジネスマナー、職業訓練、就職活動のサポート、などを受けることができます。
就労継続支援A型・B型は、すぐに一般就労で働くことが難しい方が、働く機会を得ながら、生活リズムや作業能力を高めていくための支援です。
そして、見落とされがちですが非常に重要なのが「相談支援」です。
相談支援では、
- 計画相談支援
- 地域相談支援
があります。
どのサービスを利用すべきか、どんな働き方が合っているか、生活で困っていることは何かといった点について、専門の相談支援員が一緒に整理してくれます。
サービス等利用計画の作成も、この相談支援の一環です。
就職を目指す方にとっては、「就労支援」だけでなく、「生活全体を支える視点」でサービスを組み合わせることが、安定した就労につながります。
障害者総合支援法は、働くことだけを切り取る制度ではなく、生活と就労を一体で支える制度であることを、ぜひ覚えておいてください。
障害者総合支援法の対象者と認定区分:誰がどのように支援を受けられるのか
この章では、障害者総合支援法とは、どのような人が対象となり、どのように支援内容が決まるのかについて解説します。
「自分は制度の対象になるのかな?」 と不安に感じている方にとって、特に重要なポイントです。
対象となる障害の種類と難病患者の追加
障害者総合支援法でいう「障害者」とは、原則として18歳以上の、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害のある方、そして一定の要件を満たす難病等のある方を指します。
なお、18歳未満(障害児)の支援は児童福祉法にもとづく障害児支援(児童発達支援・放課後等デイサービス等)が中心で、制度の窓口や手続きが一部異なります。
難病等のある方が対象に追加されたのは、障害者総合支援法の大きな改正点の1つです。
難病の方の場合、外見からは分かりにくく、日によって体調が大きく変動することも少なくありません。
そうした特性を踏まえ、「生活や就労に支障が出ているかどうか」という実態を重視して、支援の対象とされています。
また、障害者手帳を持っていない場合でも、医師の診断書や意見書によって、サービスを利用できるケースがあります。
「手帳がないから対象外」と自己判断せず、まずは自治体や相談支援事業者に相談してみましょう。

障害支援区分の認定調査と判定基準
障害者総合支援法のサービスを利用するためには、原則として「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。(訓練等給付の一部など、区分認定がなくても受けられるサービスもあります)
「障害支援区分」とは、日常生活や社会生活において、どの程度の支援が必要かを示す区分です。
区分1から区分6まであり、数字が大きくなるほど支援の必要性が高いと判断されます。
認定にあたっては、自治体の職員などが行う「認定調査」が実施されます。
調査では、
- 移動や動作に関する項目
- 身の回りの世話や日常生活等に関連する項目
- 意思疎通等に関連する項目
- 行動障害に関連する項目
- 特別な医療に関連する項目
などが、細かく確認されます。
その後、医師の意見書とあわせて審査が行われ、障害支援区分が決定されます。
この区分によって、利用できるサービスの種類、利用時間の上限などが変わるため、非常に重要な手続きとなります。
調査の際は「できないこと」だけでなく、「支援がないと難しいこと」を正確に伝えましょう。
障害児への支援と成人支援の違い
障害者総合支援法は、主に18歳以上の成人を対象とした制度です。
18歳未満の障害児については、児童福祉法にもとづく支援が中心となります。(サービスによっては、対象となる支援もあります)
ただし、18歳になると自動的に切り替わるわけではありません。
進学や就職といったライフイベントの時期に、支援が途切れてしまわないよう、事前に準備や相談を行いましょう。
特に、高校卒業後に就職を目指す方や、就労移行支援の利用を検討している方にとっては、制度の切り替え時期に手続きが必要になる場合があります。
早めに相談支援事業者や自治体に相談し、スムーズな移行を目指しましょう。
サービス利用の流れ:申請から支給決定・受給者証交付まで
この章では、障害者総合支援法とは、実際にどのような手順で利用する制度なのかを、申請からサービス開始までの流れに沿って解説します。
「何から始めればいいのか分からない」
「手続きが難しそうで不安」
と感じている方でも、全体像がつかめるよう、順を追って説明していきます。
自治体窓口での申請手順と必要書類
障害者総合支援法にもとづくサービスを利用するためには、市区町村の窓口での申請が必要です。
申請先は市町村によって異なりますが、原則として住民票のある自治体の障害福祉担当課になります。
