
トライアル雇用とは?未経験からでも正社員になれる制度の概要とコツ

トライアル雇用とは?未経験からでも正社員になれる制度の概要とコツ
就職活動をしていると、「いきなり正社員になるのはちょっと不安……」「未経験でも応募できる制度ってないのかな」と感じることはありませんか?
特に、これまでに働いた経験が少ない方や、ブランクが長い方にとって、再スタートの場を探すのは勇気がいることだと思います。
そんなときにぜひ知っていただきたいのが、「トライアル雇用」という制度です。
この記事では、トライアル雇用の基本的な仕組みや実際の活用方法、正社員になるまでの過程などを、わかりやすくご紹介していきます。
あなたが安心して働き始められるヒントになれば幸いです。
トライアル雇用制度の概要
トライアル雇用とは、働くことに不安がある方が、企業で試しに一定期間(通常3ヶ月)働いてみることで、自分に合った職場かどうかを見極めることができる国の制度です。
採用する企業側も、実際の仕事ぶりや人柄を見ながら判断できるため、採用のミスマッチを防ぐことができます。
そのため、求職者・企業の双方にとってメリットのある仕組みとして注目されています。
トライアル雇用の目的と対象者
この制度の最大の目的は、経験やスキルに自信がない方にも就労のチャンスを生み出すことです。
社会に出ることに不安を感じている方や、長く働いていない方でも、「試してみる」ことができるのです。
対象となる人は以下のように、年齢や就労状況に応じて分類されます。
一般トライアルコースの条件
1~4の条件すべてを満たしている方が対象になります:
- 無期雇用、1週間の所定労働時間が30時間以上のお仕事を希望していて、トライアル雇用を希望している方
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等にから申し込んだ求人であること
- 求人を紹介された日時点で、次のアからエまでのどれにも当てはまらないこと
ア 無期雇用のフルタイムなど、安定した仕事に就いている
イ 自営業か企業の役員で、1週間当たりの実働時間が30時間以上
ウ 学生
エ トライアル雇用期間中 - 次のアからオまでのどれかに当てはまること
ア 過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
イ 過去1年に働いていない(パート・アルバイトなどを含め)
ウ 妊娠、出産・育児を理由に退職した方で、過去1年に無期雇用などの安定した仕事についていない
エ 1968(昭和43)年4月2日以降の生まれで、安定した仕事に就いておらず、ハローワークか職業紹介事業者で担当者がついていて個別支援を受けている
オ 生活保護受給者、母子家庭の母、父子家庭の父、日雇・季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者 に当てはまる
上記に該当する方であれば、「トライアル雇用」の記載がある求人に応募することで、実際の職場での仕事を通じて、自分の強みや適性を発見することができます。
障害者トライアルコースの条件
トライアル雇用には、障害のある方も安心してチャレンジできるよう、障害者向けの専用コースが用意されています。
障害者トライアル雇用を紹介される方は、障害者であって、障害者トライアル雇用を希望していることが前提となっています。
望まない方に紹介されることはありません。
そして、次の条件のどれかに当てはまる方が対象となります。
- 未経験の職業に就くことを希望する方
- 2年以内に、離職または転職が2回以上ある方
- 紹介された時点で、仕事をしていない期間が6か月を超えている方
- 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者のいずれかである方
このコースでは、職場での配慮や支援が得られやすく、無理のないペースで働きながら職場に慣れていくことができます。
トライアル雇用と試用期間の違い
トライアル雇用と間違えやすい制度に「試用期間」がありますが、両者はまったく異なるものとなっています。
トライアル雇用は、最大3か月の有期契約でスタートする雇用形態で、国が定めた雇用制度となっています。