窓口では 「現在どのような困りごとがあるか」「どのような支援を希望しているか」といった内容を簡単に確認されます。
申請時に必要となる書類は、主に以下のようなものです。
- 障害福祉サービス利用申請書
- 医師の意見書または診断書
- 本人確認書類
- 障害者手帳(所持している場合)
自治体によって違いがあるため、事前にホームページや電話で確認しておくと良いでしょう。
「書類がそろっていないと申請できないのでは」と心配される方もいますが、まずは相談だけでも受け付けてもらえるケースが多いです。
不安な場合は、早めに窓口へ相談することをおすすめします。
特定相談支援事業者による計画作成の流れ
申請後、サービス等利用計画案の提出を求められます。
そのため多くの場合で利用することになるのが、特定相談支援事業者による支援です。
特定相談支援事業者は、障害福祉サービスを利用する方の状況を整理し、「どんなサービスを、どのくらい利用するか」をまとめた「サービス等利用計画案」を作成します。
計画作成にあたっては、
- 現在の生活状況
- 体調や障害の特性
- 就労への希望や不安
- 家族や周囲のサポート状況
などを、丁寧にヒアリングします。
利用計画と聞くとハードルが高いように感じる方もいますが、この過程は「支援を受けるための手続き」というよりも、自分の生活を一緒に見直す機会と考えるとよいでしょう。
計画は、本人の希望を尊重しながら作成されます。
「こうしなければならない」と一方的に決められるものではありません。
納得できない点があれば、遠慮なく相談することが大切です。

セルフプランによる自主的な申請方法
障害者総合支援法では、特定相談支援事業者を利用せず自分自身で計画を作成する「セルフプラン」という方法も認められています。
セルフプランでは、
- 利用したいサービス内容
- 利用頻度
- 生活上の目標
などを、自分で整理して申請します。
「自分のことは自分で決めたい」「すでに利用したいサービスが決まっている」「書類作成に慣れている」という方にとっては、選択肢の1つとなります。
ただし、申請書類が複雑である、自治体とのやり取りに不安があるといった場合には、負担が大きくなることもあります。
初めて制度を利用する方や、就職や生活の変化を控えている方は、相談支援事業者のサポートを受けながら進める方が安心です。
障害者総合支援法とは、「一人で頑張ること」を求める制度ではありません。
必要な支援を上手に使いながら、自分らしい生活や働き方を実現するための制度であることを、ぜひ覚えておいてください。
利用者負担と減免制度:所得区分ごとの上限額と注意点を整理
この章では、障害者総合支援法とは、どの程度の費用負担が発生する制度なのかについて解説します。
「利用料が高そうで不安……」
「収入が少なくても利用できるのだろうか」
と感じている方に向けて、自己負担の仕組みや減免制度を分かりやすく整理します。

所得区分別の自己負担上限と支給割合
障害者総合支援法のサービスは、利用者の世帯の所得に応じて、月ごとの自己負担上限額が定められています。(世帯については後述します)
例えば、生活保護を受給している世帯、市町村民税非課税世帯、一定以下の所得のある世帯など、それぞれに上限が設定されています。
そのため、サービスを多く利用した月でも、上限額を超えて請求されることはありません。
この仕組みにより、「支援が必要な人ほど負担が重くなる」という事態を防ぐ工夫がされています。
実際には、多くの方が月額数千円程度、あるいは無料で利用しているケースも少なくありません。
費用面が心配で利用をためらっている方は、まずは上限額を確認してみましょう。
実費負担となる費用項目(食費・光熱費など)
注意しておきたいのが、すべての費用が制度でまかなわれるわけではないという点です。
サービス利用料とは別に、実費として自己負担になる項目があります。
代表的なものは、
- 食費
- 光熱費
- 日用品費
- サービス施設通所時の交通費
などです。
例えば就労移行支援や就労継続支援を利用する場合、昼食代や作業服代が実費負担になることがあります。
また、グループホームなどの居住系サービスでは、家賃や水道光熱費が必要になるケースもあります。
これらの金額や条件は、事業所ごとに異なるため、利用前に必ず確認することが重要です。
「思っていたより費用がかかった」と後から困らないよう、事前に説明を受けておくと安心です。
障害児・成人で異なる世帯区分の考え方
利用者負担を考えるうえで、もう一つ大切なのが世帯区分の考え方です。
障害児の場合は、原則として保護者の所得が基準になります。
一方、成人の場合は、本人と配偶者の所得をもとに判定されます。
親と同居していても、成人であれば親の所得は原則として含まれません。
この点は 「親の収入が高いから利用できないのでは」 と不安に感じている方にとって、安心材料になるかもしれません。
ただし、世帯の状況や自治体の判断によって、例外的な扱いがされることもあります。
正確な負担額を知るためには、自治体や相談支援事業者に個別に確認することが必要です。
障害者総合支援法とは、経済的な理由で支援をあきらめなくてよいよう配慮された制度です。
費用面で不安がある場合でも1人で抱え込まず、早めに相談することをおすすめします。
障害者総合支援法の主な改正ポイント:2022年・2024年の変更点を中心に
この章では、障害者総合支援法とは、2013年の施行以降、時代の変化に合わせてどのように見直されてきた法律なのかを解説します。
近年の見直しとしては、令和4年(2022年)に成立した改正法により、地域生活支援や就労支援などが段階的に施行されています(令和5年・令和6年など複数の施行日があります)。
特に、近年の生活の場や働き方に大きく関わる改正を中心に、重要なポイントを整理します。
地域生活支援とグループホーム支援の強化
2022年以降の改正で特に重視されているのが、希望する生活を続けるための支援強化です。
これまで、障害のある方の生活は、施設や病院に依存しがちでした。
しかし、障害者総合支援法では「できる限り地域で生活すること」が基本的な考え方とされています。
この流れを受け、グループホームや1人暮らしへの移行支援が見直されました。
また、精神障害者が必要な治療・サービスを受けられる支援体制の整備や、難病・小慢患者への医療充実と療養生活支援、関連サービスや病気のデータベースに関する規定などが整備されました。

就労選択支援の創設、雇用機会の拡大、助成金の強化
2024年の改正における大きなポイントの一つが、就労支援の考え方そのものが整理・強化されたことです。
これまでの障害福祉制度では、「どの就労系サービスを利用するか」が先に決まりやすく、本人の希望や特性を十分に整理しきれないまま進んでしまうケースもありました。
こうした課題を踏まえ、2024年改正では「就労選択支援」という新たな仕組みが創設されました。
就労選択支援とは、一般就労・就労移行支援・就労継続支援A型・B型といった選択肢の中から、本人にとって最も適した働き方を、段階的・客観的に整理するための支援です。
いきなり「就職する」「事業所を決める」のではなく、
- 本人の強みや苦手なこと
- 体調や生活リズム
- 働くうえで必要な配慮
などを丁寧に確認したうえで、
進む方向を一緒に考えるプロセスが制度として位置づけられました。
これにより「自分には合わない職場を選んでしまう」といったリスクの軽減が期待されています。
就労しながらの一時的なサービス利用など、より柔軟な利用も制度化されます。
また、2024年改正では、障害のある方の雇用機会を広げるための環境整備も進められています。
福祉的就労から一般就労への移行だけでなく、短時間勤務や柔軟な働き方、段階的な就労といった、多様な雇用の形がより重視されるようになりました。
これは「フルタイムで働けなければ就職できない」という固定的な考え方から、一人ひとりの状況に応じた働き方を認める方向へと制度が進んでいることを示しています。
あわせて、企業側への支援も強化されています。
障害者雇用促進法等による、短時間勤務者などを雇用率に算定できる特例措置、障害者雇用に関する各種助成金制度の充実により、
- 職場環境の整備
- 業務の切り出し
- 定着支援の体制づくり
などに取り組みやすくなっています。
これにより、「雇用したい気持ちはあるが、受け入れ体制に不安がある」と感じていた企業にとっても、障害者雇用へのハードルが下げられたと言えるでしょう。
就労を目指す方にとっては、「自分にはどんな働き方が合っているのか」を考えるための支援が、制度としてより手厚くなったことを意味しています。
障害者自立支援法との違い:制度の理念・支援範囲・対象拡大の視点で比較
この章では、障害者総合支援法とは、以前の「障害者自立支援法」と何が違うのかを分かりやすく整理します。
名前が似ているため混同されやすい制度ですが、理念や支援の考え方には大きな違いがあります。
違いを知ることで、現在の制度がより当事者目線で設計されていることが見えてきます。
障害程度区分から支援区分への見直し
障害者自立支援法では、「障害程度区分」という考え方が用いられていました。
これは、障害の重さを数値化し、その程度に応じて支援内容を決める仕組みです。
しかし、この方法では、同じ障害でも生活環境や支援の必要性が異なるという実態が十分に反映されにくいという課題がありました。
そこで、障害者総合支援法では、「障害支援区分」へと見直しが行われました。
障害支援区分では、日常生活でどのような支援が必要か、社会生活にどの程度の配慮が必要かといった点が、より丁寧に評価されます。