求職者と企業の双方が“お試し”で働ける制度となっており、助成金など双方にメリットがあります。
一方の試用期間は、正社員として雇用したうえで、最初の数か月間だけ評価を行う制度であり、基本的には雇用契約が継続する前提でスタートします。
試用期間は特定の法律で定められている制度ではなく、個々の企業の就業規則等によって違います。
そのため、期間や期間中の待遇などが厳密に法律で決まっているわけではありません。
以下に、主な違いをまとめた表をご紹介します。
比較項目 | トライアル雇用 | 試用期間 |
雇用形態 | 有期契約 | 個々の労働契約による |
制度の根拠 | 国が定めた制度 | 各企業が定めた制度 |
助成金 | あり(企業向け) | なし |
解雇制限 | 期間中は法的制限あり、ただし期間後無期雇用に転換するかどうかの制限は低い | 入社後14日以内を除き、通常の雇用と同様に法的制限あり |
このように、法的な位置づけなどが大きく異なります。
トライアル雇用併用求人とは
「トライアル雇用併用求人」とは、ひとつの求人で“通常の無期雇用枠”と“トライアル雇用枠”の両方を設けている求人のことです。
この形式では、経験やスキルがある方は通常の選考で、未経験の方はトライアル雇用からスタートすることができます。
つまり、企業側は幅広い層から応募を受け入れやすくなり、求職者側も自分の状況に合ったチャレンジがしやすくなります。
「未経験の仕事に挑戦したい」という方にとって、安心して応募できる求人のひとつです。
トライアル雇用のメリットとデメリット
トライアル雇用制度には、実際に働く前に職場との相性を確かめられるという大きな利点がある一方で、注意すべき点もあります。
特に、障害者手帳をお持ちの方や未経験から正社員を目指す方は、この制度を利用する前に、制度の特性をよく理解しておきましょう。
求職者側のメリット
採用面接のハードルが下がる
トライアル雇用は、国の助成金制度と連動しているため、企業にとっては採用にかかる費用が軽減されます。
その結果、求職者にとっては、通常よりも採用されやすくなる傾向があります。
職場や仕事との相性を事前に確認できる
実際に働いてみることで、職場の雰囲気や業務内容、同僚との人間関係など、自分に合うかどうかを確認できます。
紙の情報だけでは分からない「肌感覚」を得るチャンスにもなります。
未経験でも応募可能
トライアル雇用は、これまでの職歴やスキルに不安がある方でも応募できます。
将来正社員を目指す際の“ステップアップ”として活用できます。
雇用保険や社会保険に加入できる
労働時間などの条件を満たしていれば、通常の雇用と同様に社会保険・雇用保険の対象になります。
短期雇用でも、保険に加入できる点は大きな安心材料となります。
求職者側のデメリット
必ず正社員採用されるとは限らない
トライアル期間が終了した時点で、企業から正社員としての採用が見送られる場合があります。
努力を重ねても、企業の判断次第という側面があることは理解しておきましょう。
ただしトライアル雇用期間後に不採用が続いた企業は、助成金の支給対象外になるなどのペナルティを受けることがあります。
不採用でも職歴に残る可能性
トライアル雇用での就労経験は履歴書に記載することが多くなります。
トライアル雇用終了時点で採用見送りとなった場合は「解雇」として扱うため、履歴書に解雇の履歴が残ることになります。
制度を利用している企業が少ない
トライアル雇用では、必然的に未経験者やスキルに自信がない方を雇うことになります。
そのため、すべての企業がこの制度を導入しているわけではありません。
経験を重視する業種や地域などの条件によっては、求人の選択肢が限られてしまうことがあります。
企業側のメリット
採用ミスマッチを防げる
トライアル雇用では、実際に働いている様子を見ながら、企業側がその人の適性や姿勢を判断できます。
書類や短時間の面接では分からない一面も把握できるため、採用のミスマッチを防ぐことができます。
助成金で採用コストを抑えられる
トライアル雇用の対象者を受け入れた企業には、条件を満たすことで最大月額4万円前後の助成金が支給されます。