単に障害の重さを見るのではなく、その人の暮らしに必要な支援の量を基準にする考え方です。
この見直しにより、一人ひとりの状況に合った支援が受けやすくなりました。
重度障害・難病支援の追加と意思決定支援の強化
障害者自立支援法では、制度の対象が限られており、「制度の谷間」と言われる支援が届きにくい人がいるという問題がありました。
特に、重度の障害がある方、外見から分かりにくい障害のある方、難病を抱えている方などは、十分な支援を受けにくい状況がありました。
障害者総合支援法では、こうした課題を踏まえ、難病患者が制度の対象に追加されました。
また、重度障害のある方でも地域で生活できるよう、支援内容の充実が図られています。
さらに大きな変化として、意思決定の考え方が重視されるようになりました。
これは、支援する側が一方的に決めるのではなく、本人の意思や希望を尊重し、相談しながら支援を行うという考え方です。
「できないから代わりに決める」のではなく、「どうしたいかを一緒に考える」という姿勢が、制度の中に明確に位置づけられています。

計画相談支援による支援の質向上
障害者総合支援法では、計画相談支援(サービス等利用計画)を通じて、生活全体を見渡しながら必要な支援を組み合わせていく考え方が重視されています。
特定相談支援事業者による計画相談支援は、その中心的な役割を担っています。
これにより「サービスを使うこと」が目的になるのではなく、「どんな生活を送りたいか」を起点に支援を考えるという流れが生まれました。
- 就労支援
- 生活支援
- 医療
- 家族のサポート
などを切り離さず、一人ひとりに合った支援の形を整えやすくなっています。
このように、障害者総合支援法とは、障害者自立支援法の反省点を踏まえ、より人に寄り添った制度へと進化した法律だと言えるでしょう。
今後の課題と展望:持続可能な障害福祉制度を目指して
この章では、障害者総合支援法とは、今後どのような課題を抱え、どんな方向へ進んでいく制度なのかについて考えていきます。
制度を「知る」だけでなく、これからどう活用していくかを考えることは、将来の働き方や生活を考えるうえでとても大切です。
制度を取り巻く社会的課題と現状
障害者総合支援法は、現在も改正や見直しを重ねながら運用されている法律です。
しかし、社会全体を見ると、いくつかの大きな課題が存在しています。
まず、この法律だけでなく福祉全体の問題として挙げられるのが、少子高齢化の進行です。
支援を必要とする人が増える一方で、支える側となる働き手や財源は限られています。
また、障害のある方のニーズも、年々多様化しています。
- 医療的ケアを必要とする方
- 精神障害や発達障害のある方
- 難病を抱えながら働きたいと考える方
など、支援の形は一律では対応できなくなっています。
地域による支援体制の差も、課題の一つです。
都市部と地方では、利用できるサービスの種類、支援事業所の数、相談できる人の多さなど違いがあり、住んでいる場所によって選択肢が変わってしまう現状があります。
就労と生活を両立させる支援の重要性
今後の障害福祉制度において、特に重要になるのが就労と生活の両立支援です。
障害者総合支援法とは「働くこと」だけをゴールにする制度ではありません。
働き続けられる生活をどう支えるかという視点が、ますます重要になっています。
例えば就職できたものの、
- 体調管理が難しくなった
- 職場の人間関係で悩んでしまった
- 通院と仕事の両立がうまくいかない
といった理由で、離職してしまうケースも少なくありません。
こうした事態を防ぐためには、就職前の支援だけでなく、就職後の定着支援や相談支援を含めた継続的なサポートが欠かせません。
制度としても「就職=ゴール」ではなく、「安定して働き続けること」を見据えた支援へと、少しずつ軸足が移ってきています。

制度を上手に活用するために大切なこと
障害者総合支援法は、すべてを自動的に整えてくれる制度ではありません。
自分に合った支援を見つけるためには、制度を知り、相談し、必要なサポートを自分で選び取っていく必要があります。
「制度が難しそうだから後回しにする」
「よく分からないから使わない」
という選択をしてしまうと、本来受けられるはずの支援を逃してしまうこともあります。
特に、就職や転職を考えている障害のある方にとっては、福祉制度と雇用支援の両方を理解することが、将来の選択肢を広げることになります。
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一人で悩まず、制度と支援を上手に組み合わせながら、自分らしい働き方と生活を見つけていきましょう。
障害者総合支援法とは、そのための「土台」となる法律なのです。
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。