人材育成にかかるコストが軽減できるため、特に中小企業にとっては大きな支援となる制度です。
企業側のデメリット
制度利用の手続き負担
トライアル雇用を活用するためには、ハローワークへの求人登録や雇用契約書の作成、助成金の申請書類の整備など、いくつかの手続きが必要です。
慣れていない企業にとっては、煩雑に感じることもあるかもしれません。
未経験者教育に時間がかかる
トライアル雇用は、未経験者や職業経験が浅い方を対象とすることが多いため、経験者を雇う場合よりも教育や研修に時間が必要になります。
教育体制が整っていない企業にとっては、人材育成の負担が大きくなります。
トライアル雇用から正社員になる確率と流れ
無期雇用を目指すのであれば、トライアル雇用は非常に心強い制度です。
厚生労働省の統計によれば、過去数年間における無期雇用への移行率は平均して70%以上となっており、高い水準を維持しています(厚生労働省資料「トライアル雇用助成金事業」|2025年4月確認)。
ただしここでいう「無期雇用」にはいわゆる正社員だけでなく、期間を定めない時給制の契約社員なども含まれるため、必ずしも正社員になれることを保証するものではない点に注意が必要です。
とはいえ、一般的な採用選考と比べて門戸が広く、実際の職場で自分の働きぶりを見てもらえるチャンスがあるため、前向きな第一歩として活用できます。
特に、経験に自信がない方や障害者雇用を希望する方にとっては、就職へのステップとして有効な制度といえるでしょう。
正社員を目指す流れ
以下に、トライアル雇用を活用して正社員になるまでの一般的な流れを解説します。
1. ハローワークや職業紹介事業者を通じてトライアル雇用求人に応募
トライアル雇用求人は、ハローワークだけでなく、厚生労働大臣の許可を受けた民間の職業紹介事業者からの紹介でも応募することができます。
まずは、お近くのハローワークや転職支援サービスで「トライアル雇用」「トライアル雇用併用」と明記された求人を探しましょう。
この表示がある求人は、未経験やブランクがある方にも門戸を開いています。
特に障害者雇用に対応している紹介事業者であれば、希望や特性に合った職場を一緒に探してくれます。
担当スタッフと相談しながら進めることで、不安な点も一つひとつ解消できますので、初めての方でも安心です。
2. 採用面接を受ける
応募後は、通常の採用と同様に面接を受けます。
ここでは、過去の実績よりも「働きたいという気持ち」「職場でうまくやっていけそうか」といった人物面が重視される傾向があります。
ご自身の意欲や、働くうえで大切にしていることを率直に伝えましょう。
3. 3ヶ月のトライアル雇用期間で実力を発揮
採用となった場合、期間限定(一般的には3ヶ月)の契約社員として働くことになります。
実際に働きながら、勤務態度や協調性、業務への取り組み姿勢などが評価されます。
この期間は、「見られている」ことを意識しつつも、無理せず自然体で働くことが大切です。
不安や困ったことがあれば、職場や支援機関の担当者に相談しましょう。
4. トライアル雇用終了後に正社員採用
3か月間の契約が終了した時点で、企業が「このまま無期雇用で働いてもらいたい」と判断すれば、正社員として正式に雇用されます。
この決定は、働きぶりだけでなく、周囲との協調性や長く働く意欲なども含めて総合的に評価されます。
トライアル雇用の注意点と上手な活用法
トライアル雇用は、未経験者や障害のある方が安心して働き始めるための有用な制度ですが、制度を活用する上での注意点もあります。
特にブランクが長い方や、はじめて就職にチャレンジする方は、制度の特徴をよく理解しておきましょう。
複数企業への同時応募はできない
トライアル雇用は、一度に1社のみ応募できる仕組みとなっています。
「とりあえず複数社受けて、合ったところを選びたい」と考える方も多いかもしれませんが、この制度では同時に複数の企業へ応募することはできません。
応募の際は、職場の雰囲気や仕事内容をしっかり確認し、自分に合っているかどうかを見極めた上で、慎重に応募しましょう。
なお、トライアル雇用の対象ではない通常の求人であれば、トライアル雇用と並行して応募することは可能です。
助成金目当ての悪用企業に注意
トライアル雇用では、無期雇用転換を行わなくても、定めた期間内に解雇などがなければ助成金の対象になります。
なかには、助成金だけを目的にトライアル雇用を利用する企業も残念ながら存在します。
そういった企業では、期間が終わると無期雇用に転換されないケースや、十分な教育・支援が得られないこともあります。
事前にハローワークや職業紹介事業者、口コミサイトなどで企業の評判や職場環境を確認しておくことが大切です。
職場見学の機会がある場合は、積極的に参加しておくとより安心です。
エンジニアなどスキルが必要な職種でも活用可能
トライアル雇用というと「軽作業が多いのでは?」と思われがちですが、近年はIT業界やクリエイティブ職などでも未経験可の求人が増えています。
エンジニア、Webデザイナー、事務職など、スキルを身につけながらチャレンジできる職種も広がってきています。
自分が将来目指したい分野がある方にとって、トライアル雇用は“学びながら働く”という形が実現しやすい制度です。
自主的なスキルアップが正社員採用のカギ
トライアル期間中に大切なのは、前向きに学ぶ姿勢を持ち続けることです。
勤務時間内だけでなく、空いた時間にパソコンスキルや業務に関係する資格を勉強しておくことで、企業側からの評価が大きく変わることもあります。
「自分から学ぼうとしている姿勢」は、トライアル期間後の正社員登用を決める上で重要なポイントになります。
自分の将来を見据えて、小さな努力を積み重ねていきましょう。
正社員を目指す他の支援制度
トライアル雇用のほかにも、未経験の方や障害をお持ちの方が正社員を目指すための支援制度は多数存在します。
「一人で就職活動を進めるのが不安」「自分に合う仕事をどう探したらよいか分からない」といった悩みをお持ちの方は、以下のような支援制度を活用してみましょう。
ハローワークの各種支援
ハローワークでは、さまざまな就職支援サービスを無料で提供しています。
- 就職支援セミナー(面接マナーや職場でのコミュニケーション講座など)
- 模擬面接や応募書類の添削サポート
- 職業訓練(パソコンスキル、事務系、製造系など幅広いコース。障害者向けもあり)
- 精神・発達障害者などを対象にしたジョブコーチ支援(職場定着支援)
特に障害者向け窓口では、専門の職員が一人ひとりの状況に応じて親身に相談に乗ってくれるため、安心して利用できます。
転職エージェント・サイトの活用
民間の転職エージェントや就職支援サイトを利用することで、自分では気づけなかった適職や、非公開求人に出会えることがあります。
特に障害者雇用に特化したサービスでは、職場環境や配慮内容なども含めた丁寧なマッチングが行われます。
転職エージェントは求職者の利用は無料の場合がほとんどなので、選択肢を広げるためにも、数社を幅広く利用していくのがおすすめです。
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まとめ:トライアル雇用を活用し未経験から正社員を目指そう
トライアル雇用は、これまでの経験に自信がない方や、長期間の離職期間がある方でも、無理なく社会復帰の第一歩を踏み出せる制度です。
実際に働きながら、自分に合った職場かどうかを見極めることができるため、「いきなり正社員として働くのは不安」という方にとっても挑戦のハードルを下げてくれます。
「スキルがない」「ブランクが長い」といった不安を抱えている方でも、制度をうまく活用すれば、着実に正社員という目標に近づくことができます。
まずは、自分に合った求人を探してみることから始めてみませんか?
トライアル雇用を上手に使いこなし、自分らしい働き方や新しいキャリアの可能性を広げていきましょう。
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この記事の執筆者
2012年スクエアプランニング株式会社を設立。2016年より障害者パソコン訓練を愛知県の委託を受けて開始。人材ビジネス20年以上の経験をもとに様々な障害をお持ちの訓練生に対して社会進出、社会復帰のお手伝いをさせて頂いております。 今後もより多くの方に安心や自信を持って頂くことを念頭に、様々な情報発信をしていきたいと考えています。